政争からホテルのスパが閉鎖されたことを、年初にお伝えした。
「モルディブでホテルのスパがすべて閉鎖された 2012-1-3」
http://uccih.exblog.jp/15213256/
それから1ヶ月、このムスリムの島で、中東・アフリカのイスラム圏のように、
政権がひっくり返った。
2月7日(火)、あの気候変動に闘う姿が映画の主人公にもなった
この国初の選挙で2008年に大統領に選ばれたモハメッド・ナシード大統領が、
警察や軍の威嚇に屈して、突然大統領を辞任した。
2009年には、水没の危機を訴えるために、閣僚にアクアラングをつけさせて、
閣議を水中で行なったりした大統領だ。
1月に、大統領が、30年間独裁的に政権を握ってきたアブダル・ガユーム
前大統領の懐刀だったアブドゥラ・モハメッド犯罪法廷裁判長を、
不正行為と反対派優遇から逮捕させたことから、イスラム系反対派の反発に
火をつけた。
「大統領は非イスラムの独裁者だ」と反対派はここ3週間に渡り、
気勢を上げてきた。民主派大統領が独裁権限を振るったと見なされてしまった。
ガユーム前大統領は、司法関係に自分のテリトリーを築いていたと言われる。
双方、軍や警察、放送局、党本部に攻撃をかけたようだが、
結局、ナシード大統領は、来年の大統領選を待たずに、
この反乱の裏で動いたとされるモハメッド・ワヒード副大統領に、大統領職を譲った。
ワヒード新大統領は、各党連立で来年11月の選挙まで運営したいと言っている。
この国には、1988年のクーデターの時にインド軍が介入したように、
インドの影響力が強いが、今回の政変は、ガユーム前大統領派進歩党の
反撃と見られる。そして、その裏にイスラム原理派の動きがあると見られる。
政争の色が濃いが、背後には観光を主産業に国の解放に動く
ナシード派と、イスラムの価値を守ろうとするガユーム派を中心とした
守旧派との争いにも見える。
国としてイスラム教以外の信教を禁じ、酒を飲むことや肌を見せることを
禁じているのに、人口33万人の国の経済は、酒を飲み、ビキニで肌を焼く
キリスト教徒、さらにユダヤ教徒の90万人観光客で支えられている矛盾だ。
大統領の私邸に押し入った兵隊が酒のビンを見つけて気勢を上げていたのが
テレビでも映されたという。大統領はユダヤと取引したとも非難された。
ホテルのスパを閉鎖させ(今は再開されたようだが)、
開放派の大統領をひっくり返し、
産業は他に漁業くらいしかなく、失業率が14%台に達し、
人口の1割近くの3万人がヘロインを吸い、賄賂が横行し、
アルカイダに近い者も暗躍するという
このムスリムの島国はどこへ行くのだろうか?
状況はなお流動的だが、
2月9日(木)アメリカ国務省は、新政権を承認すると伝えている。
どちらも悪いから、ここは新政権を中心に妥協しかないだろうと言うことらしい。
アメリカの現政権即時承認の裏には何かありそうだ。
その後の情報だと、反対派は、博物館に押し入り、
12世紀以前の仏教時代からある仏像などを破壊していると言う。
まるで、アフガニスタンのバーミヤンの仏像破壊みたいだ。
アルカイダ関係の人間の暗躍といい、イスラム過激派のにおいがしてくる。
中東のイスラム過激派は、このインド洋の島にも勢力を広げてきているようだ。
ナシード前大統領は、即時選挙を訴えているが、米国国務省は無理だと
反対している。