一本化しようと言うアイデアが議論されている。
1.公務員及び家族のための「公務員医療保険制度」。
人口の11%を占める760万人の公務員及び家族のため、
1家族当り11,000バーツ、合計で830億バーツほどの税金が使われている。
2.1991年に出来上がった民間企業の従業員向けの「社会保障基金制度」。
雇用主、従業員、政府が、賃金の1.5%分ずつを出して基金としている。
人口の15%を占める984万人のために、年間一人当たり
2,133バーツ(同じく1.5%分)政府の負担がかかっている(本人のみ)。
トータルで210億バーツほどの税金が使われている。
3.2001年に、その他の国民4,830万人(人口の4分の3)をカバーするため
はじまった、俗に“30バーツ医療”と呼ばれる「ユニバーサル・ヘルスケア制度」
(今は、徴収の経費の方が高くつくため、30バーツの徴収は行なっていない)がある。
一人当たり2,755バーツ、総計1,320億バーツほどが予算化されている。
このタイの医療制度は、開発途上国の中でも、早くに国民皆保険が
できたと賞賛されているが、その負担は、関係者に重くのしかかっている。
「真意が伝わってこない30バーツ医療制度の改革 2012-2-26」
http://uccih.exblog.jp/15489776/
このゴールデン・カード(登録住民証)を使う30バーツ医療は、
住民に金銭的負担がない分、公立病院は混み合い、
4時間待ちの3分診療といった体をなしている。
3つの制度の統合と言っても、政府、企業といった雇用主から
選ばれた医療制度に浴している公務員、従業員は、
その他大勢の混み合う医療制度に統合されたくないだろう。
平等化のための統合と言っても、なかなか進みにくいはずだ。
30バーツ医療は、国から制度参加病院に対して与えられる
補助金は、先に見たように、患者一人当たり年間2,755バーツである。
一人当たり固定費用なので、患者が頻繁に訪れたり、
さらに高額の治療を要求するようになったりすると、
病院は足が出ることになる。
考えてみるといい。
公務員の医療保険は一家族だが年間11,000バーツ、民間企業従業員の医療保険は、
年間賃金の計4.5%だから、同じく年10,800バーツくらいで賄っているはずだ。
ユニバーサル・ヘルスケアは、これに対し2,755バーツだとすると、
非勤労者も含めた医療制度だとは言え、額が少ない。
一人当たり、平均年に2.5回ほどしか病院に行かないとしても、
通院1回あたり1,100バーツの費用では、治療内容も限られよう。
ちょっと腰の痛みで行っても、保険がなければ、3,000バーツや
そこらの請求書が出てくるのだから・・。
当然、無料医療だからと、訪問を増やす高齢者も増えよう。
新しい治療情報を知って、そういう治療を求める患者も出てこよう。
高齢化に伴い、治療期間も長くなる。
一人当たり定額の固定費の補助では、やっていけないところが増えよう。
実際、834の公立病院のうち、495の病院が財政的に苦しいと言われる
(実際の収支がどうなっているのかは不明だが)。
「タイの30バーツ医療制度に参加した私立病院の悩み 2011-8-1」
http://uccih.exblog.jp/14246839/
病院側も収支改善に取り組み始めた。
たとえば、ベッド数を減らし始めた。
国民皆医療制度から見たら、逆行する措置だが、
ベッドが多いと、それだけ赤字患者を受け入れざるをえず、
苦肉の策をとっている。
ユニバーサル・ヘルスケア制度の広がりが、思わぬベッド数の
減少を呼んでいる。
3種類の医療制度の統合や、30バーツの再徴収の是非が議論されて
いるが、タイ貢献党政府の取るべきは政策は、このユニバーサル・ヘルスケア
制度の合理的なチェック&バランスのとれた仕組みに移行することではないだろうか?
http://www.amazon.co.jp/2010%E4%B8%AD%E6%B5%81%E9%9A%8E%E7%B4%9A%E6%B6%88%E5%A4%B1-%E7%94%B0%E4%B8%AD-%E5%8B%9D%E5%8D%9A/dp/4062091704