と言うより、知的財産権の保護がきつくなると、
偽薬がはじき出されるだけでなく、安くて途上国の人の
ためになるゾロ薬も締め出されるという矛盾が起きているようだ。
2月10日付のバンコク・ポスト紙で、タイのアピラディー氏がコメントしている。
ペルーで前立腺がんにかかった人が、病院で処方された
薬をいくらのんでも症状が改善しなかった。
実は、その薬は偽薬だった・・・
というビデオが、「WIPO」(世界知的財産機構)により
多く流されている。
WIPOは、途上国で売られている薬の25%は、偽薬だと言っている。
インターネットで売られている薬の半分は、ニセモノだと言っている。
毎年、数千人が偽薬で死んでいるとも言っている。
知的財産権を保護する団体が言っていることだから、誇張は
あるだろうが、偽薬が出回っていることは確かだろう。
フィリピンでは、薬の10%は偽薬だと、フィリピンの同様の団体は言っている。
偽薬とは、含有物が間違っているもの、有効な含有物がないものに加え、
含有物は正しいのだが、量が規定未満のものも含まれる。
世界中の偽薬の価額は2008年で、6500億ドル(52兆円)にのぼり、
2015年までに250万人の雇用機会を奪っていると、
「ICC」(国際商業会議所)は言っている。
偽薬を駆逐することはいいことだが、
偽薬の定義が、WHO(世界保健機構)によっても、はっきり定められていないので、
知的財産権の保護を名目に、ゾロ薬(ジェネリック)の生産・流通も抑えられて
しまっているようだ。
ジェネリック医薬品は、購買力に劣る開発途上国の患者にとっては
不可欠な医薬品だ。
それでなくとも、先進国の薬品メーカーは、特許切れで大きな利益が
減るのを避けるべく、「エバーグリーン・パテント」と呼ばれる、
従来の薬にわずかな成分の変更を加え、特許の保護を長引かせる
措置を取っているので、なかなかジェネリック医薬品が出にくくなっている。
タイを取ってみても、2005年以来、医薬品の輸入金額が、国産の医薬品の金額を
上回ったままだ。その差は300億バーツ(10億ドル)に及ぶと、タイ公共健康省は見ている。
特許システムに守られたモノポリー的システムが国産品の伸びを抑えていると見る。
少しでも似たような薬が出てくれば、外国メーカーは特許違反だと訴えてくる。
タイでは、こんにち、病院で偽薬はまず見られないが。
特許ルールと医薬品製造のグレイゾーンは広い。
いい例が、2008年オランダで輸入された抗エイズ薬が差し押さえられたケースだ。
インドのジェネリック・メーカーからの薬で、実際にナイジェリアの患者には
効果のある薬だった。
この時、49kgもが差し押さえられたが、その理由は、
この薬の含有物が、EUの知的財産権保護を定めた規則に
抵触する疑いがあるというものだった。
これにより、途上国向けのこの薬の流通ができなくなってしまったようだ。
欧米の先進国経済が低迷する中、
こういった知的財産権で利益を守ろうと言う動きは強まってくる。
TPP協定にも入ってくるだろう。
過剰な知的財産権行使に反対する声も、
資本の大きな力で抑えられてしまうことになる。
日本はどうなのだろう?
ジェネリック薬を、特許が切れた後ゾロゾロ出てくる“ゾロ薬”と
呼んでいるお国柄だ。
国内の貧困層のためにも、途上国のためにもジェネリック医薬品を
広めようという本当の意思はあるのだろうか。
利益優先の病院、利益優先の学校、お布施優先のお寺。
どれも金がらみで腐りがちです。
薬はどうなんでしょうか? 彼らの論理でいえば、知的財産権は人命よりも重いのでしょうか。