政権をかけて6月を目標にまとめると言っていたのが、11月をめどにするとなった。11月は、TPPのいわば母体となる「APEC」(アジア太平洋経済協力会議)の年一度の首脳会議が、オバマ大統領が生まれ育ったハワイのホノルルで開かれるときだ。米国は、ここでまとめたい意向のようだが、日本は、本気なら、間に合うのだろうか。
TPPは、以前書いたように、2008年にアメリカが、当初の4カ国の連携を、いわばテイクオーバーしたことから、アメリカの強い政治力でイニシアチブが取られている。関税を引き下げることだけではなく、知的財産権のあり方、政府調達のやり方、原産地証明の問題まで、貿易から投資まで含め、大きく網をかけようというものだ。
著作権の有効期間がアメリカ流の年数無制限となるのか等、いろいろ問題も含んでいるが・・・。
「日本で思うほど期待されなくなっているニッポン 2011-2-21」
http://uccih.exblog.jp/12948230
さて、このTPP,アセアン、タイではどう見られているのだろうか?
タイを含めアセアン諸国は、個別にECや中国、韓国とFTA(自由貿易協定)をここ数年、投資や観光の面も含めて進めてきている。
その中で、TPPのような、多国間の貿易・投資連携をどうとらえているのか。
タイの場合を見てみよう。TPP交渉国には、すでにアセアンのシンガポール、ブルネイ、ベトナム、マレーシアといった隣国がはいっていることから、無視できないものになっている。つまり乗り損なって、不利益をこうむることがいやなのだ。これには、タイでの生産活動の多い日本企業の思惑も後押しする。
成長するアジアをめぐる貿易自由化の連携は、TPPよりも古く97年のアジア通貨危機の際発足した、「ASEANプラス3」(アセアン10カ国に中国、日本、韓国が加わる)さらには、インド、豪州、ニュージーランドも加わった「ASEANプラス6」の動きにも見られるが、アジア共通通貨を求めたりしていて動きが遅くなったので、TPPに多国間貿易自由化のイニシアチブは取られてしまっている。
アメリカが、対中国けん制、囲い入れの意味からもイニシアチブを取って進めたいTPPだが、中国、韓国はどうするのだろう?
TPPは、オープンで、他国にも連携を誘いかけることが交渉国の義務になっているが、アメリカは、カナダの政策には難色を示しながらも、すでに中国にも声をかけ、事務レベル会議に参加の意向を引き出している。物事を決める段階から、やたらと自由でない商習慣をもつ中国をテーブルに就かせる事は、アメリカの本意ではないだろうが、いずれ参加国が増え、中国もボートに乗らざるを得なくさせるための布石だろう。
中国は、すでに個別にベトナム、ビルマ、ラオス、カンボジア、そしてタイに対し、多くのインフラ作りで食い込んでおり、「アセアン+3」等でアメリカに対抗しようなどとは思っていないだろう。
韓国もTPPへの参加意向だ。韓国はアメリカとのFTA,アセアン諸国とのFTAを発効させ、東南アジアへの経済進出はすでに盛んだ。韓国にとっても、日本のような、国内農業問題はあるが、かつてIMFの支援も受け、大統領制の下で、貿易・海外進出優先の強い意識の元、これを乗り切り、各国とのFTAを成立させ、「洗礼」済みだ。TPPにも発言してくるだろう。これに対して、日本は農水族と農協の組織力の強さがやたらと目立つ。
「韓国に引き離される日本 2010-12-17」
http://uccih.exblog.jp/12521792
こうみてくると、TPPへの参集は、世界の流れのように見えてくる。いずれ置いてきぼりがいやなら、早くから入り込んで、発言力を増やしておいた方がいいはずだ。遅れて入って、ほぼ日本に不都合な取り決めに固まっていたらどうするのだろう?