高値をつけたときのことは、当時、筆者はニューヨークにいて実感したので、
今でもはっきりと憶えている。
当時は、イラン革命もあり原油価格は高騰し、世界のインフレも高進し、
さらにはソ連のアフガニスタン侵攻などもあり、ハイパー・インフレが
盛り上がった時だった。一方米国の景気は、回復前夜にあり、
株価は歴史的な低さにあった。
ついに80年代初頭にピークを打った金価格!
これで10年や20年は、金価格は低迷するだろうと思うほどの
吹き上がり方だった。
そして、確かに、70年代のインフレ時代が終わり、
金価格は、2000年までその後20年間低迷を続け、
1オンス252ドルまで下げた(1999年7月)。
みなが金に興味を失ったこの頃を底に、
金価格は、21世紀の最初の12年間上がっていくことになる。
2007年には、1980年の高値を四半世紀ぶりに抜くと、
2011年8月には1オンス1889.7ドルの高値をつけた。
閑話休題。
20年間と言うのは、相場の世界ではかなり意味がある。
昔、1960年代末から80年代初めまでの20数年間、
ニューヨークの株式市場はちっとも上がらなかった。
インフレ調整後の実質値では、20年代の大恐慌後の
20数年と同じように、実質値はほぼ3分の一になっていた。
20数年、1世代と言うのは意味がある。
ウォール街で働く67年入社以降の証券マンは、「株価は上がらないもの」との
意識が染み付いていた。しかし、80年以降入社の1世代下の連中は
そういう意識はない。今度は「株価は上がり続けるもの」とインプット
されていった。
日本の株も90年以降、下がるもの、上がらないものと20数年
記憶に刷り続けられてきた・・・。
金価格に話を戻そう。
70年代はじめ、ニクソンショックで固定相場制から離脱する前の
金価格は1オンス35ドルだったから、
70年代のインフレ時代に、24倍にもなった。
そして、2000年代の10年間では、250ドルから
1890ドルまで、7.5倍になったことになる。
金は利子も配当もつかない代わりに、インフレヘッジ、リスクヘッジ
として買われる。
面白いチャートがある。
70年代はハイパーインフレの時代だったが、金の値上がりは
もっとハイパーだったので、インフレ調整後の「実質金価格」でも
10年で8倍ほどになった。
2000年代は、インフレは緩やか、デフレ色の濃い時代だったはずだ。
従って、実質値では5倍になっている。
もっとも底値からピークまでの値段の変化だ。
70年代の金価格の高騰の理由はよくわかるが、
インフレがさほどでもなかった2000年代になぜ
インフレ・ヘッジである金価格は7.5倍にもなったのだろうか?
(その2に続く)
また遊びに来ます!!