アジアの街角から第8回 「社会福祉が進んだ国」の実態は?
タイは東南アジア諸国の中でも、社会福祉が進んだ国だと言われます。
しかし、よく中身を覗くと、表面的には進んで見えますが、実態は
遅れている面が見えてきます。
今回は、タイの一見進んでいる社会福祉制度と、なかなかみかけに
追いつかない中身を見てみましょう。


進んでいる面から見ますと、まずは医療サービスでしょう。
2002年に導入された、いわゆる“30バーツ医療制度”は、
約100円払えば、誰でも公的医療機関で治療を受けられるという
国民皆医療制度として、画期的なものだったと言えるでしょう。

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もっとも、無料に近い医療制度は、現在では、いろいろな
ひずみをもたらしてもいます。


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国は、十分これをカバーする予算は組めませんので、
これを受け付けるのは公立病院に限られて来ており、
そこでは、「3時間待ちで3分診療」は仕方がないにしても、
病院の採算への圧迫から、患者の逆選別的な動きも出てきています。
十分質の高い治療を受けるのが、財政的に難しくなっています。


階層社会であるタイでは、従って、有資産層は、
私的な医療保険に入って十分な治療を受けられるよう、
分散化してきています。


国民に十分質の高い医療サービスを提供するためには、
適正な「受益者負担」的な仕組みの導入が必要に見えます。
そのためには、中間層を太く形成していくことが前提でしょう。


しかし、資産税がないためもあり、“ハイソ”(高資産層)と“ローソ”(低資産層)の
分化がなかなか解消されないのがタイの現状です。


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また、タイの年金制度は、東南アジアでも進んでいると言われます。
公務員には古くから、また大企業の民間従業員にも、
確定給付型に加え、確定拠出型の年金が上乗せされています。


しかし、これらの年金制度も、今後高齢者の増えるタイにとっては
不十分と見られます。
2014年から支給が始まりましたが、給付額は低く、
老後なお家族の扶養が必要な水準でしょう。
支給開始年齢が55歳と早いことも、変えていく必要があるでしょう。


こういった年金でカバーされるのは、タイの全労働者の3分の一の
1,300万人ほどです。
残る農民やタイに多い自営業者、非正規従業員達はカバーされていません
(非正規従業員らも、形式上は既存の社会保障基金に入れますが、
割に合わないため加入率は低位にとどまっています)。


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このため、2012年5月から全国民向けに「国民貯蓄基金」(NSF)制度が
スタートする予定でした。
任意加入制度ですが、拠出金に対し年齢に応じて
国から付加金が出るというプランでした。
しかし、政権がタクシン派に変わったため、棚上げされてしまいました。


一方で、国の支出は、ポピュリスト的政策で膨れています。
タイの社会福祉制度充実の道のりはまだまだ遠いといった
ところでしょうか。
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by ucci-h | 2015-07-16 12:06 | アジア的な生活 | Comments(0)

北タイのチェンマイをベースにメコン、アセアンの経済、見所、食べ物を日本と比較して紹介します。ただし投資をアドバイスするものではありません。コメント記入は題字をクリック下さい。
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