ディーゼル油である。
ディーゼル油の消費は1日当り5,200万リッター以上と、
ガソリン消費の2.6倍に及ぶ。
トラックやバスといった商用車に使われるだけでなく、
自家用車であるピックアップ・トラックに使われている。
ピックアップ・トラックは、購入の際の物品税率も3%と、セダンの乗用車
の30%より10分の一も低く、しかも維持費である燃料ディーゼルが
政府の補助金政策でリッター30バーツほど(ガソリンは36~41バーツ)
と安く買えるのだから、チェンマイの街には
乗用車よりもピックアップ・トラックが多く走っている。
ピックアップ・トラックの生産台数は年間107万台(2010年)と、
乗用車の55万台のほぼ2倍となっている。
そのディーゼル油の店頭の値段は、次のように積み上がっていく。
製油所出の価格(現在ほぼリッター26.11バーツ)に物品税(現在は地方税含め無税)
がかかり、オイル・ファンドとエネルギー節約ファンドへの課徴金(0.60+0.25バーツ)
が少額かかり、卸売価格は、リッター26.96バーツとなる。
税金の高いガソリンやガソホールに比べて、
ディーゼル油の卸売価格は製油所出の価格に近い。
卸売価格に付加価値税7%(1.89バーツ)がかかり、これに給油所のコスト、マージン
(2.13バーツ+この分のVAT0.15バーツほど)が乗り、
小売価格はリッター31.13バーツと、
政策目標のリッター30バーツちょいにコントロールされている。
ディーゼル油の小売価格が製油所価格の1.19倍という低い比率は、
ガソリンやガソホールが、1.40~1.70倍になるのに比べ、際立っている。
2011年4月アピシット民主党政権下で、ディーゼル油の物品税を従来の
リッター5.31バーツからゼロ(正確にはリッター0.005バーツ)に、
地方税(国の物品税の10%)を0.531バーツから免税にしたため、
最大の自動車用燃料であるディーゼル油からの税収がほぼなくなり、
物品税収入は落ち込んだ。
2011年末までだった税免除の予定を、
現タイ貢献党政権はこの2月末までに引き伸ばした。
その後3月より、物品税の徴収開始となるのだが、
政府は、急変緩和措置として、月にリッター1バーツずつ増やして、
今年度末の9月末までに通常の5.31バーツ
に戻したいとしている(ガソリンはリッター7バーツを8バーツに)。
しかし、陸送業者などからは、来年3月まで待って欲しいとの声が強い。
原油価格が強含みで、このまま行くと、ディーゼル油の末端価格は、
リッター36~38バーツとガソリン並みになるおそれがあるからだ。
製油所出のコストは、ディーゼル油がガソリンより安いわけではない。
なのに、なぜディーゼル油を優遇するか?
商業用のトラックやバスにディーゼル車が多いという事情からだろう。
ちなみに、アメリカではディーゼル油の方が(最近では欧州でもそうか)
ガソリンより高い。製油コストがディーゼル油(軽油)の方がやや高く、
燃費のいいディーゼル車の人気があるからだろう。
日本は、産業車優遇で軽油の方が税金がリッター20円ほど安い分、
ディーゼル油の方が安く、それが当たり前に思われているが、タイも同様か。
タイ政府のエネルギー価格政策は、融通無碍というか、
その時々で柔軟に変化し、また変更される。