それがエアライン・ビジネスだ。
2010年1月にはJALが会社更生法を申請、昨年11月にはアメリカン航空が
破産更正法を申請をしたが、この業界にはよくあることだ。
最近では、66年の歴史を誇るハンガリーのフラッグ・キャリアー「マレブ航空」と
スペインの「スパンエアー」が破綻している。
世界の航空業界の84%をカバーする「IATA」(国際航空協会)が、
世界の航空業界のここ10年の業容の有様をまとめた。
バンコク・ポスト紙が2月13日のビジネス欄で要領よくまとめている。
紹介しておこう。
(バンコク・ポスト紙より。数字は、IATAの統計と違うものがあります)
エアライン、航空産業ほど人気があるのに、儲からないビジネスも珍しい。
2003年から2011年までの9年間で、世界のエアライン会社を集計すると、
赤字の年(-1.0~-4.6%)が、半分以上の5年間もある。
黒字の年と言っても、純利益率は1.1~2.9%に過ぎない。
過去9年間の赤字合計は479億ドル(3.8兆円)にのぼり、
黒字合計の424億ドル(3.4兆円)を上回っている。
2012年のIATAによる利益率の予想も0.6%。
欧州の金融システムに齟齬が生じれば、
マイナス1.4%の赤字になると見ている。
エアライン産業は、経済の世界的な拡大、国際観光の拡大につれて、
定期便乗客数こそ、2003年の18.5億人から2011年の28.4億人へと
8年間で5割強増えているが、しつこい原油価格の値上がりと、人件費の高い
構造、また過当競争により、利益のあまり上がらない構造のままやってきている。
過去40年間を見ても、平均の利益率はわずか0.3%にしかならない。
二桁の利益率がザラに見られる他の業界から見れば、「よく続けていられるなあ」と
見られる業界である。
タイ航空などは良いほうだ。
51年の歴史の中で、赤字になったのは、2008年のリーマンショックと
2011年の大洪水の2年だけだという。
2010年には、業界の平均2.9%を上回る8.3%という高い利益率を上げている。
これほど利益が上がらないのに、多くの参入企業があり、また破産法など申請するが
なかなか業界を去る会社が少ないのはなぜだろうか?
ひとつは、この空を飛ぶ業界がなんとも夢を持っているからである。
今でこそ人気はやや落ちたが、パイロットやスチュワーデスは花形職業だ。
また、航空産業は、世界各地で伸びる成長産業に見えるからだろう。
実際、乗客数や収入は、(リーマンショック時の落ち込みを除き)高い伸びを
示してきている。
さらに、この業界には成功物語がある。シンガポール航空やエミレイツ航空など、
業績のいい企業もある。
サクセス・ストーリーが多くの参加者を招く。
世界の航空会社の数は、1000社にのぼるという。
また、各国でフラッグ・キャリアーと呼ばれる
国有航空会社が多く存在することも、航空会社の数を減らさない要因となっている。
また、国際間を超えた合併が多くの地域でできないことも、航空会社の数を
多くしていると言えよう。
従って、2010~2030年の今後20年間も、航空機の需要は膨大だ。
エアバス社は、27,800機、3.5兆ドル(1機平均1.26億ドル)、
ボーイング社は、33,500機、4兆ドル(1機平均1.19億ドル)の
需要を見ている。うち44%は、代替需要だ。
年平均1,500機ほどの需要だ。うち3分の一が成長するアジアからの需要となる。
2010年に18,890機をもつ航空業界は、2030年には倍の
36,300機ほどを持つことになると見られる。
20年間で倍ですむのだろうか?
以前記したが、これに連れ、世界のパイロット、整備士の数が足りなく
なりそうだ。
「アジアでパイロットが足りなくなる 2011-9-24」
http://uccih.exblog.jp/14625265/
30年前に比べれば、今の航空運賃は楽に実質半分以下になっている。
さらには格安航空も増えている。消費者にはうれしいことだ。
世界の航空産業は550万人を雇用していると言われるが、
安全な航空会社が多く便を飛ばしてくれるとすれば、
それはありがたいことだ。
きょうもチェンマイのハンドンのビッグCの10mほど上空を
飛行機が着陸している。
チェンマイにももっと飛行機が飛んで欲しいなあ。