カテゴリ:アジア諸国の賃金( 51 )
ミャンマー人マ・ウィン(56歳)がタイで陥った苛酷な物語
こういう実話は、書き記しておいた方がいいだろう。


タイにおける不法外国人労働者の問題がクローズアップ
されているが、バンコク南の港町サムート・サコンは、
ミャンマー人が多く働いている漁業で成り立っている。

 「タイにおける外国人労働者の実態 2011-8-15」
  http://uccih.exblog.jp/14351204/


最近発覚したこの物語は、もちろんサムート・サコンの
漁業の実態のうちの一部の悪質な人身売買の例だろうが、
こういうこともあると知っておきたい、映画にでもなりそうな事件だ。
2014年6月末、バンコク・ポスト紙に載った記事を紹介しておく。

d0159325_23571991.jpg



@@@@@


主人公は、2年半前はヤンゴンの近くの村に住んでいた
マ・ウィン、当時54歳の男性である。
母を亡くし、仕事もなかった彼は、2012年はじめ、タイ国境の
ミヤワディ(メーソットの向こう側)の牧畜の仕事に向かう。


10日ほど働いた後、ミャンマー人の仲間から
「タイ側へ行って、サトウキビ農場で働かないか?」と
もちかけられる。
ミヤワディからメーソットへ越境労働するミャンマー人は多い。

d0159325_0173314.jpg



メーソットで、警官とおぼしき農場のオーナーの下で
2週間働く。そこに20人のミャンマー人を伴って
ソーレンと言うミャンマー人のブローカーが現れた。
マ・ウィンの苛酷な物語はここから始まる。


@@@@@


そこで,警官は「月8,000バーツ(25,000円)払うパイナップル缶
工場がある。興味はないか?」とマ・ウィンを含めたミャンマー人達に
問うた。


マ・ウィンも興味アルと答えた一人だが、ミャンマー人達は、
就職のための‘交通費’として、ひとり7,000バーツずつ取られた。
20人いれば、14万バーツ(44万円)。けっこうな収入だ。

d0159325_23485946.jpg



夜になって彼らは山歩きに出発し、4日間かけて、
他のミャンマー人グループとも一緒になり、
15台のピックアップ・トラックが待つ集合地点に落ち合ったのは
午前3時だった。
もちろん、全員パスポートも労働許可証も持っていない。


@@@@@


パイナップル缶工場のある南のカンチャナブリ
(戦場にかける橋で知られる町)に着いたのは、8時間後の午前11時。
しかし交通費の支払い要求は、先の7,000バーツだけではすまなかった。

d0159325_08995.jpg



車から降りると、ミャンマー人の夫婦ククとマツサがブローカーとして現れ、
工場に案内する交通費13,000バーツを請求された。
もうお金のないマ・ウィンは、「工場で働く賃金から月々返すから」と
了承してもらう。

d0159325_0145366.jpg



4ヶ月働き、9,000バーツ支払った。
毎月の賃金から3割近くを払ったことになる。
しかし、ここに落とし穴の仕掛けがあった。


ブローカー夫婦は、「支払いが遅すぎる。マハチャイで
働いて、残金を払ってもらわなくてはならない」と彼に告げた。
マハチャイとは、サムート・サコンの漁港である。


@@@@@


別の3人のミャンマー人ブローカーがやってきて、
夫婦に1万バーツ払い、マ・ウィンを連れ去った。
ブローカー夫婦は、マ・ウィンを‘売った’ことで、
都合19,000バーツを手にした事になる。


マハチャイに着くと、マ・ウィンは2日間、監禁される。
そして、3人のブローカーのひとりソーウェンが彼を
埠頭の漁船に連れて行く。

d0159325_092269.jpg



漁船のタイ人船長が、ソーウェンに3万バーツ支払うのを
マ・ウィンは見た。彼のほかに二人のミャンマー人も船に乗せられた。
ソーウェンは彼に「月9,000バーツもらえるよ」と言った
(実際は、月3000バーツの休みなしの過酷労働だった)。
ミャンマー人35人、カンボジア人3人が乗った漁船は
インドネシア沖を目指した。


