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アジアに経済、軍事、地政面で手を打つアメリカ政権
オバマ米大統領が太平洋を自ら駆け巡った。
米国現政権のアジアに対する思い入れは
並々ならぬものがある。

その背景は、3つあろう。
1、成長するアジア経済によりコミットしたい。
2、膨張したい中国をけん制したい。
3、イラク、アフガニスタンから手を引き余裕ができる。

この秋のアメリカの大統領の動きは大きかった。
アメリカの観点から一連の動きを振り返ってみよう。

1、オバマ大統領の生誕地であるハワイで、11月12~13日の週末に、
「APEC」(アジア太平洋経済協力フォーラム、1989年12カ国で発足、
現在21カ国・地域)の第23回年次首脳会議をオバマ大統領が主催した。
そこで、懸案の「TPP」(環太平洋パートナーシップ)の協議に、
日本、カナダ、メキシコの3カ国を参加させることに成功した(9カ国から12カ国に)。
ことに、日本を協議に参加させたことは、TPPの重要性を高める上で大きかった。

APECは、その名の示すとおり、政治色を抜いた経済協力の緩いフォーラムだが、
アメリカ、中国、ロシアが入っているとなると(インドは入っていない)、その前に
フランスのカンヌで開かれた「G20」金融サミットではないが、参加者多くして
なかなかまとまりがつかないものになってしまっている。
その中で、TPPは一本の大骨となろう。

日本ほか3カ国の交渉参加によって、APEC20カ国(香港は中国領)のうち、
TPP協議に参加していない残りの8カ国の顔ぶれは以下のようになる。
フィリピン、台湾 → 参加意向あり
タイ → 検討中
インドネシア、ロシア、パプア・ニューギニア、韓国、中国 → ?

この中で中国の動向が注目される。

TPPは経済協力だから、けっして中国を封じ込める政治的な意図はないが、
アメリカは、TPPの中に知的財産権の尊重や、労働慣行の規律を求める
ことにより、間接的に中国に圧力をかけていくだろう。
つまり、「これこれの通商、労働慣行をTPPでは守ってもらいますよ。
それをクリアするなら中国もぜひ入ってください」というスタンスだ。
今のところ中国は参加する意思はないようだが・・。

TPPなどに入らなくても、中国のアセアン諸国との経済的結びつきは
強まっているという自負があるかもしれない。
TPPの具体化には、少なくとも数年はかかりそうだ。

アジアに経済、軍事、地政面で手を打つアメリカ政権_d0159325_11153558.jpg

2.オバマ大統領は、その後19日からのバリ島での「EAS」にも参加するのだが、
アメリカへ一度戻ることなく、その間豪州へ飛び、16日には豪州のギラード首相と
会談、第2次大戦時のマッカーサーを思い出させる、北部ダーウィンに米海兵隊を
駐留させることを決めた。
イラク、アフガニスタンへの軍事力投入を終え、今後は南シナ海を
にらんだ軍事プレゼンスを強化するわけで、わかりやすい展開だ。

3.そして、19-20日の週末には、バリ島で第6回「EAS」(東アジア・サミット)
に、アメリカとして初めて参加した。
EASは、その名の示すように、1990年に“ルック・イースト”で知られるマレーシアの
マハティール首相の提唱で、東南アジア諸国中心に経済統合を進めようとの
意図で発足した。

この首脳会議も、アセアン10カ国プラス6、つまり日中韓に豪NZインドが加わり、
さらに今年から米・ロシアも参加し18カ国参加とにぎやかになった。
アセアン+3でいいと言う中国に対し、さらに3カ国加えて+6のバランスを日本が
推しているうちに、それぞれが、ロシア、アメリカを招きいれ、肥大した。
東アジアの経済連携を図ると言う意図から離れ、何やら米中印露日の
経済を超えた政治的、戦略的会議の場になっていきそうだ
(APECには入っていないインドも、ここだけには入っている)。

2005年、EASが発足した時、米ブッシュ政権は、「何をやる会議なの?」と
無視したが、アジア重視となったオバマ政権になって、乗り込んできた形だ。
EASには、5つの討議テーマ(金融、教育、鳥インフルエンザ、災害管理、気候変動)
を伝統的に持っているが、これにアメリカは、海洋安保、人権問題などを
加えて行きたいようだ。

以上追ってみると、アメリカは、
①経済面で、TPPを軸にし、
②軍事面で、ダーウィンに駐留し、
③地政面で、EASに加わり、
アジアに対し着々と手を打っていることがわかる。

欧米経済の衰退から、アジア圏での成長に活路を見出すと同時に、
中国に対して、囲い込むと言う見え透いたやり方でなく、経済、
通商、労働、知的所有権、人権面でルールを導入し、中国にも
採用を迫るというやり方でやってこよう。

今後、中国がどう対応してくるのか注目される。
by ucci-h | 2011-11-22 11:16 | 日本・米国・欧州 | Comments(5)
Commented by unknown at 2011-11-22 13:59 x
「EAS」にどうして地理上無関係な米国が加わった事情は知りませんけど、かの国を加えると、環太平洋4ヶ国で始めたTPP同様に母屋を取られて「俺がルール」とばかり主導権(覇権)を奪われるのがオチ。
(政治体制の違いを超越した)ASEAN+6+ロシア+台湾-上下朝鮮国=「新・大東亜共栄圏」で東アジアががっちり経済協力を強化すれば、強大な米国の軍事力も不要になるのですが、アジア諸国の対米依存心(恐怖心)が有る限り、前には一歩も進めない。
PS:ダーウィン駐留は、沖縄普天間海兵隊の2500人撤兵を当のグアム島政府にも断られたのでという話が出てます。
Commented by muga at 2011-11-23 10:46 x
アメリカの繁栄は、その強力な軍事力の裏付けがあってのものだそうで。アジア諸国が結託したところで、肝心な軍事力で見劣りすると、結局何処かの強国の傘下に入るしかないような気もします。
Commented by ucci-h at 2011-11-23 12:10
unknownさん アセアンの国々にも、アメリカが入ってきたことで引き回されるのではないかと言う懸念が出ていますね。中国・ロシアの影響力にバランスをとるため、日本などが入れたのでしょうが、このEASなるもの、今後機能するのかしら?
Commented by ucci-h at 2011-11-23 12:12
mugaさん おっしゃるとおりで、中国の南シナ海での拡張に対して、ベトナム、フィリピン、日本などが集まっても、中国の軍事力強化には対抗できないでしょう。
Commented by unknown at 2011-11-23 13:45 x
南シナ海や東シナ海の石油を巡る中国の脅威と言っても、中国の石油企業はロスチャイルドとの合弁会社なわけであって、結局は英国東インド会社・現HSBCと新興国ロックフェラー米国の覇権争いに過ぎないのでは?
23日期限の米議会妥協案が決裂し米国軍事力の大幅削減が決まった今、日本、中国を含む東アジア人は、ケニア人のオバマに振り回されず、いい加減目を覚まして東亜義和団でも結成すればと思うのですが....w。
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