プミポン・ダムの1年間の水位の変化から判ったこと
69年ぶりという戦後最大のタイの洪水をもたらした
今年の大雨。通年の1.4~1.5倍降ったと言われるが、
実際の水量はどのくらいだったのだろうか?

メガ・ダムが早めに放水しなかったため、下流のナコンサワン、
アユタヤ、パトゥム・タニ、そしてバンコクの被害が大きくなった
と言われるが、どのくらいの水量だったのだろうか?

前回見たように、確かにダムの放水を6月ごろより早めに
行なっていれば、9-10月に下流に押し寄せた水量は
減っただろう。もっとも今回はそれでもあふれ出るほどの
雨量だったようでもあるが。
 「バンコクへの水の流入量は? 2011-10-20」
  http://uccih.exblog.jp/14795061/

そんなことを考えていたら、
11月3日に、ダムの管理を灌漑局とともに担う「EGAT」(タイ発電公社)の
総裁が、「大洪水は、ダムの管理不足によるものではない」と
弁明した、と伝えられた(2つの組織が管理しているとは、
管理していないことにつながっていないだろうか)。
灌漑局の作ったプミポン・ダム(容量135億㎥)の1年間の
水位の変化のグラフがバンコク・ポスト紙に載っていた。

このグラフをベースに、今年の雨季の雨量の変化を
想定してみた。なお、グラフの「最大、最小貯水能力」は間違いで、
正しくは、「上方、下方管理水量」である。

d0159325_20381784.jpg

タイの北方、チェンマイやターク(プミポン・ダムの所在地)には
年間750~850mmの雨が降る。ちなみに海に近いバンコクの方が
年間降雨量は5割近く多い(平均年1169mm、東京は1854mmともっと多い)。
タイの年間降雨量のうち9割近い雨は、5~10月の雨季の半年間に降る。

今年は、例年より4割がた多い雨が降ったというから、北方のチェンマイや
タークでは、雨季の6ヶ月の間に1000mm前後の雨が降ったことになる。
年間では1000mmを超え、日本で雨の少ない長野や北海道の年平均を
上回ったかもしれない。
この雨の蒸発・吸収されなかった分が、ピン川に流れ込み、プミポン・ダムを
満たした。

蒸発率や、川に流れ込む雨域面積は知らないが、
週平均40mm近い雨が(実際は、雨季の末期9-10月の雨量が多いが)、
川を増水させ、ダムの水位を上げていった。


灌漑局の数字だと、過去2年、プミポン・ダムの貯水量は、雨季の間に、
41~47億㎥(ダムの容量の30~35%)増えたものだが、今年は、
72億㎥増と、例年に比べ55~75%多く増え、満水になった。
ダムに水の貯まった増え方は、降雨量の増え方4割増を上回った。

ちなみに、2009年は、5月の貯水率40%を底に、雨季の終わりには70%へ、
水不足の昨年2010年は、7月末まで、貯水不足は続き(ボトムは貯水率28%
の水枯れ状態に)、雨季が終わっても、63%の貯水率のピークだった。

しかし、今年の雨季入りの5月始めには、乾季にチェンマイでも異常に
雨が降ったりしたためか、貯水量は46%と、前の2年より高めでスタートした。
そして雨季の大雨、ダムの水位はぐんぐん上がっていった。
9月末にはすでに90%の貯水量を超えていた。

d0159325_20425790.jpg

灌漑局のグラフには、ダムのフローの数字、入水量と流出量が
ないので、ダムの水量管理がどう行なわれたのか判らない。
しかし、結果数字から見ると、リスクを見ない貯め過ぎと言えよう。

今年雨季の半年で72億トン(㎥)も増えたということは、1日平均4千万トン
ずつ貯水量が増えたということである。もっとも雨量は5~7月よりも、
8~10月の方が多く、5~8月で23億トン(一日平均2550万トン)、
8~10月はその倍以上の49億トン(一日5440万トンずつ、多い日は1億トン)
増えていったことが、グラフからも読み取れる。

5~7月のペースで行くならば、10月に雨季が終わった時、
ダムの水位は、当初の46%に34%分(46億トン)が加わり、ちょうど
80%でめでたしめでたしだが、例年、8~10月の貯水ペースは、
倍、ないしそれ以上の高いペースになることは専門家でなくとも
知っている(それとも5~7月によく降ったので、雨季後半の雨は
少ないと見たのだろうか?そんなことはないはずだ)。

雨季後半の貯水増は、2009年でプラス32億トン、2010年で
プラス43億トンである(放水量はわからないが)。この平年の
平均でも、雨季後半37億トンほどは増えるとすれば、雨季明けには、
貯水率は90%を超える(91%)。仮に昨年並みに増えれば、
雨季明けには96%と満水ぎりぎりになる。

平年以上の雨量が続けば(実際そうなったわけだが)、
雨季後半の貯水量は49億トン増え、100%に達し、9月~10月
の15日間ほど、一日7千万トンから1億トン、多い日は、
1.5億トン(1秒当たり1736トン)もの水を放流せざるをえなくなった。

EGATのスタット総裁は、ダムの放流のタイミングについては
触れていない。
「タイは過去30年、年平均2つか3つのストームに襲われたが、
今年は5つも、しかも7月末以降に4つもやってきた」と天候異常を
説明し、「ダムは洪水の原因ではない。むしろダムで水を止めなかったら、
下流の水はもっと多かったろう」と弁明しているが、説得力に欠ける。
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by ucci-h | 2011-11-04 20:45 | アジア的な生活 | Comments(4)
Commented by muga at 2011-11-05 08:47 x
このグラフを見る限り、やはり今回の洪水はズサンな管理による人災、もしくは仕組まれたもの(陰謀)、のどちらかでしかないという結論になりますね。
貴重な情報提供に感謝します。
Commented by unknown at 2011-11-05 09:47 x
なるほど、早い段階でシグナルは出てた訳ですね。
mugaさんの「仕組まれたもの(陰謀)」につい釣られてしまいそうですが、やめときますw
Commented by くんたれ at 2011-11-07 12:46 x
貴重なデータですね。
ダム造成するときに木を切るために保水力が低下するのでは?!チェンマイ上流にはダムは作って欲しくないですね。チークの多いところは洪水被害が少ないような気がします。
Commented by ucci-h at 2011-11-07 23:25
くんたれさん チェンマイの上流は、メークワンとメーガットでもう十分でしょう。

北タイのチェンマイをベースにメコン、アセアンの経済、見所、食べ物を日本と比較して紹介します。ただし投資をアドバイスするものではありません。コメント記入は題字をクリック下さい。
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