軍政権がメスを入れるというタイの宝くじ販売の重層構造
カジノや競輪(競馬はある)のないタイでは、
宝くじが、もっとも庶民的なギャンブルである。


2週間に一度、宝くじの発売日となると、
街の食堂に宝くじ売りがやってくるだけでなく、
道路沿いに宝くじ売りの店が並ぶ。
街の宝くじ売りの多さは、無職者救済の色を帯びる。

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タイの宝くじは、2枚同一番号一綴り(ここでは1枚と数える)で、
100バーツほどで売られている。
最低、下二桁が当たれば、賞金1000バーツずつ、
つまり2000バーツがもらえる。

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宝くじの国の取り分は、タイの場合40%。
日本の52%という高い分捕り率に比べれば少しましだが、
それでもあまり割に合わないギャンブルのはずだが。


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この宝くじ(ロッタリー)は、「政府ロッタリー・オフィス」(GLO)により、
毎回7千2百万枚(綴り)発売される。
2週に一度、うち5千万枚が外販されるが、
末端価額にすれば50億バーツ(150億円ほど)の市場である
(全部が売り切れるわけではないが)。
年間1300億バーツ(4000億円近く)の大きな市場である。

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この宝くじビジネスは、既得権者の大きな利益源になっている。
末端価格もかさ上げされているというので、2014年7月、
軍政権はこれの改革に乗り出すことになった。
業者との契約を見直し、販売価格を100バーツほどから80バーツに
抑えることを目指している。
バンコク・ポスト紙の情報をベースに分析してみよう。


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宝くじの販売ルートは複雑だが、基本3段階になっている。
まず販売元のGLOは、7,200万枚のうち、慈善目的の
2,200万枚(慈善目的ってどういう所に行くのかしら?)を差し引いた
5,000万枚を一般向けに売り出す。

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このうち1,500万枚は、1枚72.8バーツの比較的安い値で、
政府関係の基金などに割り当てられる(これも何のためだろう?)。


そして、残る3,500万枚が市販されるわけだが、
うち3,100万枚は、3万人いる個人のトレーダーに
74.4バーツで割り当てられる。


また400万枚は、72.8バーツの安値で、法律関係グループに
割り当てられるという。そのうち、300万枚が、“三頭のタイガー”と
呼ばれる3大大手配給業者に行くという。


この三頭の虎の業者には、法曹界の人間が
役員として参加しているというが、業者選定の経緯は、
いったいどういったものだったのだろう・・・。


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この三頭の虎に対して、軍政権はメスを入れるつもりだ。
彼等とGLOとの契約が、末端の宝くじ価格を高くし、
ここに多大な利益を落としていると見て、契約期限が
きたら改定するつもりだという。


実は、この三頭の虎は、300万枚を卸売業者に捌いているだけでなく、
個人トレーダーの扱う3,100万枚の8割がたも買い取り、合わせて卸売業者に
下ろしている。個人トレーダーの多くは、自らリスクをとって
捌ききれないので、三頭の虎にまかせるようだ。


3万人のトレーダーとは、普段何を商っている人たちなのだろう。
一人当たり平均1000枚強。
1枚74.4バーツで割り当てられ、81~86バーツで
三頭の虎に買い取ってもらう。


販売の手間とリスクを取らずに、一枚10バーツ(32円)転売に乗せるだけで、
2週間ごとに1万バーツ強の粗利が得られる計算になる。
正すべきは、この3万人のトレーダーにもあるように見えるが、
実態はどうなのだろう?


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三頭の虎は、従って、市販される宝くじ3,500万枚のうち、
ほぼ8割に当たる2,800万枚近く(300万枚+2,500万枚ほど)を
卸売り業者におろす。
そこからさらに街の小さな販売業者におろされる仕組みだ。


三頭の虎は、300万枚を1枚72.8バーツで入手し、
2,500枚近くは、個人トレーダーから81~86バーツで入手するようだ。
この仕組みが変わらない限り、軍政府は“末端価格を80バーツに抑える”と
言っているが、無理なことになる。


三頭の虎から卸業者に下ろされる価格は、86~91バーツ。
三頭の虎の平均仕入れコストを80~85バーツと見ると、
1枚6バーツ近い粗利が3社に入っているはずだ。
2週ごとに、1.7億バーツ(5.3億円)近くの粗利は大きい。
年間にすれば44億バーツ(140億円)ほどになる。


卸売業者は、86~91バーツで仕入れた宝くじに
5バーツほどの利を乗せて、90~96バーツで
街の宝くじ売りに卸す。
宝くじ売りは、従って、5~10バーツ利を乗せ、
末端では、100から110バーツで、お客に行く仕組みだ。


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こう見てくると、ビジネスとして売れ残りのリスクを取る所というより、
仕組みが出来てその中にポジションを取った所に利が
落ちるようになっているように見える。


軍政府といえども三頭の虎を排除することは難しいようだが、
契約の更改を通じて、宝くじの価格抑制に乗り出すという。


将来は、売れ行き数に見合って、自動販売機を
通じて販売するようにすればコストも抑えられるというが、
そもそも利権を生み出す国営宝くじのビジネス。


国民がボイコットでもしない限り、形を変えながら
国の収益と利権者のために生き残るのだろう。


{追記}

当初は、売値低下が少し見られたが、
結局元に戻り、タイ軍政権の宝くじ価格抑制の試みは
不成功に終わる。

そもそも、売値100バーツそのものが高いと言えたかといえば、
80なら買うが、100なら買わないといった類の商品ではない。
また、三頭の虎に手をつけずの改革は、成算に乏しかった。
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by ucci-h | 2014-07-14 14:08 | アジア的な生活 | Comments(0)

北タイのチェンマイをベースにメコン、アセアンの経済、見所、食べ物を日本と比較して紹介します。ただし投資をアドバイスするものではありません。コメント記入は題字をクリック下さい。
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