@@@@@


マ・ウィンが自分は売られたと悟ったのは遅すぎた。
船が港を離れるときで、海に出てしまえば
もはや逃げることはできない。


インドネシア沖で、彼は小さな漁船に移される。
5人のミャンマー人と2人のタイ人が乗組員である。
インドネシアに入るので、パスポートも手渡される(もちろん偽造)。

d0159325_001933.jpg



ここから、マ・ウィンの地獄の23ヶ月間が始まる。
タイ人の船長からは、魚を取り落としたと殴られ、
体調が優れないので起きれないと蹴飛ばされた。


休みの日はなく、逃げたくても海の上、逃げられない。
こうした苛酷な日々が結局630日、21ヶ月も続いた。


@@@@@


21ヶ月目、インドネシアの埠頭に上がった時に、
ひとりのミャンマー人の漁船員に出会った。
彼はマ・ウィンに国連職員の電話番号を渡し、
同時にインドネシアの警察に行くように奨めてくれた。


彼のアドバイスに従って、マ・ウィンは3度、インドネシアの
警察に行った。しかし、その都度、船に戻されるだけだった。


マ・ウィンは意を決して、国連職員に電話した。
職員は彼をただちにインドネシアのミャンマー大使館に
連れて行ってくれた。
彼は、病院に収容されメディカル・チェックを受けた。


しかし、苛酷な物語は、ここで終わらなかった・・・。


@@@@@


大使館職員は、彼に新しい本物のパスポートを与え、
船長に彼をマハチャイの港まで連れ帰るように命令した。
しかし、これは犯人に被害者を護送せよと言っている様なものだ。


マ・ウィンは、帰途の船中で、眠れぬ夜を9夜過ごすことになる。
殺されそうになったからだ。
仲間のミャンマー人船員が船長から、パスポートの偽造がばれるので、
彼を殺すように言われていたのだ。


幸いこの船員は、自分の父親のような同国人を殺すのは
忍びないと告白してくれた。


@@@@@


マ・ウィンは2014年6月7日、23ヶ月ぶりに
無事マハチャイに帰還した。
人権団体「労働権利推進ネットワーク」が迎えてくれた。


今や56歳になったマ・ウィンは、この団体に言っている。
「自分の船や他の船で出会った他のミャンマー人達の
運命は知らない・・・」と。


タイの軍政権は、これらのミャンマー人・タイ人連携の
人身売買シンディケートにメスを入れられるだろうか?
[PR]
by ucci-h | 2014-07-16 00:18 | アジア諸国の賃金 | Comments(4)
軍事政権の外国人労働者弾圧の噂 カンボジア人国外脱出の背景
噂と言うものは恐ろしい物である。
事実でなくても、もっともらしく聞こえると、
人を行動に駆り立てる。


「ともかく帰っておいでよ!
お前たちはタイの軍事政権の兵士に捕まり、
ひどい目に遭うよ」という母国の
母からの電話で、タイで働いていた
カンボジア人労働者の何人が、国境の街
アランヤプラテートを目指したことだろう?

d0159325_14105393.jpg



@@@@@


タイは、外国人労働者なしには経済は回らない。
建設現場や漁業関係の職場に行けば、ほとんどが
近隣諸国からの外国人だ。


労働省雇用局の数字で把握されているだけで、
タイには223万人の外国人労働者が働いている。
ミャンマー人がほぼ8割を占めるが、カンボジア人も
18%ほどを占める。

 「タイでは外国人労働者を雇いにくくなる!? 2013-1-9」
  http://uccih.exblog.jp/17594185/


タイでは、不法入国労働者の登録を進め、
把握に努めてきてはいるが、なお不法入国労働者は
多いはずだから、彼等も含めると、
タイでの外国人労働者の数は、300~400万にのぼり、
タイの労働力の1割近くを占めることになるのだろう。


@@@@@


タイで5月22日に軍事クーデターが起き、
軍事政権となり、6月9日(月)には、一連の改革の動きの中で、
外国人労働者の問題を扱う委員会も発足した。


この委員会は、子供労働や人身売買を取り締まろうという
ものだが、「タイの軍事政権は、カンボジア人労働者を
きつく取り締まることになる」という噂となった。


噂が信じられやすい背景はある。
カンボジアとタイは、例の国境の係争寺院「プレア・ビヒア」を
巡って、軍隊は対立しがちである。
また、タイの軍が嫌うタクシンは、カンボジアの
フンセン首相に近い。


6月前半だけで、タイの国境の街アライヤプラテートから
カンボジア側のポイペトへのルートを中心に、
20万人近く(実際は5~6万人ほどかもしれないが)の
カンボジア人の“エクソダス”(脱出)があったという。


@@@@@


タイの経済界にとっても大きな問題となる。
軍事政権は、この噂を事実無根と取り消しに
やっきとなった。
そのため、6月20日頃から、いったん帰国した
カンボジア人の一部はタイに戻り始めたようだ。


