そこをタグボートに引かれて走る鉄製の平底のバージ(はしけ)は
バンコクの風物でもある。
しかし、ここ2ヶ月、チャオプラヤを走るバージの数は半減している。
タイのコメ輸出が政府の米価引き上げ策により半減しているからだ。
タイの輸出米の60~65%は、チャオプラヤ川をバージで下り、
チョンブリのシラチャーの西、シチャン島から海洋船舶に積まれる。
近年は、陸上コンテナ輸送が増えてきて競争になってきているが、
トレーラー数十台分に当たる1,300トンのコメを一気に運べる(また原油高騰やタイヤ
交換、賄賂にさらされない)バージ輸送の優位性は残っている。
タイのバージ船は、第2次大戦中、進駐してきた日本軍が部隊への
食糧や銃器を運ぶための鉄製のバージを作ったことに始まる。
バージの製作所は、今でも昨年の洪水で被害を受けたチャオプラヤ川上流の
パトゥムタニやアユタヤに多い。
バージの操業者は、仕事が減っていま悩んでいる。
昨年は洪水でやられ、今はコメの輸送量の半減だ。
タピオカや砂糖もバージで運ばれるが、中国の需要減でこれらも冴えない。
タイがこの調子で、世界最大のコメ輸出国の地位をベトナムや
インド、さらにはミャンマーに譲っていくとすると、バージ運送の将来は暗い。
あるバージ業者は、「将来は川につないで浮きホテルにすることを考えている」
と言う。
チャオプラヤ川の風景も変わっていくのだろうか。