税優遇策が承認された。
もともとは、3百万バーツまでの住宅初回購入に対し、
5年間のローン金利減免だったはずだが、
金利減免(1年間)はすでに民主党時代に採用されていた
からかどうか分からないが、5百万バーツまでの住宅初回購入
に対して、課税所得額の控除と言う形になった。
その概要を記しておこう。
なお、対象となる住宅は新築であり、経済効果が
同等に大きい中古住宅の購入や、組立住宅には適用されない。
5百万バーツの住宅というのは、けっこう高級な部類にはいる。
月給10万バーツ以上ないと手が届かないと言われる。
月収15000バーツほどの並みの勤労者だと、
100万バーツくらいの住宅購入となるが、そもそも所得税は
納めていないので、減税のメリットを得られない。
タイの住宅着工件数は、年30~40万戸となるようだが、
今回の対象となる住宅は、およそ10万戸である。
9割は一戸建てないしタウンハウスであり、1万戸あまりがコンドーである。
そして、そのうち価格が百万バーツ未満のものは3割の3万戸と見られる。
500万バーツまでの新築住宅(コンドーも含まれる)の初回購入
ならば、価格の1割(5百万バーツの場合、50万バーツ)が、
課税所得から差し引くことができる。ただし、5年かけてだ。
たとえば、課税所得15万バーツ超、50万バーツまでの納税者なら、
所得税率は10%だから、50万バーツの10%、5万バーツ分、
年1万バーツずつ5年間、所得税納入額が減るわけである。
課税所得50万バーツ超100万バーツまでのブラケットの人だと、
税率は20%だから(累進課税制度)、50万バーツの20%、
10万バーツが、年2万バーツずつ減税になる仕組みだ。
(表はバンコク・ポスト紙より)
年数万バーツずつの減税が、どのくらいの効果があるのかは、
所得水準によって違うのだろうが、この仕組みは、さっそく
大きな批判を浴びている。
まずは、「高所得者優遇、低所得者には関係ない」という批判である。
前回、タイの個人所得税の納入状況を見たとき、タイにおける
所得税は、限られた専門職クラス以上の人間しか払っていない
ことに触れた。
課税所得15万バーツ以下(年間総収入だと25~30万バーツ)の
多くの大衆にとっては、所得税減税は、納税していないのだから
意味がないのである。
さらに、この仕組みだと、所得ブラケットが高くなるに連れて、
減税額が大きくなる。
たとえば、課税所得額400万バーツ以上の高所得者になると、
累進税率が最高の37%に達するから、住宅購入の減税額も
年37000バーツ、5年間で185000バーツとなる。
もっとも、高所得者層が、今回初めて住宅購入するとは
考えにくいし、年数万バーツの減税に眼がくらんで住宅購入に
踏み切るとも考えにくい。
要するに、270億バーツほどにのぼりそうな減税の割には、
中低所得者には効果なく、
高所得者の税金を負けてやるだけとなりそうである。
今回の住宅購入優遇政策、あまり腰の入った
政策に見えないが、公約履行の形をとるということなのだろうか。
タイは来年から不動産過剰が出てきそうなので、
住宅販売の振興策を政府が取ろうというのか・・・そうも見えないが。