噂の根源は、不法労働者の送り出しをやっている
ブローカー筋かと見られる。
いったん帰国させ、また送り出せば、それだけ手数料が
稼げるからだ。


これに呼応するかのように、6月20日(金)、
カンボジア政府は、パスポートの発行費用を
これまでの高額な135ドルから、4ドルに大幅に引き下げた。
カンボジアにとっても出稼ぎ労働者の減少は困ることである。


@@@@@


不思議なのは、外国人労働者の8割を占める
ミャンマー人の漁業の街サムート・サコンなどの
コミュニティーでは、カンボジア人ほどの動揺が起こらなかった事である。

 「外国人労働者の登録期間があったが・・ 2011-8-17」
  http://uccih.exblog.jp/14366912/

d0159325_14132881.jpg



サムート・サコンのミャンマー人は、2007年、タイ警察の
取締りで700人が逮捕された経験を持つ。
ミャンマー人の方が、情報により通じていたのだろうか。

d0159325_14141927.jpg



@@@@@


タイの外国人労働者の問題は、社会保障の適用など
ゆっくりではあるが、徐々に改善していくのだろうが、
むしろ、タイの経済運営と、ミャンマー、カンボジアなどの
経済成長との間の、労働力獲得の綱引きで決まっていきそうだ。


今のタイはうかうかしてはいられない。
[PR]
by ucci-h | 2014-06-23 14:16 | アジア諸国の賃金 | Comments(5)
タイでは外国人労働者を雇いにくくなる?
タイには、300万から400万人の外国人労働者及び
国籍不明の労働者が働いていると言われる。
建設業や漁業などタイ人の嫌がる肉体労働の産業は
ほとんどが、ミャンマー人をはじめとする外国人によって
支えられている。

タイの労働力人口は3,960万人ほど(2011年推計)だから、
その1割ほどが外国人によって支えられている。
タイの経済は、今後10年でさらに700万人ほどの労働力を
必要とすると見られるが、近隣諸国からの外国人労働者は
なお、150~250万人必要とされている。

数字がはっきりしないのは、不法入国の労働者が多い
からだが、もともとミャンマーやラオスとは国境があいまいだった
わけだから、国境近辺に住む山岳民族などはタイ人のIDカードを
持っていない人も多い。

タイ政府は、近年、これら外国人労働者のID(国籍証明)登録を進めようと
動いてきている。外国人労働者に対し、一時的なIDを交付する。
最近では労働省は、2012年12月14日までにタイの企業は、
外国人労働者を登録させる期限とした。それをしなければ、
雇用できないとした。

タイの関連する企業は、「これでは工場閉鎖に追い込まれる」、
「輸出が打撃を受ける」と延期を申し出た。
それでなくても、タイは労働者不足に直面している。
また、ミャンマー政府も、「ミャンマーからと言っても、
少数民族が多く、国籍を確定できないから、待って欲しい」と申し出た。

実際、外国人労働者登録と言っても、ただ地方の役所に行って
書類にサインをすればすむ話ではなく、
そもそもの出身が証明できないケースも多い。
また手続きにも時間と費用がかかるようだ。

d0159325_22412156.jpg

(チェンマイで進む住宅建設)

外国人労働者のうち、これまでに登録できたのは、
138万人ほどだと言われる。
残る160~260万人は登録されていないようだ。
少なくとも、150万人ほどの外国人労働者が国外退去の
瀬戸際にあると言われる。

延期申し立てに対して、タイ政府は、「今まで6回も
(最近では2012年6月14日)締め切りを延期してきたので、
もはや延期できない」として、12月14日のデッドラインを
キープした。

ミャンマー政府からは、その後、インラック首相が12月17日に
ダウェイ開発の件でミャンマーに来たとき、「延期すると約束した」と
なお延期を求めているが。

労働省雇用庁によれば、
今回31万人ほどの外国人労働者が国外退去の
対象になると言われる。
カンボジア人15万人、ラオス人10万人、ミャンマー人6万人。
なぜか、ミャンマー人の数は少ない。

もっとも、そこはタイランドのこと。
それほど厳格で徹底した措置が講じられるとは見えない。
「外国人労働者が強制国外退去させられるのがいやなら、
雇用主は、労働者の名前を記して、雇用継続できるリクエストを出すように」と、
雇用庁ではアドバイスしている。

