混迷しており、包括的な政策は出せないでいると記した。
「タイの軍事政権もエネルギー政策に戸惑う 2014-7-25」
http://uccih.exblog.jp/20941898/
8月末になって、軍政権は、自動車燃料の価格差の不公平を
微調整だが、手直しした。
従来、タイでは、ガソリンの物品税と国の「石油基金」への拠出額は
高く、一方で、ディーゼル油、LPG(液化石油ガス)、CNG(圧縮天然ガス)は
税金も基金拠出額も低く(CNGはゼロ)、優遇されてきた。
その結果、同じクルマなのに、ガソリン車の維持費は高くなり、
人々はディーゼル車(車そのものの物品税も安い)、LPG車、CNG車に
傾いてきた。
今や、ディーゼル油の消費量は、ガソリンの3倍近くに上がってきている。
また、ガソリン車からCNG車への改造も目立ち、スタンドで火災など起こしている。
「どうなるかタイで一番売れているディーゼル油の値段 2012-2-20」
http://uccih.exblog.jp/15459857/
@@@@@
2014年8月30日より、
ガソリン類の物品税の小幅下げと、オイル・ファンドへの拠出の小幅下げ
(20%エタノール入りのE20は小幅上げ)、ディーゼル油の物品税の小幅上げ
(オイル・ファンド拠出は小幅下げ)によって、ガソリン類とディーゼル油の
価格差は若干縮まった。
ガソリン 48.75バーツ/L ⇒ 44.86バーツ/L
物品税 5.60バーツ/Lに、オイルファンドへの拠出 9.75バーツ/Lに
ガソホール95 39.93バーツ/L ⇒ 37.80バーツ/L
物品税 5.04バーツ/Lに、オイルファンドへの拠出 4.25バーツ/Lに
ガソホールE20 34.98バーツ/L ⇒ 33.98バーツ/L
物品税 4.48バーツ/Lに、オイルファンドへの拠出 0.80バーツ/Lに
ディーゼル油 29.85バーツ/L ⇒ 29.99バーツ/L
物品税 0.75バーツ/Lに、オイルファンドへの拠出 1.00バーツ/Lに
差は縮まったといっても、ディーゼル油のリッター小売価格30バーツの天井は
保たれている。
ガソリンが製油所価格からリッター20バーツも高くなるのに対し、
ディーゼル油は、4.5バーツほどしか高くならない。
@@@@@
家庭燃料とあわせ、統制されている自動車用LPGは、
物品税がガソリンの半分ほどに抑えられているので、
徐々に上がってきて自由価格に近づいてきているものの、
なおキロ21.38バーツと、ミャンマー、ベトナム、カンボジアと言った
近隣諸国の小売価格(バーツに直すと35~45バーツ)を、
キロ当たり13バーツから23バーツも下回っている。
CNGについては、販売された2002年当初、国産天然ガスは
原油輸入を減らすものと奨励され(今は天然ガスの輸入が増えたが)、
物品税やオイル・ファンド拠出は無税、さらに供給元のPTT
(国有企業)がキロ4バーツほどの補助を行なっているので、
CNGの小売り価格はキロ10.50バーツと、製油所出のコストを
3.5バーツほど下回って売られている。
@@@@@
今回の軍政権の価格調整をどうみるか?
公平への見せ掛けだけの、小幅調整と見る批判的な見方も多いだろう。
しかし、これが包括的な燃料価格の調整ではない。
これから、タイがエネルギーの市場価格に向かう初歩的な動きとみたい。
財政面から見ても、今後のディーゼル油の物品税引き上げの
余地を残したことは、税収拡大の可能性を残したことだ。
70億バーツの赤字と食い込んでいるオイル・ファンドについても、
今回の減収のままではすまないだろう。
さらにまた、今回やらなかった、LPGの市場価格への移行、
CNGへの課税も今後出てくるだろう。
@@@@@
エネルギー輸入依存が高まるタイが、エネルギー価格への
補助制度を減らしていくのは、時間の問題かもしれない。
インドネシアの失敗の例も知っている。
もっとも、物価高で国民の家計が困っている今は、ともかく高い
燃料価格は少し下げて、公平を期し、値上げとなる市場価格への
移行はその後ということになるのだろう。