日本との大きな差にびっくりする。
タイ人の医療保険は、
①民間企業従業員に対する社会保障の一環としての医療保険制度(91年導入)、
②公務員に対する医療保険があるが、
農民や、自営業者に対してはない。
金のある人間は、民間の医療保険を買う。
これらの保険もほとんどが、本人一人に対するものだから、
家族は基本使えない(軍人・警察は別と聞くが・・)。
つまり、国民皆保険ではないから、‘健康保険’は、限られた人のものである。
そこに出てきたのが、2001年にタクシン首相が導入した、いわゆる“30バーツ医療”、
国民医療保障制度である。
ただし、指定された地域の病院へ行き、何時間も待たなければいけない。
見立ても簡単だ。
タイは、所得格差の大きな国である。
金持ちは、民間の医療保険(AIAとかBUPAとか)に入る。
そして、私立の高級病院へ行く。
タイの保険は、歯科はカバーしていない。
聞いてみると、歯は24本もあり、いつも金がかかるからだと言うが・・(?)。
民間保険も、入院治療(+事故治療)が中心である。
通院治療オプションを加えても、一日500バーツとかの限度額×1年30日の限定=
15000バーツが保険料に上乗せされるだけだから意味がない。
また、65歳を超えると保険に入れない。
病気の確率が急速に高まるからだ。
もっとも、65歳時の余命平均は、日本の20年近くに対し、
タイでも10数年はあるはずだが・・。
日本の国保(国民健康保険)はたいへんだ。
36兆円にのぼる国の医療費のうち、4割近くが高齢者に対するものである。
日本では、国民一人当たり26万円ほど医療費が使われている。
タイ人の年間平均所得の8割方が消えてしまう額だ。
日本は薬や機材が高いから、薬剤だけで10兆円を超える(全医療費の3割)。
タイの薬は、処方箋なしでも安い。
日本の医療費負担の内訳は、本人が、保険料負担も含めて45%負担し、
国・地方が33%、事業主が22%負担する形になっている。
国の負担軽減のため、本人負担が上がってきている。
タイにおける医療費は、4分の3が公的負担で、
プライベイトな負担(個人・企業)は4分の一にすぎない。
個人は、医療費にあまりお金を使わない(使えない?)。
日本に比べて、タイは医療費にあまり金はかけない、かけれない。
一人当たりの医療費は購買力平価換算だと330ドルほどだが、
為替レートで換算すると、165ドル、約5千バーツ、14000円ほどとなる。
日タイの所得格差を上回る18倍という大きな開きである。
もっとも、日本は医療に金をかけすぎなのかもしれない。
高齢者は体が痛いので、しばしば病院に行く。
タイは歳をとって死にそうになれば、やや表現がオーバーだが、
そのまま自然に死なせてやるのに対し、日本はチューブを
挿入し、延命をはかる。
OECDの2009年の統計によれば、日本の医療費の
GDPに対する比率は8.3%となっている。
タイは、その半分のGDP比4.1%である。
タイでは体調が不調だと、クリニックや病院に行くより
薬屋へ行って、薬を買って直す。
薬(ヤー)は安い。
街角のいたるところに薬屋はある。
病院へ行って、長い時間待たされて、高い金を払っても、
多くは、薬屋の薬剤師の見立てと似たり寄ったりかも知れない。