また、一度国外に出されても、労働省は、その国の大使館と協議し、
パスポートを発行してもらい、再雇用できるよう努めると言っている。

労働力が今や不足しがちなタイランド。
と言って、農村に居る1600万人(全労働力の4割)を
工場やサービス業に狩り出すのもこの国の文化にそぐわない。

一方で、ミャンマーやカンボジア、ラオスといった
後進経済圏が発展してくれば、出稼ぎ労働者の数は、
そのうちお願いしても減ってくるだろう。

折からの最低賃金の大幅引き上げと合わせ、
タイ企業の国外立地がここ2~3年、加速されそうだ。
[PR]
by ucci-h | 2013-01-09 22:42 | アジア諸国の賃金 | Comments(0)
タイの看護師不足問題
2015年アセアン市場統合によって、域内の人の流れが盛んになると、
タイの看護師不足がいっそう深刻になることが今から心配されている。
タイから、条件のいいシンガポールなどへ、いっそうの看護師流出の
心配だ。

現在でも、タイにおいては看護師不足、看護師の待遇の悪さが問題に
なっている(もっとも、高齢化社会、どこの国でも看護師の仕事は
大変になってきているが)。

タイの場合は、国民皆医療制度(俗に言われる30バーツ医療)があり、
公立の病院は、いつも混んでいる。

d0159325_16263067.jpg

(タイの看護師のデモ バンコク・ポスト紙より)

4年教育を経て、毎年5~6千人の新看護師を輩出するタイにおいて、
看護師の数は、おそらく10万人を超えるだろうが、うち多くが
公立の病院で、非正規スタッフとして働いている。
公立病院は、患者が多いため、2連続シフトの16時間労働もけっこう
あるという。
タイでは、看護師は3万人は不足していると言われる。

公立病院は、公費つまり税金でまかなわれているため、正規職員の枠は
きびしい。ところが正規職員と非正規職員の間では、給与、昇格、研修と
いった待遇面で大きな差がある。

看護師の月給は12,000バーツ(33,000円ほど)であり、正規職員との
差があるだけでなく、昨年から導入された新卒職員15,000バーツに対しても、
看護師は4年制大学を出たプロフェッショナルなのに、遅れをとる。
シンガポールの病院などは、メシ・ヤドつきで、月5万バーツをオファーしてきている。

タイの公務員委員会(OCSC)と公衆健康省とで、看護師の正規職員への変更が
模索されているが、2013年からの5年間で、健康関連で7万人正規職員を
とる中で、看護師枠17,000人が設けられている。

2012年6月19日には、公衆健康相が、そのうち3,667人の看護師を
第1次採用として、3ヶ月以内に採りたいと表明したが、3ヶ月たっても
実行されず、看護師達の不信が高まっている。

そして、10月16日には、1,000人以上の看護師がタイ首相府前でデモ。
11月中での早期実行を要求、さもなくば大量辞職を示唆した。
OCSCと国家予算局は話し合って、年内にも枠を決めたい意向だ。

タイの国民皆医療制度は、こういった看護師などスタッフのコスト抑制で
支えられてきたと言えるが、タイ社会の高齢化の進行と隣国からの
看護師ニーズの高まりで、それも限界に近づいて来ているように見える。

看護師の正規公務員への昇格は、ひとり看護師だけでなく、国の
公務員定数の拡大につながるわけだから、いっそうの財政拡大ともなろう。

タイの税金を使っての国民福祉の拡大も、費用面での障害にぶつかりそう
である。
[PR]
by ucci-h | 2012-11-19 16:27 | アジア諸国の賃金 | Comments(0)
少しずつ見えてきたタイの労賃大幅引き上げの影響
アジアの製造基地タイは、賃金が大幅に引きあがり、
2015年のアセアン市場統一を控え、ベトナムやインドネシア、
さらには今後のミャンマーの追撃もあり、今、分岐点に差し掛かっている。

その中でいつも話題になるのは、労働生産性の伸び悩みである。
2010年までの10年間で、GDPは53%伸びたのに、労働生産性の
伸びは27%と、経済の伸びの半分の伸びだった。

タイ貢献党の政策により、賃金が今年、来年と大きく引きあがるので、
生産性のアップがいっそう必要になる。

最低賃金は、今年の4月より、バンコクなど7県で一日300バーツに引きあがり、
学卒新入社員の月給は、官庁中心に15,000バーツ以上となった。

それから4~5ヶ月経ち、現在の状況が少しずつ見えてきた。

d0159325_1211851.jpg

大幅賃上げにもかかわらずインフレは落ち着いており、経済も成長しているので、
政府は、「心配されていたインフレ、経済への悪影響は杞憂だ」と
言っているが、昨年の洪水後の成長率としては、第2四半期の前期比年率4.2%
の伸びは高くないし、インフレは世界の景気後退で沈静しているだけだ。

