政治が弱いため、十分外国資本を取り入れて、
経済成長を高めることをできないでいる。
このままでは、一党独裁で決定の早い中国に
ますます水を開けられてしまう。
金融システムの弱さもそのひとつだ。
金融システムが弱いというのは、貸し手の金融機関、
借り手の個人・企業、そしてこれを規制する国の
監督官庁が、いずれも基盤が脆弱だという意味だ。
インドでは、銀行の不良債権が、他のアジアの途上国に
負けず増えているが、国の行政運営が遅いことが、
不良債権を生む素地になっている面がある。
ニューヨーク・タイムズ紙の紹介する、「ヒンドゥスタン建設」会社が
良い例だ。
ヒンドゥスタン建設は、政府のインフラ作りの仕事をやっているが、
このたび、銀行に対して借入金13億ドル(1080億円)の借り換えを
要請した(この銀行の中には国営銀行も含まれる)。
理由は、政府の道路建設の仕事の支払いが遅れており、
また他のプロジェクトでは、着工も延びているというわけだ。
会社と国との支払契約がどうなっているのか知らないが、
インドの連邦政府が財政赤字に苦しんでおり、支払いが
先延ばしされていることも関係しているかもしれない。
政府は、新年度(2012年4月スタート)は、増税と補助金
削減で、財政赤字を2011年度のGDP比5.9%から、
5.1%にしたいと言っている。
インド政府の2011年度の財政赤字は、GDP比4.6%が目標だったが、
130億ルピー(209億円)の補助金予算を200億ルピー(322億円)に
膨らましてしまうなど、財政の規律がとれていない。
インドの公的債務残高も、GDP比69%に上がってきている。
産業のうち、政府が貸し手や担い手として顔を出す、
航空、インフラ、不動産、通信といった基幹産業分野の
財政状態がことに悪いようだ。
インド航空を筆頭とする航空産業の赤字は、世界全体の
4割を超えることは先日見たとおりだ。
国有の電力会社の業績は悪く、累積損失は140億ドル
(1.15兆円)に達している。
電力コストをカバーする電気料金を客から取っていないからだ。
日本の電力会社のように、コストを過剰に積み上げて料金チャージを
できる(総括原価方式)国を、インドの電気会社は
きっとうらやましく思っていることだろう。
現政権の政権基盤が安定せず(3月も5州の地方選挙で1勝4敗)、
確固とした政策を通せず、
いったん決めた小売業への外資の導入政策も覆るなど、
政策面でいいところがない。
また、行政執行の遅れは、特に不動産業、建設業界への痛手になっている。
前述のヒンドゥスタン建設も、2010年には、すでに施工にかかっていた
ラバサ新都市建設(ムンバイから190km)が中止され、大きな損失を蒙ったという。
3月半ばにも、トリベディ鉄道相は、年に70億人を運ぶ赤字国鉄の料金を
9年ぶりにあげようとしたが、彼は上から解任され、値上げ案は捨て去られた。
政治、官僚組織ががうまく機能していない国は、民間企業の発展も阻害される。
日本などはましなのかもしれない。