今でもよく使われるタイの陰暦と
タイ正月のソンクラーン(4月)の月の進み方が合わない!
タイの陰暦は、4月でなく1月を年のスタート月に変えた
ことで、ソンクラーンからさかのぼったとみられたが、
これでもズレは埋めきれない。
さて?
もう一度、中国の陰暦のスタート月と、タイのそれとを
比べてみよう。
中国の陰暦では、二十四節気の雨水を含む月(今年は
新暦で1月28日が新月のスタート日)が、基本、正月になる。
いわゆる春節が旧正月である。
結果的に、タイの陰暦のスタート日は、これより3か月ほど早い。
インドからやってきたタイの陰暦のスタート日は違うわけだ。
前に述べたように、黄道が白羊宮へ入ってきた時が新年だから、
本来なら春分過ぎになる。それが、ソンクラーン(新暦4月)の時期。
でも、今のバンコク陰暦では、スタートは4月ではなく、前年11~12月と
およそ4~5か月もさかのぼっている。
春節よりも2か月早い新月の日だ。なぜ?
今年のタイの陰暦は、昨年の11月30日にスタートしている
(1年前は、12月26日が陰暦年初の日)。
タイの陰暦は、ちょうど年間で日暮れが一番早い時期
(12月初旬)の前後を起点にスタートしている。
昼の時間が夜の時間を上回ってくる春分過ぎが
インド占星術伝来の旧正月だったはずだが、
今では、中国の立春頃の春節に2か月先行する冬至前後が
タイ陰暦のスタート月となったようだ。
何が起こったのか?
どうもいろいろ調べてもわからない。
ここからは、推測になる。
季節感としては、前年末頃が、タイの陰暦年スタートと
しては、ちょうど良かったからではないだろうか?
タイの季節の移り変わりは、中国や日本の様な北方の
国々に比べれば、2~3か月ほど先行している。
3月、北方の国々で春を待つころは、すでに暑くなり始めている。
7~8月になるとタイでは雨期でもあり、すでに暑さはやわらぎ始めている。
しかも、11~2月は「寒季」ではあるが、そう寒くはない。
「冬至前後は、昼の時間が長くなり始めると言っても
まだまだ寒いから新春気分にはなれないよ!」という
北の国の人々とは、肌の感じ方が違う。
ここから日が長くなり始めるのかと思うだけである。
だから、タイの陰暦正月は11~12月になっても、感慨はなく、
「タイの旧正月のお祝いをこの時期に持ってこよう」などとは、
誰も思っていないだろう。
水を掛け合うには、朝夕20度を割る気候では、やはり寒いだろう(笑)。
1年間を通し、花が咲き、果物が取れる南国タイランド。
春を待ちわびるという風景はない。
むしろ、ソンクラーンの4月、暑いけれど、じきに来る雨期入りを
待ち、ライチーや竜眼、マンゴーなどの果物が出回るのを
待つ季節。
新しく気持ちを変えるのにふさわしい「新年」なのかもしれない。
仏教行事で使われる陰暦と4~5か月ずれていようとかまわない。
ちなみに、先に触れた出生届には、生まれ年の干支が
タイでも書かれる。
その際、暦年ではなく、新しい干支は4月からだ。
まるで日本の入学の学年みたいだが、早生まれの人は、
前年の干支になるわけである。
中国の陰暦とタイの陰暦は、もともと暦の出所が違った。
インドシナ半島では、ミャンマー、カンボジア、ラオスが
タイと同じく4月なかばが旧正月である。
いずこも水掛け祭りだ。
ベトナムだけが、「テト」で知られるように、中国の春節の時期だ。
4か国の仏教が、セイロンから渡ってきた南伝仏教の
上座部仏教に対し(スリランカの旧正月も4月)、
ベトナムだけは、北伝の大乗仏教であることと関連しているのかもしれない。
タイにおける旧正月と陰暦の月の進み方が違うわけは、
最後は推測で終わったが、不思議な陰暦の話はこれで
終わりにしよう。
(おわり)