課題を取り上げたが、これと関連して、医療が
ミャンマーの後進性の象徴になっている。
第4回目の今回は、ミャンマーの医療について
かいつまんで触れておこう。
ミャンマーの軍事政権は、教育と並んで、医療にもあまり
予算をつぎ込んでこなかったようだ。
2008年時点で、国民一人当たりの年間医療費は1ドル(100円)しか
なかった。教育費以下である。
民間の篤志に頼るしかないが、経済鎖国であったため、
海外からの医療援助も、年間一人当たり7ドル(2010年)。
カンボジアの52ドル、ベトナムの34ドル、ラオスの67ドルと比べても
桁違いの低さだった。
公的・私的支出あわせた世界の一人当たり医療費ランキング(総務省2008年)でも、
ミャンマーは、対象93か国中最下位、アフリカのエチオピアやコンゴより下位で、
一人当たり10ドル。91%が民間支出。GDP比わずか2%であった。
ちなみにタイは65位だが、一人当たり164ドル。74%が公的支出。GDP比4.1%だった。
こういった状況だったから、ミャンマーは世界でも不名誉な健康状態を示した。
・新生児、幼児、5歳未満の子供の死亡率では、東南アジア中最悪だった。
・エイズの死者は年間18000人。世界のエイズ死者数の10人に一人に当たる。
HIV治療薬が届かなかったことが大きい。
・結核は、世界平均のほぼ3倍、マラリア死者数も、アジア地域で一番高い。
豊かな資源を誇る国にしては、悲劇だったと言わざるを得ないだろう。
医療費の不足とあわせて、訓練をつんだ医療従事者が足りなかったことも、
水や電気の来ない村の医療事情を悪化させたようだ。
ここにも教育の不在が影を落としている。
状況の悪い村へ行くと、子供と妊婦の8割が貧血だそうだ。
テイン・セイン政権は、医療費予算を4倍増し、
厚生大臣に小児科医ペテット・キン氏をすえ、医療の復活に力を入れだした。
政府は、また地域の保健センターのスタッフを倍増させた。
倍増と言っても、ひとりを二人にしたところだ。
まだまだゼロからスタートしたようなものだ。
ミャンマーの医療事情の改善は、海外からの援助増と合わせ
これから注目されるが、必須なことだ。