国務長官が、米国国務長官としては50年ぶりとなる歴史的な
ビルマ訪問を行なう。
このこと自体が、ビルマの民主開放化を示すニュースになる
わけだが、アメリカは、そのままビルマの開放路線の宣伝役に
なるわけではない。
ここ数ヶ月、ビルマの開放路線は急ピッチで進み、すでに
民主化路線に完全に乗ったかのようにも見えるが、必ずしも
そうではない。
①地方少数民族との闘争、②政治犯の釈放問題が、大きく
残っている。
前回お伝えした、地方少数民族軍隊と中央政府との話し合いでは、
大きなところの中で、最北州カチン州の「KIO」(カチン独立組織)
だけが入っていなかった。たまたまの事情かもしれないが、
カチン族75万人と中央政府との関係は、ここ数ヶ月むしろ悪化している。
「ひそかに進むビルマ新政府と地方民族軍隊との話し合い 2011-11-28」
http://uccih.exblog.jp/15017460/
この6月、それまで曲がりなりにも17年間保たれてきたKIOとの
停戦が破られた。政府がKIOに対して、カチン軍を政府の
国境警備隊に編入させるよう求めたからだ。
カチン族は、イラワジ川上流の丘陵地帯に住み、多くがキリスト教徒
となっている山岳民族だ(山の民がキリスト教徒になる等はタイの山岳民族と同じだ)。
第2次大戦のビルマ戦線で英米につき、日本軍と
闘った勇猛な民兵を持つ。
その後数ヶ月、現地に入った人権団体の視察によると、
カチン州でのビルマ国軍兵士による民衆への殺人、レイプなどの
人権蹂躙、犯罪が著しいということだ。
3万人の難民も出ていると言われ、カチン州には民主化改革の
片鱗も見られないと言う。
急ぎの住民支援が必要と言う。
もっとも、中央政府も火消しに手をこまねいているわけではない。
11月29日(火)にも、KIOの代表ジェームス・ルム・ダオは政府側と
話し合ったはずだ。
クリントン国務長官も、「今回の訪問の中でもっと多くの事実確認が
必要」と言っているが、このエスニック(民族)人権問題を
どういう形で出すか注目される。
ビルマ政府は、そのとき何と答えられるだろうか。
(続く)