マレーシアとの国境の街パダン・ブサール(両国とも町の名が
パダン・ブサールというのは珍しい)からマレーシアに入り、
マレー鉄道でクアラルンプールを通って、ジョホールバルから
シンガポールまで行くのが夢だ。
筆者はまだ、タイ国鉄の北本線であるバンコクからチェンマイ
までしか乗ったことがない。
マレーシアとつながっているということは、両国の鉄道の
ゲージ(軌道の幅)が同じだということだ。
何メーターだと思いますか?狭軌でしょうか広軌でしょうか?
はたまた・・・?
日本では、筆者が子供の頃、京浜急行の運転席のそばに立って、
「京急は、他と違って広軌だから速いし、かっこいいな」と
思っていたものです。
正確には、関東地方で最初に電車を走らせた京急のゲージは、
1435ミリ(1.435m)。欧米で使われている世界の標準軌だそうです。
日本の新幹線もこのゲージを使っている。
広軌というのは、正確には、この標準軌より広いものを言うそうで、
日本にはない。インド、パキスタンの鉄道の大部分が1676ミリの
広軌だそうだ。
標準軌より狭いのが狭軌だが、
京王線や都電で使われている1372ミリは、標準に近く、
狭軌とは呼ばれないようだが、
東京の馬車鉄道に由来する馬車ゲージである。
そして、1067ミリが日本の狭軌。JR在来線や多くの私鉄、地下鉄で
使われている。新橋・横浜間ではじめて蒸気機関車が走ったときの
ゲージがこのサブロク(3フィート6インチ、1067ミリ)ということだ。
さて、タイ国鉄のゲージはどれでしょうか?
実は、日本の狭軌よりももう少し狭い1000ミリ、いわゆるメーター・ゲージ
である。
タイの国鉄はまだ電化されていないので、1メーターの軌間を
ディーゼル車が坂道にかかると、えっちらおっちら登るのは泣かせられる。
メーター・ゲージは東南アジアの大陸部分で多く使われているという。
戦争中、日本軍がカンチャナブリのクワイ川にかけた泰緬鉄道も、
タイやビルマに合わせたメーター・ゲージだった。
インドシナ半島のほとんどの国、ビルマ、タイ、カンボジア、ラオス、
ベトナム(ハノイ以北を除く)が1000ミリである。
そのタイで、3039kmに及ぶ複線化計画が進んでいる
(現在は単線で、バンコクから北、南、東北、東に4幹線、4040km)。
3期に分けたうち、2010-2014年の第1期はもう着工しているが
(第2期2015-2019年、第3期2020-2024年)、
ここにきて、10月5日、スクンポール運輸大臣が、
「第1期はもういいが、第2期、第3期の路線は、今の1000ミリゲージ
から標準軌の1435ミリに変えられないか」運輸局に検討を依頼したという。
メーターゲージでの鉄道建設は、キロ当たり1億バーツかかるが、
標準軌のほうがより多くキロ当たり3~4.5億かかるという。
もちろん、ゲージを広くした方が運行の安全性は高まるが、
標準軌への切り替えは、「中国の鉄道とつながるからだ」という。
中国の鉄道は、北朝鮮や韓国と並んで、一部昆明鉄道の
メーターゲージを除き、1435ミリの標準軌である。
いずれ中国から、ラオスを経て、タイに高速鉄道を乗り入れる
プランがある。
タイの運輸相の発言は、そこらを考慮してのことだろうか。
ビルマ、ラオス、カンボジア、ベトナムは、これからどうするのだろう。
インドシナ半島の鉄道にも、中国の影が大きくかかってきている。