ーータイ語には無言で誇示する“影武者”が付くーー
タイ語の「末子音」の学習に入る。
タイ語の閉口末子音は面白い存在だ。
つまり音に表れない“影武者”なのだ。
最後に付く子音である末子音に対し、頭に付く普通の
子音のことを、区別するために「頭子音」ということもある。
例えば、アルファベットでpaak(口)と書けば、pが頭子音で
kが末子音にあたる。
ちなみに、末子音とは、k,p,tといった末尾に付く破裂子音だが、
これらは音に出ない閉口音グループだ。
もう一種、n,g,m,y,wといった末子音のグループがあるが、
こちらは対照的に、音に出てかまわない開口音グループだ。
末子音には、閉口音グループと開口音グループの二つがあり、
どちらが付くかによって発音は変わってくるから大事だ。
k,p,tの無声破裂音(口の形は残すが)、閉口末子音グループは、
英語でDead Final Consonant (死んだ末子音)と習う。
もう一種のn,g,m,y,wグループは、そのまま口を開いて音を残すが(開口末子音)、
英語ではLive Final Consonent(生きた末子音)と習う。
閉口子音が付くか、開口子音が付くかで、声調が変わってくるから大事だ。
追って例を挙げていこう。
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閉口末子音についてみると、例えば、タイ語で「口」のことはpaak↓(ปาก)、
「吸う」はduut↓( ดูด)、「キッス」はchuup↓ (จูบ)だが
(なんだか三題噺みたいだが)、
最後に付く子音「末子音」(k,t,p)は、いずれも発音されないのだ。
といって、無視できるわけでなく、ク、トゥ、プの
口の形をして終わらなければ通じない。
破裂音を出したいが、我慢して終えることになる。
でも、音に出さなくても、これで十分区別がつくのだ。
例えば、「野菜炒め」。野菜はパッ(ク)↓ผัก。炒めるはパッ(ト)↓ผัด。
野菜と炒めるは似ている。
野菜炒めは「パッ(ト)・パッ(ク)」なので、「パッ・パッで火の感じはわかるが、
パッ・パッのどちらが野菜でどちらが炒めなのか?」なんて疑問は全然出ない。
なぜなら、パットの時「ト」で終わる口と、パックの時「ク」で終わる口とでは
終わる口の形が全然違うからだ。音が出なくても、息でわかる?
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話は少しずれるが、むしろ疑問を呈するなら、食堂のメニューだ。
野菜炒めは、前述のように「パッ(ト)・パッ(ク)」だ。
タイ語の目的語は、英語のように、動詞のあとにくるのが順当だから、
当然である(S+V+O)。
ほかにも、「トム・カーガイ」 ต้ม ข่า ไก่ (鶏のココナツミルク・スープ。
トムは煮もの、カーはしょうが、ガイは鶏である)や
「ヤム・ウンセン」 ยำวุ้นเส้น (春雨サラダ。ヤムは和え物、ウンセンは春雨)など、
動詞(調理法)+材料(肉や野菜)の料理名が多い。
しかし一方で、「焼き飯」は、パット・カーオではなくて、
「カーオ⤵・パット↓」ข้าวพัดである。
カーオは、タイ人の主食お米である。
また、「おかゆ」は、「カーオ⤵・トム⤵」ข้าวต้มである。トムは“煮る”の意。
お米の場合、タイの主食だから先に来る、というわけではないが、カーオは
最初に出てきがちな言葉なのだろう。
また、「鶏の炙り焼き」は、ヤーン・ガイではなく、「ガイ・ヤーン」ไก่ ย่างだし、
「豚の揚げ物」は、「ムー・トート」 หมู ทอด と、材料(肉)+動詞(焼き方)の順だ。
お米(カーオ)のメニューが出たから、ついでに麺を見ると、
動詞+材料(麺)だ。
「焼きそば」を言うなら、「パット・バミー」 ผัดบะหมี่ となる。
バミー(黄色小麦麺)を炒めたもの。こちらは動詞が先行。
でもこの国には日本の様な焼きそばはほとんどなく、
よくあるのは「パット・タイ」 ผัดไทย だ。
タイ(国)を炒めたもの?食堂では時々間違ってผัดไทとつづられることもある。
バミーでなく、センレックเส้นเล็ก(米粉の白い細麺)を野菜などと炒めたものだ。
「タイ風炒め」となろう。
理屈を言っても始まらない。習慣であろう。
日本でも、焼肉、揚げ豆腐もあれば、レンコン揚げ、里芋煮もある。
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ところで、カーオ・パットのタイ文字のところで、
上に付く似たような符号がふたつ出てきた。
ั と ้ 。
この際、ついでに母音記号を確認しておこう。
「パッ(ト)」ผัดのั は、母音記号の「ア」。
あれ?短母音のアはะ じゃなかったっけ?
