厄年、深刻化するアメリカの失業手当切れ
2010年代の‘厄年’2011年もあと2ヶ月弱となった。
日本の津波、原発事故、欧州全体に広がる債務危機、
そしてここタイの洪水被害、いずれも収拾のめどがつかず、
来年にまたがるかも知れない。

いずれも、2008年のリーマン・ショック後立直れずに居る
先進国経済への第2のパンチとなっているが、
この2011年、ひそかに、一番経済的に参っているのは
“貧困大国”アメリカではないだろうか。

昔なら、戦争前の暗い世相を髣髴させ、戦争がひとつの
解決策になったが、21世紀の今は、そんな物騒なことには
つながらないだろう。いや、つながらないと期待する。
もっとも5年後に、貧窮著しい軍事大国アメリカと、拡張主義の
中国が何かで衝突する事態が起こらないとは言い切れないだろうが。

アメリカは、衰えたと言えども、世界のGDPのなお4分の一を支える
経済大国だ。アジアやヨーロッパがそれぞれ束になって並べる規模だ。
アメリカの経済に、アジアへの輸出なども通じて、日本の経済が多く依存している
形に変わりはない。
そのアメリカでは、リーマン・ショック後3年にわたる金融緩和にもかかわらず、
景気の回復は鈍く、何よりも雇用が拡大していない。

アメリカの失業者の数だが、リーマン・ショック後の秋、2008年10月に
1000万人に乗せた後、1年後の2009年10月には1563万人に膨れた。
その後の緩やかな景気回復は“雇用なき回復”であり、2011年10月現在でも
なお1390万人という失業者がいる。
ここまでの2年間の景気回復で、失業者はピークから11%しか減っていない。

1400万人という失業者数は、日本の9月の失業者数275万人の5倍の人数である
(経済規模、失業の定義がやや違うが)。
失業率は、リーマンショック前の4~5%から、2009年10月には10.1%を
つけ、2011年10月現在でも、なお9.0%という高さにある。

アメリカの民間雇用者数は、2008年の1億4600万人水準から、
2009年12月の1億3800万人ほどへ、信用危機により2年近くで800万人ほど減ったが、
その後の回復は鈍く、2011年10月現在、1億4000万人と、ボトムから
200万人ほどしか増えていない。減った分のカバー率は4分の一でしかない。

問題は、このたまった膨大な失業者数が、米国の財政をいっそう苦しくし、
また、経済の停滞という悪循環を招いていることだ。
21世紀初頭のアメリカの国家的問題は“肥満”(これも貧困化に由来)だったが、
いまや“雇用危機”が、アメリカの国家的危機になっている。

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社会の流動性の高いアメリカでも、失業者に対しては、自発的失業はダメだが、
会社都合によるものに対しては、失業手当が出る。
週平均300ドルほどが、基本26週間出る。
半年ほどすれば、景気も回復につき、再就職できるだろうとの設計だ。
この失業保険が大恐慌の頃のようになければ、アメリカ社会はもっと
揺れていただろう。

失業手当に、政府は450億ドル(約3.5兆円)という巨費を投じるが
(保険料は主に雇用主が納める)、議会予算局によれば、失業手当1ドルに
対して、1.9ドルの経済効果が出るので、経済成長にもプラスと言っている。

問題は、今回の「雇用なき回復」である。
先に見たように、景気が下降してから3年も経つのに、雇用の伸びが
かつてほどない。前回3回のリセッション時でも、失業の最長期間は、21週
だった。
それが、今回は最長39週となってきている。大恐慌時の41週に迫る長さだ。

失業状態の大量長期化に対して、米議会もここまで9回も失業手当の延長を
行なってきたという。通常は、26週だが、「緊急失業手当」を、13週、20週と
上乗せしてきた。今では失業率の高い20州の場合、なんと99週、
ほぼ2年近くまでに拡大された。

しかし、それでも足りない。
2010年はじめ、1100万人の多く(失業者の4分の3)が失業手当を
手にしていたが(もらわないのは、自発的失業者や新卒浪人)、
いまやなお1400万人の失業者がいるが、手当てをもらっているのは、
4割減の670万人に減った。景気が回復して多くが職に就いたからではない。

通常の景気回復だと、手当受給者数は半分以下になるのだが、
今回は、雇用増が鈍く、そうはいかない。
一方で、今回は失業者の3分の一が、1年以上の‘長期失業者’になって
いるので、“期限切れ”でもらえなくなっている人が増えている。
期間延長も追いつかないほど増えている。
200万人が、99週をもらいきって、なお失業しているという。
このままだと、来年2月までにさらに220万人が期限切れを迎えるという。

失業手当が切れた人はどうするのか?
AP電は、ロードアイランドに住む55歳の倉庫従業員のケースを紹介している。
彼は、2008年に失業し、コンピュータ技術を持たないとかで、なお仕事がない。
社会保障のDI(所得保険)、フード・スタンプをもらい、政府の補助住宅に住んでいる。
いいほうかもしれない。

現在アメリカでは、史上最高の4600万人(人口の15%)近い人が
フード・スタンプをもらっている。統計局によると、昨年失業手当で、
320万人の人が、“貧困ライン”(4人家族で年収22314ドル)未満への
転落を免れたが、手当が切れ、雇用が増えないと、
貧困層がいっそう増加することになる。

このまま、欧州の債務問題が拡大し、先進国の不況が広がったらどうなるのだろうか。
1990年ソ連邦が崩壊し、共産主義が敗れた時、資本市場主義の勝利とも見られたが、
いまの欧米の経済状況は、市場原理主義のレバレッジ投機のなれの果てとも見える。
「資本主義よ、お前もか」では、困るのである。

早めに欧州の債務問題の解決と、米国経済の底入れが待たれる。
TPP(環太平洋パートナーシップ)に臨む日本の政治家の中に、
「うちも大変だが、アメリカさんは大変だなあ」と思う政治家はどのくらいいるだろうか。

{追記}
11月7日に統計局から発表された新しい基準(政府からの補助なども含める)では、
アメリカの2010年の貧困者は4900万人に増加している。全人口の16%、
6人に一人だ(4人家族で24343ドルの年収未満)。
ヒスパニック、黒人は28%、25%とより高い。
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by ucci-h | 2011-11-08 18:14 | 日本・米国・欧州 | Comments(0)

北タイのチェンマイをベースにメコン、アセアンの経済、見所、食べ物を日本と比較して紹介します。ただし投資をアドバイスするものではありません。コメント記入は題字をクリック下さい。
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