さらに、最低賃金300バーツについては、
十分企業が導入していないと労働側からはクレームが多い。
4月以降3ヶ月強で、5134件の苦情が、苦情センターに寄せられているという。
確かに、中小企業にとっては、一挙40%の最低賃金引き上げは死活問題であり、
福利厚生負担部分を削ったりしながら、
実質的インパクトが小さくなるようやりくりしている。

言い方は語弊があるかもしれないが、
企業努力で賃上げのインパクトは抑えられている。
もっとも、正念場はこれからだ。
残る70県の来年1月からの最低賃金の引き上げ率は、
今年4月の高賃金地域の40%増に比べ、平均70%アップとなるから、
浸透しだいでは物価に跳ね返っていく。

学卒月給15,000バーツにしても、民間企業はまだ受け入れに躊躇しているようだ。
タイの失業率は、5月で0.9%と低いが、
失業者の数自体は、1年前の20.4万人から35.9万人へと1年間で76%も増加している。
失業者35.9万人のうち、42%を占める15.2万人がいまだ職に就けない学卒だった。
前年の7.5万人から倍増している。

高賃金の学卒は、企業から敬遠されているようだ。
学卒は、高賃金を保証してくれる官庁への職に向かっている。
官庁の学卒が最低月15,000バーツで浸透すれば、
企業も競争上、今後払っていかなければならないだろう。

現政権の賃金大幅引き上げ策は、中進国たらんとする
タイの一種のばくちかもしれない。
低い賃金水準を引き上げることによって、労働集約型産業からの
脱皮を図り、さらにはこれによっていやでも労働生産性を高めなくては
ならないということになる。

しかし、結果うまくいくかの保証はない。
へたをすると、自国企業を含め、企業に少しずつ近隣の
ベトナムやカンボジア、さらにはミャンマーに逃げられてしまう。
もちろん、賃金水準は、工場立地の条件の一つに過ぎず、
タイのインフラ、法制含め優位性はなお高いが・・。

労働生産性を上げるには、
企業にもっと最新鋭の機械を入れさせるようにすべきとか、
企業と職業学校のタイアップで、働くのに必要な技術や手法を
もっと学ばせ、学生の就職時のミスマッチを減らすべきとかの
アイデアが聞こえる。

それはそれなりの効果はあるだろうが、
タイに暮らしていてタイ人を見ていると、
もっと根本的なところを変えないと生産性アップには
つながらないように見える。

つまり、働くときの基本姿勢をまずはきっちり確立させるべきだろう。

・約束は守る
・時間もなるべく守る
・きちんと連絡はする
・身の回りはきちんと片付ける
・上司じゃなくて、お客のために働く
・客に対するサービス精神を出す
・どんな作業もなぜそうするのかを問う習慣をつける

など、など、基本的な働く姿勢を作らないと、
機械より人件費のほうがよほど安いこの暑い国で、
生産性の上昇などは、単に結果の統計数字を見るに
過ぎないままで行くだろう。
[PR]
by ucci-h | 2012-09-18 12:02 | アジア諸国の賃金 | Comments(4)
増える借金に悩む層に対するタイ政府の“徳政令”の中身
タイ人家計の借金の状況を前回見たが、
経済の発展とともに、いやそれを上回るペースで、
借金、クレジットは拡大している。
タイ全体の民間の信用(企業が7割で個人が3割)の伸びは、
2011年は14.9%も伸びている。

タイ第2位の銀行、KTB(クルンタイ銀行)を例に取ると、
消費者ローンの残高は、2012年第1四半期で、
87.3億バーツ(前年末比+2.3%)伸びている。
当行のローン全体の残高は、第1四半期末で、1兆4,880億バーツだが、
うち26%(3,870億バーツほど)が、消費者向けローンと見られる。
電力代のアップ、交通費のアップ、全体の物価の上昇に
5月の学校の新年度入りを迎え、消費者ローンの伸びはなお高まりそうだ。

KTBの場合、消費者ローンの申請に対して、承認率は30%と
それでも低い。申請者の借入残高がすでに高くなっているためだ。
KTBは、年収の80%以下の借入残高をローン付与の基準としているが、
すでに80%に達している消費者が多いということになる。

なお、KTBの第1四半期末の焦げ付き率は4.95%と、
昨年末の7%近くからは下がっている。

d0159325_21263817.jpg

タイ貢献党政府は、ポピュリスト政策の一環として、
タイの借金漬けの消費者に対する“徳政令”を実施する。
民間銀行からのローンではなく、政府系銀行からのローンに対し、
返済のモラトリアムを、4月24日の閣議で決定した。

