64Kの半導体を作り始めた頃だから、もう30~40年前に
なるのだろうか。
日本が韓国の電子産業を助けてやるべきかどうか議論された頃である。
そのとき、半導体製造の歩留まりを聞いたら、たしか40%程度だった。
「いやあ、韓国はまだまだだなあ。やはり日本からの援助が必要なんだな」
と感じたのを憶えている。
今や、ここタイにいれば、電子製品のブランドは、サムスンかLGだ。
SonyやPanasonicは、隅っこに置かれている。
サムスンが、かつて三星貿易、三星電子だったことは忘れられてきている。
そのサムスン・グループだが、
この先進国の不景気の中で、今年度は前年比18%増、43兆ウォン(400億ドル近く)の
巨額の設備投資(研究開発費込み)を行なうという。
新規採用も25,000人にのぼると言う。
日本の大手電機メーカー4社の今年度の設備投資額(+研究開発費)が合計
3兆3,700億円(約406億ドル)だから、サムソン1社の投資額は
日立、パナソニック、東芝、ソニーを合わせた額に等しい(サムスンはグループ全体だが)。
43兆ウォンの内訳は、69%が半導体、LCDパネルなどの電子機器工場建設、
28%が研究開発費だ。
日本企業のほうが研究開発費の比率は高い。日本は、技術・性能の高いものを作り、
高い価格で提供するが、アセアン諸国は、ある程度の性能があれば安いものを歓迎だ。
サムスンの戦略は明らかだ。景況が悪く、他社が先行投資に躊躇しているときに
積極的に投資をして、少しでも安い製品や新製品を提供してシェアを奪う。
そういう時の方が、シェアを拡大しやすいと考えている。
かつて、三星財閥は創業者リー・ビュンチュルによって興されたが、2代目の
リー・クンヒー、3代目のリー・ジェイヨンと財閥の世襲だと、先行きは危ないんじゃないのと
うわさしたものだ。ところが、その2代目が20年かけて大ブランドに育てた。
3代目も今や昨年12月にサムスン電子の社長になっている。
日本の大手企業はサラリーマン社長で、「他の役員が反対しても実行する」という
独裁的決断が薄れてきている。多数決では革新的なことは出来ない。
日本の首相も、「なぜ事前に相談がなかったのか」と部下から問い詰められている。
日本は政治・経済とも革新的な変化を起こせなくなってしまったか。