タイの‘30バーツ医療制度’に参加した私立病院の悩み
タイは、途上国の中でも国民医療では一歩進んだ国となっている。
2001年、タクシン政権により、いわゆる「30バーツ(90円)医療」が
導入され、人口6600万人の7割に当たる健康保険に入っていない、
4800万人を対象とする「ユニバーサル・ヘルスケア」
(全国民医療保障制度)が発足した。

公務員医療給付制度(対象760万人)や被用者社会保障制度
(対象民間企業従業員920万人)、また富裕層の民間医療保険
(約80万人)のいずれにも入っていない自営業者や農民、
貧困層に対する医療保障である。

健康維持は、国民の最低の生きるための権利だが、マイケル・ムーアの
アメリカの医療制度を描いた映画「シッコ」に見られるように、
これが保障されている国は少ない。
 「金のない奴は死ね 2008-4-22」
  http://uccih.exblog.jp/11115611

医療サービスの財源は、もちろん税金だが、登録患者一人当たり
年間1900バーツ弱(5500円ほど)の補助だから、国の負担は最大
年900億バーツほどになる。公務員医療給付の負担約140億バーツと
被用者保険料の国の負担分(保険料の3分の一)推定約50億バーツを
加えると、国民の医療費全体でGDPのほぼ6%、約5900億バーツに達するが、
そのうち、1100億バーツほどを国が担っていることになる。
医療支出は、国の財政支出の5~6%を占める。

ちなみに、日本の医療費の対GDP比率は9%ほどに上がってきた。
一人当たり年平均26万円だそうだから、国民健康保険も年18万円は払わされる。
タイの一人当たり平均の医療費は、年約9000バーツ、日本人の10分の一
ほどとなるだろうか。タイ人の場合、病院へ行かず、薬屋で
売薬を買って直しちゃうことが多い。ほんとうはこれも医療費に
入るのだが・・。

しかし、このユニバーサル・ヘルスケア制度も、その負担は大変だ。
タイには1000近くの公立病院、400近くの私立病院があるが、30バーツ・
診療は、主に地元の公立病院と提携して行なわれている。
昔なら病院へ来れなかった人たちが、病院やクリニックへ来るようになる。
従って、3時間待ちの5分診療などざらだ。ロビーにエアコンの入っていない
公立病院も多い。
 「医師不足に悩むタイランド 2011-5-24」
  http://uccih.exblog.jp/11115611

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そこで、この制度を管轄する「NHSO」(国立健康保障オフィス)は、
公立病院だけでなく、私立病院からもこの制度に入ってもらうことを
募っている。しかし、参加している私立病院は、全国で29に留まっている。
なぜだろうか?

モンクートワッタナ私立病院は、この4月にユニバーサル・ヘルスケアに
参加したが、患者の洪水に悩まされている。
昨年57000人だった患者の数が、今年は20万人を越えそうな勢いだという。

しかも患者の数が増えただけではない。
エイズや結核の重症患者が増え、長期の治療が増えている。
さらに、年配の患者や新生児は、直っても引取りに来られず、
病院に放置されている(タイらしい?)。
先のNHSOは、福祉当局に対し、放置患者の処置を相談している。

10代の妊婦には、出産所として使われるのが増えている。
新生児は、700グラムほどの未熟児が見られる。
これの育児も、病院のケアになる。

病院は、ユニバーサル・ヘルスケアに入ったのはいいが、
利益が少なくなり、何とか凌ぐ状況になっているとこぼす。
病院は、患者の増加に備え、すでに2億バーツを投じ、
ベッド数を150から250に増やしたが。

また、医療ミスに対する訴えが多いのも、ユニバーサル・ヘルスケアに
入るのを躊躇させるもうひとつの理由になっているという。
昨年、4つの私立病院が、患者の混雑を理由に、
ユニバーサル・ヘルスケアでの診療をやめたという。

タイには、きれいで高価な、主に外国人や富裕層向けの
「いらっしゃいませ」志向の病院と、貧困層や中間層を対象とする
30バーツ医療の混雑する病院が並立している。
金のあるものはきれいなすいた病院へ行き、金のないものは
待ち時間の長い混雑する病院へ行く、ということになる。
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by ucci-h | 2011-08-01 11:13 | アジア的な生活 | Comments(2)
Commented by muga at 2011-08-01 13:09 x
>金のあるものはきれいなすいた病院へ行き、金のないものは
待ち時間の長い混雑する病院へ行く、ということになる。<

まったくそうですね。以前、やはり頭痛でスワンドークに担ぎ込まれた時はビックリしました。のた打ち回る私に対して30人程の順番待ちの患者さんの脇で「ここで待って下さい」と言われた時は流石に死を意識しました。他の病院に搬送してもらい一命は取り留めました(大げさかな?)。
逆にバンコクのBNHに担ぎ込まれた時は、高級ホテルの様なサービス(美しい看護婦さんを含む)に溜息が出ましたが、帰りの請求書を見て目ん玉飛び出ました。一泊二日で四万円弱だと記憶します。
美しい看護婦さんはいらないけど値段がほどほどで、しかも信用もある病院の乱立を熱望します。(無理か・・・)
Commented by ucci-h at 2011-08-01 13:50
mugaさん タイの病院の仕組みは、この国の所得格差の縮図ですかね。高級病院に入る患者などは金に糸目をつけない。普通の病院は、多くの患者を来た順番になるべく速く捌いて、効率と収益をあげる。国民皆医療のムリな点が露出していますね。

北タイのチェンマイをベースにメコン、アセアンの経済、見所、食べ物を日本と比較して紹介します。ただし投資をアドバイスするものではありません。コメント記入は題字をクリック下さい。
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