特許で守られている薬の製造にインドで画期的な決定が出た
薬の開発には、多額の開発資金がかかるので、
薬品には一定期間パテント(特許)が与えられ、
その間、独占的製造販売権を与えられ、
開発費を回収できるような価格で売られる。

医薬品にかかわる4つの基本的特許権のうち、
物質特許と用途特許が切れたところで、
ゾロ薬(ジェネリック医薬品)が出てくる番となるが、
そこまでの特許の効いている20数年間は、
新薬は高い値段でしか、開発途上国の人も買えない仕組みになっている。

エイズ、マラリヤなど開発途上国で多く発生する病気の治療薬に
ついては、欧米の製薬会社が世論の圧力に折れ、途上国向けに
例外的に廉価で提供しているケースはあるが、あくまで例外である。

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“開発途上国の薬局”と呼ばれ、世界のジェネリック医薬品の
大半を供給するインドは、2005年まで35年間、医薬品は健康にかかわる
物ということで特許の対象ではなかったので、多数のゾロ薬を生産できた。
2005年にWTO(世界貿易機構)の知的財産権保護の「TRIPS協定」を
受け入れ、他国並みに医薬品にも特許を適用した。

これにより、開発途上国の薬局インドでも、特許で守られた新薬に
対するゾロ薬は作りにくくなった。

特許について言えば、2ヶ月ほど前に触れたように、
既存薬の化学構造を変えただけで新薬の特許を取る
いわゆる「エバーグリーン特許」が先進国の医薬品メーカーの間ではやっている。
 「知的財産権の強化で抑えられるジェネリック医薬品の開発 2012-2-22 」
  http://uccih.exblog.jp/15469528/

医薬品の特許制度の効果については、
英仏の研究では、近年では、特許をとった医薬品の薬効は、
既存薬のそれとほとんど変わらないと判明してきていると、
国境なき医師団などは伝えている。
特許で医薬品の開発費を稼がせてやる効果が薄れてきているのか。

確かに、特許制度で医薬品の開発資金を守ることは
必要なのかもしれないが、それにしても欧米の大手医薬品
メーカーの利益率の高さは、ふつうの製造業者を寄せ付けない。

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話がずれました。

インドの特許庁は、さる3月12日、画期的な決定をした。
特許を持った薬に対しても、特許料を払うことによって、
インド・メーカーにゾロ薬を作れるようにしたのだ。

独バイエルのガン治療薬「ネクサバール」(ソラフェニブ)の
ゾロ薬の製造を、インドのナトコ薬品に、6%のロイヤルティー
(特許使用料)を払う代わりに、行なえるよう許可したのだ。

理由は、バイエルが適正な(手頃な)価格設定でネクサバールを
供給せず、患者に手の届かないものになっているので、強制的に
製造ライセンスを提供させ、インド・メーカーが代わって、手頃な
価格のゾロ薬を提供出来るようにしたのである。

これにより、月間投与額5500ドル(45万円)していた腎臓・肝臓の
ガン治療薬が、97%減の月175ドル(1万5千円)へ下がると見られる。
バイエルへの見返りのロイヤルティーの支払い6%と言っても、
安価な価格に対する6%だから、月間投与分で10.5ドル(900円)である。

この決定は、途上国において、特許に守られた高価な新薬と
いえども、公衆衛生という社会的ニーズが優先され、
“強制ライセンス実施”が行なわれると言うことだ。

この件と同時に、インドで医薬品特許制度が出来た2005年以降、特許が
却下されてきたスイス・ノバルティス社の白血病薬「グリーベック」の
行方も注目される。

ノバルティスは、「この薬は世界40カ国で特許を認められたのだから、
インドでも認めろ」と訴えているが、
インド政府当局は、この薬は、既存薬の化学式を変えただけで、
薬効の増進も認められず、新薬特許に値しないと跳ね続けてきている。
エバーグリーン・パテントへの途上国からの抵抗である。

一方、製薬会社の方も、受身で状況を見ているわけには行かない。
バイエルへの決定を見て、スイスのガン治療薬トップのロッシュでは、
インドの会社と組んで、自社の乳がん治療薬「ヘルセプチン」と
白血病薬「マブテーラ」の2種を、インドで格安の価格で販売すると
発表した。

ともに、通常なら月間3千~4千5百ドル(24万~36万円)かかる薬だ。
ただし、仲介卸会社が買い集め欧米で売ることをさせないように、
インド会社の薬品名と別デザインのパッケージで出すと言われる
(もっとも薬効が同じなら、ネットで販売するものが出てくるでしょうが、
薬効を落とすのは難しいでしょうね)。
一種のブランド戦略となろう。

今回のインド特許庁の決定は、高価な薬に手の届かない途上国の人に向けて、
ジェネリック薬提供の扉が大きく開かれたと見られる。
アメリカは、この動きに対し、貿易協定で反対して来るだろう。
タイは、もちろん、強制ライセンスの実施を行なう方の国である。
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by ucci-h | 2012-04-27 08:57 | 中国・韓国そしてインド | Comments(0)

北タイのチェンマイをベースにメコン、アセアンの経済、見所、食べ物を日本と比較して紹介します。ただし投資をアドバイスするものではありません。コメント記入は題字をクリック下さい。
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