そのインフレ的経済政策には批判が多い。
しかし、一方で、インラック首相に対する人気は
なお高いという乖離現象が起きている。
これはどうしてなのだろう?
早晩、同じ方向へ行くものなのだろうか?
5月2日付けのバンコク・ポスト紙が伝えるところによれば、
バンコク大学が、63人のエコノミストに対し、4月20-25日の
期間、タイ貢献党の経済運営に対する評点を行なって
もらったところ、全体の評点は100点満点で、38.3点という
低いものだった。
一番低いのが、エネルギー価格政策で30.3点だった。
またインフレ対策については、31.7点と、これも低いものだった。
所得格差の是正についても、34.7点と低評価だ。
財政赤字対策も、37.5点と、30点台だった。
逆に最高点は、経済成長策に対する50点だった。
昨年の洪水からの復興政策は、45.3点と比較的高かった。
点数は見られないが、タイ貢献党政権の3つの貢献は、
①ドラッグに対する闘い、②自動車初回購入者税優遇、
③30バーツ医療制度の維持だった。
逆に、評価できない政策のトップ3は、
①国家石油基金への拠出の削減、②コメの抵当スキーム、
③生徒へのタブレットの配布だった。
全般に、タイ貢献党の経済政策は、エコノミストから評価されていない。
もっともエコノミストは自分が経済の専門家だとの自負があるから、
評価は厳しくなりがちではあろうが・・・。
これに対して、インラック首相の人気は落ちておらず、
むしろ上がっている。
スアン・ドュシット世論調査が4月25-30日、7213人を対象に行なった調査によると、
この4月のインラック首相のパフォーマンスに対する評価は60.4%と高い。
1~2月の54.8%、3月の59.0%からさらに上がっている。
25の項目のうち、以下の7つしか、平均以下の評価を受けていない。
①国家安全保障、②失業、③組織犯罪、④貧困対策、⑤インフレ対策、
⑥閣僚のパフォーマンス、⑦贈収賄対策
25項目のうち18項目が平均点以上の評価を受けているが、
高いものは、以下のような6項目である。
①政権全体のパフォーマンス、②教育政策、③ドラッグ抑圧、
④賃金アップ、⑤生活水準の改善、⑥国の団結
筆者の見るところ、インラック首相は、失言もせず、
女性らしく優雅に振舞っているので好感をもたれている
面が大きいと思われるが。
評価は移ろいやすいものだが、この先、インフレ問題が
高じて来ると、インラック政権の評価は、さてどうなるのだろうか?
経済状態を巡って、東北部の赤シャツ支持層から、
タイ貢献党への失望感も出始めている。