4つの政府系銀行からローンを受けている375万人(人口の18人に一人)の
個人(借入残総額4,590億バーツ、円換算で1兆2,500億円ほど)に対して、
450億バーツ(1,250億円)ほどのローン金利の支払い(3%分ほど)が、
2012年9月1日から2015年8月31日までの3年間免除される。

対象となる375万人の77%に当たる290万人は農民だと言われる。
タイの労働力3,850万人の4割を占める1,550万人の農業労働力の
2割近くがモラトリアムの対象ということになる。
450億バーツの負担は、国の予算と政府系銀行で半分ずつ
負うが、要するに税金での負担である。

支払免除されるローン保持者は、優良な借り手とされ、
4月24日現在で、借金が50万バーツ(135万円ほど)に達していない借り手である。
5月2日から8月20日の期間、モラトリアムの登録が受け付けられる。
ただし、個人ローンと言っても、住宅ローン、分割払い、リース・ローンは除かれる。

キティラット財務相は、「これで、経済成長率も0.4~0.7%分高まる」と
言っているが、野党民主党のゴーン副党首は、「民間銀行からローンを
受けている者に対して不公平である。税金を使って、フリーローンを
提供するのが政府の義務なのか」と批判している。
「借金を救済するなら、むしろ銀行から借りられず、不法なローン・シャークに
走らざるをえない消費者を救済すべきではないか?」とも言っている。

タイ政府は、ポピュリスト政策として、よくこの徳政令を出すようだが、
あくまで借金漬けの低所得の農民に対する一時的な対症療法でしかない。

農民の借金の元である過剰な農薬や肥料の購入を抑制させ、
生産コストを下げさせ、反収を上げるとか、
根本治療にはなかなか手をつけられていないようだ。
[PR]
by ucci-h | 2012-05-16 21:27 | アジア諸国の賃金 | Comments(2)
タイ人の家計の借金は重荷になってきているのだろうか?
タイ人を見ていると、先々の計算もなしに平気で借金をする。
明日をあまり考えない国民性にとるものから来るのだろうか?
タイ人家庭の借金の増大は、今後の内需の伸びに影響すると
心配する向きもあるが、さてどうなのだろうか?

タイの家計の借金は、政府統計局や中央銀行など各種統計を見ると、
近年、経済成長とともに、確かに拡大してきている。

まず、家計全体(タイの世帯数を2,000万と見る)の債務残高は、
3.4兆バーツほどにのぼっているようだ(煩わしいので、以下出所を略す)。
家計の債務残高は、タイのGDP(10兆バーツ)比、34%ほどになるようだ。

1世帯平均17万バーツ(47万円ほど)になる。
もっとも、世帯のうち借金をしている家庭は、57%(1,150万世帯)ほどだというから、
実際の借金のある家計の負担は、30万バーツ(80万円ほど)になるのだろうか。

中身は、住宅ローンが世帯平均10万バーツ、個人ローンが5万5千バーツ、
その他クレジット・カードのローンや街金からの借り入れがある。

d0159325_1902529.jpg

借金の負担感となると、家計の収入、貯蓄との比較となる。
タイの家計収入は、2011年で平均月に23,500バーツ(6万5千円ほど)。
年間で28万バーツ、77万円ほどになる。
統計によると、そのうち支出は月18,000バーツ、一日一家で600バーツ
(1,600円ほど)の支出だ。

タイ人の貯蓄率(可処分所得比)は、平均10~12%あると言われるから、
おそらく平均だが、月に2,000バーツほど、年間で2万4千バーツほど
貯金しているのだろう(あくまで平均で、貧富の差で違いは大きいはず)。

タイの家計の金融資産残高は、8.5兆バーツほどにのぼる。
1世帯当り平均43万バーツ(115万円ほど)。
借金の残高より、金融資産残高の方が2.5倍ほど上回っている
計算になるが、これも平均数字である。
おそらく、貯金の少ない家庭ほど借金に頼るはずだ。
貧困家庭(月収1万バーツ未満)の3割は、街金や闇金に手を出していると
言われる。

借り入れ残が30万バーツの平均像をとって、
元本返済を考えれば、条件によるが、月々3,000バーツ前後の
借金負担になるだろう。
これが重荷か平気なのかは、その世帯の収入、貯蓄水準による。
月収1万バーツか3万バーツかによって、大きく変わるだろう。

