融資返済が遅れがちとなっている。
タイの銀行の融資ポートフォリオの8割近くは
企業向けだ(2割は個人向け)。
タイの製造業の裾野の広がりに連れて、
中小企業向けの融資が増えている。
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商業銀行が中心だが、政府系の国営銀行の
中小企業向け融資も増えている。
中小企業向け融資の多い国営銀行は、
①中小企業向け融資の「SMEバンク」(中小企業銀行)、
②都市部の「GSB」(政府貯蓄銀行」、
③農村向けの「BAAC」(農業農協銀行)である。
タイには8つの国営金融機関がある(SFI、特別金融機関と呼ばれる)。
バーツ危機の直後1998年の国営銀行の全金融機関に占める
融資のシェアは13%だったが、2013年半ばには33%へと上がっている。
2002年にできたSMEバンクと、「タイ・イスラム銀行」(TIB)の
融資内容が悪くなっていることが伝えられている。
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タイの中小企業(製造業で従業員数200名未満、固定資産
2億バーツ未満)は、270万社にのぼり、タイの全企業数の99%を占める。
GDPへの貢献度では、大企業(4,000社余り)の45%に劣るが、
40%ほど貢献している。
従業員数においては、大企業の3倍強の900万人近くを
雇用している。
2012~2013年の最低賃金の大幅引き上げにより
もっとも痛手を受けたのは、中小企業である。
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最近の景気低迷により、中小企業各社の資金繰りが
きつくなってきている。
売り上げ伸び悩みとコストアップの板ばさみで、
借り入れの返済も遅れがちである。
政府の公共事業の遅れも、土木事業下請けの多い
中小企業にとって痛手である。
タイの公的信用情報機関である「ナショナル・クレジット・ビューロー」
(NCB)によれば、タイの金融機関の「特記ローン」(SML、支払いが
1~3ヶ月遅れている支払い遅滞ローンのこと)の口座数は、
昨年17%も増えて、60万口座に達したという。
全口座数7,300万口座から見れば、0.8%に過ぎないが、
支払いの遅れる中小企業の口座が増えている。
また、資金繰りの悪化から、新規ローンの申し込みは、
2012年の650万件から昨年は1,000万件に急増しているという。
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さらに金融機関の不良債権(NPL、ノン・パーフォーミング・ローン)
はどうなっているか?
現在の金融機関のNPLは110万口座ほどで、ここ3年ほど
全体では増えていない。
97年のバーツ危機の時のNPL急増に懲りて、
金融機関は、不良融資先の融資増に対し慎重にやってきている。
タイで資産規模2番目の「クルンタイ銀行」(KTB)の
中小企業向けの不良債権は、2014年3月時点で全ローンの2.6%に、
昨年末の2.3%から上がってきている。
KTBは、この比率を年末までに2%未満に抑えたいという。
中小企業向け融資ではトップのカシコーン銀行(資産規模でタイ第4位)では、
NPLの比率が2.85%に上がってきているが、3%までは許容するという。
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商業銀行のリスクの高い先への慎重な貸し出しによって、
銀行システムへの焦げ付きの問題は避けられているようだ。
むしろ問題は、国営金融機関にあるようだ。
国営金融機関8行あわせた不良債権の全ローンに占める比率は、
2014年2月末で5.3%。民間銀行の2.3%の倍以上となっている。
中小企業相手のSME銀行にいたっては、NPLの比率は40%にものぼり、
危機的状況だと言われる。
金融機関の問題については次回に触れよう。
中小企業は、新しい技術革新、新製品開発の宝庫である。
タイ政府としても、中小企業の支援に力を入れることが
要請される場面となってきた。
(タイの債務増加 第2回おわり)
{追記}
タイ商工会議所大学の最近の調査によると、
タイの中小偉業のうち、流動性危機に陥っているのは、
ざっと50万社、全体の2割近くに及ぶという、
言うなれば、集中治療室に入り、
生存をかけている企業が多いという。
政府から500億バーツ(1550億円)ほどの支援が必要と
見られる。
「タイ信用保証公社」などからの信用保証が必要と言われる。
軍事政権は、この問題にどう取り組むのだろうか?