年が明けてから下がっている。
いずれも、昨年良く上がったマーケットだから、調整といえば
調整で、国際資金は、先進国の市場に向かっているようだ。
きっかけは、言わずと知れた政策金利の引き上げである。
これら経済成長国は、景気の上昇とともにインフレ率も上昇気味だ。
しかも、各地での異常気象が、食料品中心に一次産品の価格を
高騰させている。
ことに2大大国のインドのインフレ率が2桁に迫り、中国の物価も5%に
迫ってきていることが懸念される。
食料品を除くコア・インフレ率も、日本を除くアジアでは4%ほどに上がってきている。
エジプトやチュニジアでは、食料品の高騰が政府を揺さぶるきっかけとなったが、
インドでも共産党などが9%を超えた政府の物価対策の手ぬるさをデモで攻めている。
たまたま、インド共産党の略称は「CPI」だ。
デモの旗ざおは、消費者物価のCPIと読めてしまう。
先進国と違って、中国では食料品支出が家計支出の33%、インドでは46%というように
先進国の2-3倍の比重を占めていると、モルガン・スタンレー証券エコノミスト、ステファン・ローチは言っている。
中国が、わずか4ヶ月に3回も金利を上げてきたし、韓国の
早めの引き上げも投資家を驚かせた。タイも金利を引き上げ、
インドネシアでも政策金利が引き上げられた。
経済が拡大中の早期警戒的な金利引き上げは、悪いことではないが、
投資家は、これからも続く金利引き上げにもかかわらず、
インフレ率は今後上昇していくのではないかと懸念しているわけだ。
途上国の景気拡大は続き、食料品価格の高騰も続き、
そこに、先進国も景気回復でパイの拡大に参加してきたら、
ちょっとやそっとの金融引き締めでは、インフレは抑えられまいと懸念もされる。
株式市場は、現在進行中のことではなく、6ヶ月先、9ヶ月先を、結果的には読んで、
動いている。現在の成長国の株価下落は、この先のインフレ拡大への
注意信号に他ならない。
金利がインフレ率とどう競争しているか。
アジアの主要12カ国のインフレ率と金利を比べ、今現在の‘実質金利’を
確認しておこう(インフレ率は昨年11月から今年1月までのものである)。
政策金利 - インフレ率 = 実質金利
インドネシア 6.5% - 7.0% = △0.5%
マレーシア 2.75% - 2.2% = 0.55%
フィリピン 4.0% - 3.0% = 1.0%
シンガポール 0.44% - 4.6% = △4.16%
タイ 2.25% - 3.0% = △0.75%
ベトナム 9.0% - 12.2%= △3.2%
中国 5.81% - 4.6% = 1.21%
韓国 2.75% - 4.1% = △1.35%
台湾 1.63% - 1.3% = 0.33%
インド 5.5% - 9.5% = △4.0%
日本 0.1% - 0.0% = 0.1%
オーストラリア 4.75% - 2.7% = 2.05%
これを見ると面白い。実質金利が今現在マイナスの国が、半数の6カ国も
ある。インフレを抑えるための金利上昇は、これからだと知れる。
中でも、ベトナムとインドとシンガポールの金利は、上昇しつつあるインフレ率に
ずいぶん後れを取っている。
実質金利がプラスの国でも、これから少しでもインフレ率が上がっていくと、
たちまち、今の金利は、インフレ率を下回ってしまいそうだ。
これら12カ国平均の政策金利と実質金利は、今現在以下のようになる。
3.79% - 4.52% = △0.73%
と、なお実質金利は平均1%近いマイナスと、景気刺激的である。
ちなみに、アジアの平均物価上昇率は昨年11月現在で5.3%、
1年前の3.5%から1.8%ポイント上がってきている。
これからの金利引き上げとインフレ率上昇の競争は、
どのあたりで決着がつくだろうか。
ことに、中国がこれからは内需の伸びを重視すると言って、
最低賃金等を大きく引き上げている状況が心配される。
歴史の教えるところは、実質金利が明らかにインフレ抑制的にならない限り、
インフレの芽は摘み取れなくなるということである。
長期化するようなら、株式市場も一時的な調整ですまなくなる。
寒い日本と違って、アジアのインフレ高進を
金利引き上げで抑えてもらいたいものである。