平均像では、タイの家計の借金負担は計れないが、
借金返済ができない家庭が増えていることは、
重荷になってきている表われである。
政府はこれに対して“徳政令”を敷くことになる。
[PR]
by ucci-h | 2012-05-15 19:01 | アジア諸国の賃金 | Comments(3)
タイ人の北欧の野いちご摘みへの出稼ぎはどうなっているの?
タイ人はこんなこともしているのかと驚くニュースも時々
現れる。
タイ人は国外で40万人ほどが働いているが、
多くは手先の器用さ、技術を買われてのものである。
でも、こんな仕事もある。

チェンマイの我が家の木苺はいま真っ盛りで、
ぽろっと取れて甘くおいしいが、暑い国のタイ人は
北部や東北部のいなかから、北欧のスウェーデンやフィンランドまで
イチゴ摘みの出稼ぎに行っているのだ。

ニュースになるということは、何か不都合なことがあるからだ。
何だろう?

北欧の野いちご摘みのシーズンは、短い夏の
7月から9月までである。
8月半ばにストックホルムへ行くと、寒暖計の目盛りは
昼間でももう13度まで下がっていて肌寒い。
2009年には、スウェーデンだけで、5,900人のタイ人が
イチゴ摘みの出稼ぎに行っている。

d0159325_153153.jpg

出稼ぎのタイ人にとっての問題は、気候ではない。
出稼ぎがペイしないからである。
野いちご摘みには、東欧などよその国からの出稼ぎ者も多いが、
イチゴの収穫はそんなに出来ず、費用を賄うだけの
収入にならないと言う。

支出には、北欧までの航空代、現地での食事や家賃などの
生活費(北欧は物価が高い)、それに加えて、職業紹介代理店から
一人当たり75,.000バーツほどの“サービス・フィー”も
とられる。

仮に3ヶ月で、月に4万バーツ(11万円)というタイ人にとっては
けっこうな収入を得たとしても、
3ヶ月の支出が13~14万バーツ(36~39万円)かかれば、
アシが出てしまう。
実際、借金をかかえてしまう出稼ぎ者が多いといわれる。

タイの法律では、外国への出稼ぎ者に対しては、
採用する会社は、月8,000バーツの賃金と一日当り500バーツの手当、
また家と食事を提供しなければならないことになっているが、
あまり守られていないようだ。
また、旅行費用も会社が持つよう定められているが・・・。

会社はむしろ、労働者と別の契約を結び、
問題が起きても法に訴えない旨、約束させられている。

北欧の野いちご摘みなどと言うと、優雅な童話の世界のように
見えるが、現実の世界は、タイ人にとっても厳しいようだ。
[PR]
by ucci-h | 2012-05-04 15:03 | アジア諸国の賃金 | Comments(2)
最低賃金の大幅引き上げも言われるほどの影響はない!?
4月1日から、タイのバンコクなど7県で最低賃金一日300バーツ
(+40%ほど)が適用された。
政府は、来年1月1日から他県でも一日300バーツ(平均+70%ほどになる)
を適用する方針を変えておらず、全国1日300バーツが普及する。

この労賃の急激な引き上げにより、企業の外国への移転、
また人員削減が懸念されている(少しはすでに起こりはじめているようだ)。

しかし、人材会社マンパワー社によれば、
影響は思ったより小さく、企業移転も懸念しすぎだと見られている。

理由は、企業立地の決定は、賃金水準だけでなく、
不動産コストや、原材料提供企業の存在、インフラ、市場の大きさ
などによってなされるからだと言う。

労働力についても、賃金水準だけでなく、
技術水準、また管理職の存在など、質的面が大きい。

従って、企業移転をするといっても、言うは易く、行なうは難しだと
マンパワー社は言う。
ちょうど、昨年の洪水の後も、企業移転が多く話されたが、
実際動いた企業はごくわずかだった。

d0159325_103830.jpg

国外移転と言っても、ミャンマーとの国境のメーソットで
ミャンマー人を多く使っている縫製工場が、
国境の向こうのミヤワディ(ミャンマー)に工場を移したといった
ところだ。

労働集約的といわれるタイの食品産業も、
最低賃金の大幅引き上げにもかかわらず、がんばっている。
タイには、320の鶏肉加工工場、579の魚類加工工場、
640の果物野菜加工工場があり、12万人が働いている。

賃上げにより、食品の製品価格は、シーフードで+20%、
肉類、果物野菜加工品で+5-10%になると言われるが・・。
加工の自動化は進んでいるが、シーフードや果物野菜加工などの
選別工程や摘み出し工程は、やはり人間の手が必要だ。