ア・アー、イ・イー、ウ・ウーは、
アะアーา、イิイーี、ウุウーูとなると習った。
ั は、ะ 短母音のアの変形体なのである。
タイ語の母音記号は、付く場所によって変形することが
いくつかある。いくつだろう?全部で8つほどか?
その中で、この「ア」の変形は一番最初に出てくるものだ。
このままアで終わるシラブル(音節)なら ะ でいいが、
その後に文字が付くと(たとえば、パッ(ト)やパッ(ク)のด ,กなどの末子音が付くと)、
ะは ้に変化する。
たとえば、「未来助詞(~しよう)」のja は จะ のままだが、
後ろにp が付いてjap(捕まえる)になると、
+ะは้に変化し、จับとなる。
60時間講座が終わる最後の日に総合テストが
あったが、一番間違った問題は、変化した文字の言葉の
起源を尋ねられる問題だった。
読めるのだが、もともとはどういう組み合わせだったかを
示すのを半分間違えた。
パッ(ト)(炒める)の例で示せば、ผ+ ะ +ด ⇒ ผัด である。
もうひとつ。数字の2にも見える้ 。
こちらは、母音記号ではなく、「声調符号」である。
声調符号は4つあるが、以前出てきた1番目の|่ (マイ・エーク)に
次ぐ、2番目の声調符号 ้ (マイ・トー)である。
1番目のマイ・エーク、は基本、声を下げる(低声)符号。
こちらの2番目のマイ・トーは、基本、声を落とす(落声)符号である。
基本と言ったのは、中・高子音にこれら声調符号が付いた場合、
低声、落声だということ。低子音に付いた場合は、
落声符号と高声符号になるからだ。
ここらの違いは、代表的な言葉を通して、覚えるしかない。
ついでに、ัと้の見分け方。
大きな活字の時はいいのだが、小さな字の時は
丸が右回りか左回りかもわかりづらく、同じに見えてしまう。
やや丸が大きく横長なのがั、比較的ちょこっと縦長なのが้と
覚えておくと見間違いが減る。
もうひとつ。子音のด (ドーデック)とค(コークワイ)。
これも、大きければ、丸が右回りから始まるのと、左回りから始まるのとで
一目瞭然だが、小さな活字だと同じに見えてしまう。
ほぼ丸から左下に線が出ているのがด で、
คのときは、かなり上からほぼ横に線が出ていると見分けるといい。
これも、実際テストで見間違えた。
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ベーシックとなる中子音で見ると、
符号なしが平声。
マイ・エークが付くと、低声。
そしてマイ・トーが付くと、落声になる。
実はこのあと、中子音の場合に限り、声調符号マイ・トゥリー ๊ と
マイ・チャタワー + があり、それぞれ、高声、昇声になる。
平声、低声、落声、高声、昇声・・・タイ語の5声調。
順に5つは、タイ語の声調の基本である。
言い換えると、声調符号の助けを借りながら、
タイ語は、5つの声調を完成させていると言えるだろう。
(その6に続く)
タイ語で男性は最後に「カップ」 女性は「カー」
あのカップの最後のPは末子音なんですかね・・・。
何か音を飲みこむような感じのプ。