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ミャンマー政府は4月1日の選挙の洗礼をどう受けるか?
ミャンマーの4月1日の補欠選挙が迫ってきた。
地方も含め全議席の3%(48議席)だけの選挙だが、
アウンサン・スーチー率いるNLD(国民民主連盟)が参加する選挙と
いうことで注目されている。

自由で公正な選挙が行なわれるかどうか、
欧米の経済制裁撤廃の条件にもなるので、注目されるところだ。

ミャンマー政府は4月1日の選挙の洗礼をどう受けるか?_d0159325_17342599.png

筆者の手元に、イギリス・オックスフォード大学教授で、
アフリカ経済研究所長でもあるポール・コリアーの
「民主主義がアフリカ経済を殺す」という本がある。

翻訳の題名はきついが、アフリカ中心に世界最底辺の10億人が住む
58カ国の多くは、民主主義の手段である選挙を取り入れているが、
この形式さえ踏めば、あとは汚職だろうが、独裁だろうがし放題の
国々が多いという指摘である。
この58カ国の中には、ミャンマーとラオスも含まれている。

つまり、選挙と言う手続きを踏めば、民主主義を体現したことになり、
あとは為政者は好きなように出来る、またそうしている国が多いと
いう指摘である。選挙を通した民主主義という形に惑わされるなと言う
警告の書である。

選挙そのものにもまやかしが多い。
著者は、選挙を意のままにする6つの方法を挙げている。

1.知識の乏しい有権者を支配するメディアを通じてだます(洗脳法)。
2.不満の多い国民に対して、不満の根源を国内の少数民族や
  外国政府をスケープゴートにして、自らを有利にする(スケープゴート法)。
3.在任中に金をためて、選挙時には票の買収を行なう(買収法)。

4.勇敢でない選挙民に対して脅迫を行なう。少なくとも投票に行ったかどうか
  監視できる(脅迫法)。
5.汚職を告発したりして、立候補者を制限し、有力候補を排除して闘う(立候補排除法)。
6.事前の不在投票などを積み増しておいて、不正集計を行なう(不正集計法)。

ミャンマーの2010年の総選挙は、外国からの記者団の入国も拒んでの
不正な選挙だったといわれる。
軍部を中心とする与党USDP(連邦団結発展党)はどんな選択肢を
持つのだろうか?

1の洗脳法の効果は、情報の流通拡大でやや薄れてきた。
2の少数民族や欧米をスケープゴートにする方法も、改革の流れから適さなくなってきた。
5の有力立候補者の排除もアウンサン・スーチーの立候補や学生運動家の釈放で
有力な選択肢でなくなってきた。

3の買収と、4の脅迫(Intimidation)の組み合わせ、つまりあめとむちの使い分けが
最も有効なようだ。
そして、最終的には不正集計と言う手段が残される。

ミャンマー政府は4月1日の選挙の洗礼をどう受けるか?_d0159325_1736317.jpg

USDPの選挙キャンペーン担当は、ハードライナー(守旧派)のトップで
タン・シュエ将軍に近い前工業相のアウン・タウンである。
今回がわずか48議席の選挙とはいえ、流れをNLDのものにするわけには
行かない。

USDPでは、一町村あたり500万チャット(50万円ほど)の資金を用意し、
キャンペーンに当たらせているという。選挙民への実質利益の誘導が
ねらいだ。
この資金は、過去数ヶ月、国有財産を売却して財源にしたとも言われる。

USDPの実績を讃えるため、道路の改修や学校、病院の建設場所には、
「USDPにより行なわれた」というカラフルな大看板が各所に立てられているという。
電気の供給も、「USDPの候補者が選ばれれば出来るだろう」と約束している。

同時に、インティミデーション(脅迫)も欠かさない。
NLDの候補者のバイオ・データをばら撒き、その候補者の欠陥を宣伝している。
新工業地帯のダウェイでは、USDPの有力者マウン・マウン・テインが、
「USDPに投票しないと、職を失う」と脅している。

最後の手段である不正集計には、豊富な手段がある。
投票所職員や監視係への買収は、初歩的手段だ。
買収、贈賄が当たり前のこの国では、やましさが少ない。

ミャンマーは、「トランスペアレンシー・インターナショナル」の「世界腐敗指数」
2011年版において、アフガニスタンと並んで、世界182か国中、第180位に
位置している。
なにせ、2006年のタン・シュエの娘の結婚には、ベンツなどの
車のキーが70も届いたという国柄だ(70はオーバーにしても)。

事前の不在投票は、与党の票アップに有力な手段だ。
マウン・マウン・テインに近い現漁業相は、前回も、3000の漁船に
90日間の出漁を命じ、10万人近くに事前投票を行なわせた。
前回の選挙の開票時には、不在者投票票が山ほど出てきたといわれる。

今回の選挙は、現政権にとっては、完敗は困るが、アウンサン・スーチー派も
入れて、いわば民主的政治体制を示し、欧米の経済制裁を撤廃させる
お化粧行事でもある。
へたに不正が伝わって、イメージを悪くするより、クリーンさを示したいはずだ。
しかし、現場の方は、勝ち負けの勝負で必死となろう。

選挙10日前の3月21日になって、ミャンマーは、国際選挙視察団を
受け入れることを表明した。
クリーン選挙の証人を立てることにした。
ただし民間のNGOは追い立てられた。

もっとも通常なら、準備もあるからもっと早い時期から入国活動させる
筋合いのものだ。ここにも形式だけは整えようという意思が見える。

4月1日まであと1週間余り。
どんな選挙結果になるのだろうか?
by ucci-h | 2012-03-23 17:37 | ミャンマー・ラオス・カンボジア | Comments(3)
Commented by くんたれ at 2012-03-26 17:25 x
補欠選ですから、政府は経済制裁を解除させるために、できるだけスーチに議席を取ってもらったほうがよいと考えているのでしょ。
Commented by 京都でデモが起きました at 2013-01-02 18:08 x
2012年衆議院選挙と今後の政策に関するアンケート

今回の衆院選挙で自民党は圧勝し、第二次安倍内閣が組閣されましたが、今後どのような政策が実行されるべきだと思いますか?最もあなたの意見に近いものを選択してください。それぞれの政策についてご意見がありましたらコメントもお願いします。
作成者:admin  受付期間:2012-12-27 00:30:00~2013-01-03 19:59:00

http://senkyomae.com/enq001.htm
Commented by ucci-h at 2013-01-04 19:18
すみません。受付期間を過ぎてしまったようです。日本の場合、やはり当面の景気浮揚策と、長期的な人口対策が必要かなと愚考します。
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