40年ほど前、はじめて訪れた時は、赤道直下の国なのに
緑が整備されていて、表面はきれいな町並みに驚いた。
しかし、何回か訪れるうちに、その独裁的都市国家の
いろいろな縛りに人工国家を感じ、いやになってしまった。
暑いし。まあ、旅行で行くなら良いが・・・。
シンガポールは、東南アジアの中では飛びぬけて
経済水準の高い国である。
一人当たりのGDPは、2010年43,117ドルで世界第15位と、
42,820ドルの日本(16位)の上を行く。
アジア一の経済水準の高い国である。
面積はわずかに707平方km。日本で3番目に狭い都道府県である
東京都(2,189平方km)の3分の一だ。
日本の対馬ほどの面積で、佐渡島や奄美大島より小さい。
人口は520万人へと増えている。10年前の430万人から2割も増えている。
この人口は、日本の都道府県で言えば、
第8位の北海道と第9位の福岡県の間に入ってくる。
外国からの移民労働者が増え、今や人口の36%にもなっている。
この変化は、後述するようにシンガポールの最近の問題の1要因になっている。
小さな島に大きな人口だから、人口密度は、7,355人/平方kmと高い。
東京都よりも1.2倍高い。もっともアジア・中国中心に人口密度が平方kmあたり
1万人以上という都市が、世界には20ほどもあるから、
世界は広い(トップはインドのムンバイの3万人近く!)。
国・地域別では、香港を上回り、マカオ、モナコに次ぎ、
世界3位の人口密度になっている。
GDP生産額は、ほぼ2,000億ドル(2010年)。小国ながら、ナイジェリアやイスラエル、
フィリピンを上回り、香港に次ぎ世界第40位。隣国マレーシアやポルトガルに肉薄している。
外国からの直接投資も、アセアン諸国の中では図抜けて大きい。
しかし、そのシンガポールに、最近1965年の分離独立以来の政治不信が
起こっていると、ロイター電は伝えている。
独立以来ほぼ独裁的に政権を担ってきた人民行動党(PAP)が、
2011年5月の総選挙で、与党として初めて1議席を失い、得票率も
60.1%の史上最低となった。
と言っても、まだまだ人民行動党の独裁的国家であるが。
建国の父、リー・クアン・ユーの25年間の治世、その後21年間の後見、
シンガポールの政治への信頼はあまり揺るがなかったが、2011年
彼が完全に引退して、シンガポールの問題が吹き出てきたと見える。
シンガポールの経済社会問題は、移民労働者の増加による
所得格差の拡大に集約されるだろう。
人口の増大により、以前からの交通渋滞だけでなく、社会インフラが
ついていっていないようだ。
また、首相は、世界のリーダーの中でトップの所得を得る国で、
一人当たり平均GDPも高所得国なのに、
月1000ドル(8万円)以下の収入の者も多く見られ、最低賃金制度
もない。社会のセイフティー・ネットの乏しさが、低所得者層の不満に
つながっているようだ。
ここ10年、所得の伸びていない人間も多い。
インフレも5.5%と高めだ(1月は4.8%)。
政府への不満は、情報開示の遅さからも来ていると言う。
最近も、汚職役人逮捕の情報開示が、1ヶ月後になってからであった。
指導者リー・クアン・ユー引退後のシンガポールは、
世界ベストの空港やビジネス最適地といった世界ランキングを
誇っていないで、まわしを締め直して、国内の社会経済問題に
あたらないと、ここまでの栄光が過去のものとなってしまう。