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の続きです。
過去、多くの航空会社が破産法申請をしてきましたが、やり方は各社各様ですが、
チャプター11申請を機会に、DB(確定給付)年金を放棄するというのが
基本的な流れとなっています。
アメリカン航空の場合も、仮にこの時点で年金が放棄されますと、
185億ドルの債務は、破綻年金の受け皿である「PBGC」(年金受給保障公社)
に引き継がれます。その場合、年金受給者の受給額は多くの場合減額されます。
PBGCも、相次ぐ年金放棄の受け皿としての負担が増えてきています。
1070億ドルの支払い債務に対し、資産は810億ドルと下回っています。
10年前には100億ドルの積立超過のあったこのファンドも、積立不足となっており、
AMRへの肩代わりが生じれば、いっそう積立不足は広がるでしょう。
「破産法申請→年金放棄」の流れは、3つのツールによって支えられています。
第1に、1974年の破産再生法の精神。
企業が生き残るためには、かつては組合との破られない“聖域の約束”であった
年金を放棄してもいいことが、その後1984年の最高裁の「ビルディスコ判例」で
道をつけられています。
また1986年の鉄鋼会社LTVの破綻交渉の結果、年金債権は、
課税債権や担保付債権、賃金債権の下位となり、優先権を失いました。
年金債務は、企業にとって、最も放棄しやすい最大規模の債務となったのです。
第2に、1974年に年金を守るためにERISA(従業員退職所得保障法)が
急ごしらえで作られたとき、PBGCも作られたのですが、
この受け皿があることが、「企業の存続か年金放棄か」と従業員が破綻時に迫られた時、
「会社がなくなるよりは、PBGCから年金をもらった方がまし」と、
年金放棄を受け入れやすくさせてきました。
第3に、資本家の投資論理が、アメリカの年金放棄を後押しします。
「企業の戦力強化にならない退職者への年金支払いという重荷を捨てるなら、
再生投資する」という資本論理が、戦略的破産を生みやすくし、
“はげたか投資家”の利潤機会を提供しています。
アメリカン航空の破産再生はどういう形をたどるかわかりませんが、
破産法とPBGCと投資家に支えられた
年金放棄を含む再生の可能性が高いと言えましょう。