8月15日(月)に、ティラチャイ財務相が、
中央銀行の金利引き上げ策に異を唱える発言を
したことを紹介したが、今度は、続く17日(水)には、
副首相であり、政権の経済政策を担うキティラット商務相が
これをサポートする形で、むしろ金利の引き下げを要請した。
「はやくも財務大臣が中銀の金融政策に異論 2011-8-17」
http://uccih.exblog.jp/14366669/
経済のロジックから見れば、インフレが上がりだし、
さらに政権の賃金引上げ策により、いっそうの物価上昇が
懸念されるこの時期に、馬鹿げたことを言うと見られるが、
タイ貢献党のロジックは以下のようなものだと想像される。
キティラット商務相は、前タイ証券取引所の社長でもあり、
一時は、外務大臣のうわさが立ったほど、政権内で
信頼の厚い人物である。
タイ貢献党は、タイの所得格差を減らすため、
低所得者層の収入アップを第1に目指している。
そこになぜ、金利引下げが絡んでくるかと言うと、
企業、事業主の賃金負担を減らすための方策も
講じなければいけないからだ。そこに、法人税の引き下げと
並んで、金利負担の引き下げが出てくるわけだ。
一見、分かりやすいロジックに見えるが、
いずれも、インフレの高進というリスクを見ていない。
最低賃金が上がれば物価が上がり、かえって貧困層は
生活必需品を買うのに苦労する。
同様に、インフレ高進のこの時期に金利を引き下げなどしたら、
インフレは野放しになるだけだ。
キティラット商務相は、金利を4分の1%から1%引き下げるべきだと
言っている。また現在、0.5~3.0%の中央銀行のコア・インフレ・
ターゲットは、経済成長の障害だから、4%くらいまで引き上げろと言っている。
少しくらいのインフレは許容すべきだということだ
(しかし、2009年以来このターゲットで経済は成長してきている・・)。
現在のエネルギー、食料価格を除いた今年のコア・インフレ率は2.4%
と見られる。全体の消費者物価上昇予想は3.9%。
7月のCPIの実績は4.1%へ上がってきている。
現在の中央銀行の金融政策委員会の政策金利は3.25%まで
上がってきているが、依然インフレ率4.1%に追いついていない。
タイの実質金利は、なお0.85%の‘マイナス金利’である。
どうも、最低賃金の大幅引き上げ(来年1月より実施見込み)に
釈迦力になっているこの政権は、経済の複雑なメカニズムには
眼をつぶり、単純な算数で対応しようとしているように見えてしかたない。
危ういなあ。大丈夫かな?この政権。