タイの投資先としての地位が揺らいでいる。
英エコノミスト誌の「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット」の
調査によると、2004年~2009年まで6年間は、東南アジアの投資先として、
17%のシェアを占めていたタイは(トップはダントツでシンガポールの44%)、
2010~11年の直近の2年間で、そのシェアを6%と大きく落としている。
逆に、インドネシアが13%から21%へとシェアを上げている。
2010~11年には、マレーシアの12%、ベトナムの10%にも後塵を拝する
ことになった。
このタイの大きな落ち込みはもちろん、両年に特殊な要因があったからだ。
2010年は首都バンコクの動乱があったし、2011年は大洪水だった。
タイ投資庁(BOI)の統計数字を見ても、直近は2010年までだが、
タイへの外国資本の直接投資は、2005~7年の5000億バーツ(167億ドル)の
水準から、2009年は3500億バーツ、2010年は2750億バーツと下がっている。
全体の4分の一を占める電子産業についても、
サムスンや東芝が研究所をそれぞれベトナムやインドに建てるなど、
近隣諸国への移動も見られる。
動乱と水害という一時的な要因だけならいいが、
水害防止対策が十分取られたかということと、
労働力が不足し、しかも最低賃金など大幅に上がると、
中期的にも、工場立地としてのタイの魅力が薄れていくのではと
心配されている。
今後数年、タイは外国からの直接投資のシェアを挽回できるのだろうか。
タイの企業も、再び最低賃金300バーツへの一気の引き上げの
延期を求めている。
水害防止対策は、今のところ小出しである。