いよいよ最初の加入者を対象に、
3年後の2014年からはじまるが、
このままでは30年間で底をついてしまうと
懸念されている。
タイの年金制度の歴史は新しい。
1990年の社会保障法の成立をベースに、
社会保険制度の一環として、
公的年金制度は、98年末から徴収が
始まった。180ヶ月(15年)以上納付すれば、
55歳より年金の支給を受けられる。
最初の納付者6278人への支給が、
2014年よりはじまるわけだ。
タイの老齢年金は、民間企業の従業員を
対象にした強制年金制度である。
老齢年金は確定給付型だが、
代替率は、最終5年間平均給与の20%ほどと、小型である。
15年を超えて納めた場合、1年ごとに1.5%ずつ増えるものの・・。
でも、今なら55歳からもらえる(先進国は今や65~67歳)。
民間企業従業員には、このほかに任意加入の
プロビデント・ファンド(老後準備基金、確定拠出型)もある。
公務員に対しては、それ以前から民間より条件のいい
政府年金が出ている。
民間企業の老齢年金対象者は925万人ほど。
中央政府の公務員は120万人ほどだ。
公務員、企業従業員以外には年金はない。
2300万人の自営業者、農民、非正規従業員は、
今のところ「退職投資信託」(税優遇)を買い続けるか、
年金型の生命保険に入るか、老後は国の福祉に
たよるしかない。
タイは、アセアンの中でも、シンガポールを除けば、
一番に高齢化が進んでいる。中国に負けないくらいだ。
今65歳以上の人口比率は7.7%ほどだが、
10年後には12.9%、20年後には15.3%へと増大する。
この老齢年金の受給者も、2018年には11万人、
2028年には100万人に達すると予測されている。
2014年の初回支給以前に制度の改革が望まれている。
管轄する「社会保障庁」(SSO)は、いくつか考えざるをえない。
1.給与に対する拠出率を、現在の従業員3%、企業3%、
国庫1%から引き上げる。
2.終身年金有資格の拠出期間を15年から、それ以上に引き上げる。
3.受給資格の条件を厳しくする
(いくらタイでも、この時代に55歳はないでしょう・・)。
4.社会保障基金の運用リターン(債券・現金が中心)を高くする。
そのほかに、これも従業員向けに、
確定拠出型の「国民年金基金」(NPF)の
導入も数年前から考えられている。
小さく生んで育ってきたタイの公的年金。
高齢化社会の進行のなかで、いやでも制度を
充実せざるをえなくなっている。
とはいえ、ここはタイランド。
老人は大家族がまだ見てくれる。
日本の団塊化した孤独社会とはいささか違う。
‘今を生きる’タイ人のこと。明日は明日のことだろうか。
今回の選挙でも、年金などは争点にはならない。