タイの最低賃金の引き上げにより、賃金水準は
カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム4カ国平均の
倍以上になったが、シンガポールはこのタイの
また倍以上だ。

近隣の他国を見ても、確かにカンボジアは衣料産業にしか
最低賃金制はなく(月2700バーツ)、外資は多くの産業で
100%が認められるが、70年代半ばのポルポト政権下の
粛清のため、特に管理者層が不足していると言う。
また、これらの国々は、国の干渉、自由競争を阻む規制も多い。

それらに比べて、
タイは、やはり技術者、輸送関係者、IT技術者、エンジニアといった
技術を持った労働力の存在で上回っている。

タイでは今や350万人ものミャンマー人が働いていると
言われるが、多くが漁業や建設業の単純労働力が多い。
ミャンマーの開放の動きを見て、10数年ぶりに故国に帰り働こうかと
考え始めた30代のミャンマー人も多いが、今より良い条件が
ミャンマー国内で出てくるか、ここ2~3年は様子を見ていこうと慎重だ。

タイで毎日、漁業や立ち売りで働き、月8000バーツの収入でも、
ミャンマーの最低賃金は、この4月倍増したと言っても、
月3000バーツ(8千5百円)になったところだ。
タイとは3倍の開きがある。
ベトナムの最低賃金は、ミャンマーより高いが、
月5100バーツ(1万4千円ほど)だ。

これに対して、タイ人も、中東産油国などで実に40万人も
働いている。
その多くは、石油掘削の技術者や化学産業従事者など
技術職が重宝されている。

アセアン市場統合を2015年に控えて、
労働力の価格だけでなく、質が比較される時代になる。
[PR]
by ucci-h | 2012-04-29 10:03 | アジア諸国の賃金 | Comments(0)
タイの労働力不足問題の背景は?
「タイの労働事情の問題は、賃上げより、労働力不足だ」と
4月10日付けのバンコク・ポスト紙は報じている。

d0159325_1133328.png

チェンマイなどで、大学は出たけれど定職のない人や、
バンコクで大の大人が、昼間木の下で多く寝そべっているのを
見て、タイはあまり多くの人が働かない国だなと言う
印象を持ち続けてきたが、2010年12月に、労働力不足について
触れた。タイは労働力不足なのである。
 「うそーっ!タイは労働力不足!? 2010-12-9」
  http://uccih.exblog.jp/12470621/

タイの労働力不足は、以下のような点が原因だろう。

1.少子化が進んでおり、今や出生率は、人口1000人当たり12.8人と
縮んできている。まるで中国の一人っ子のように、子供を生まなくなった。
10年前の1000人当たり17人近くから、さらに下がってきている。

2.工場労働など、規則締めにされる仕事にあまり就きたがらない。
従って、職探しする人間も少なく、失業率は、2012年1月で、わずか
0.43%という世界の中でも極めて低い数字しか出ない。

3.穀物などの一産品の価格が高くなっているせいもあって、
工場からいなかの農家に戻る人も多い。一次産業回帰である。

4.タイ人は多く採用されても、あまり効率的に働くとか、
生産性を上げようとか努めないようだ。
3人で済むことを10人でやっているかもしれない。
つまり、その分、多くの人を雇っている形になる。
労賃が安いからかもしれない。

5.そして、ここに来ての隣国ミャンマーの経済開放路線である。
ミャンマー人はじめ200万人を超える外国人労働者をタイの産業は
使っているが、今後数年すると、ミャンマー人が自国に回帰することが
早くも懸念され始めている。
建設、漁業などのいわゆる「3K」職場をタイ人は嫌い、外国人労働者に任せている。

d0159325_1164942.jpg

タイの食品加工産業は、全労働者の30%に及ぶ
数十万人のミャンマー人を使っているが、
すでに2万~3万人の人手不足だと言う。
賃金大幅引き上げが生じても、なかなか人が集まらないと言う。
工場経営者は、むしろ拠点をミャンマーに移すことを考え始めている。

電機産業や自動車部品産業も例外ではない。
すでに高めの賃金を提供しているが、なかなか人手不足は
解消しないと言う。

ミャンマーの経済開放が進むに従って、タイの人手不足は
どうなっていくのだろうか?

ラオスやカンボジアからもっと人を集めることになるのだろうか?
タイの企業の国外立地が加速されるのだろうか?
それとも、タイ企業の生産性がアップしていくのだろうか?
[PR]
by ucci-h | 2012-04-18 11:07 | アジア諸国の賃金 | Comments(3)
  

北タイのチェンマイをベースにメコン、アセアンの経済、見所、食べ物を日本と比較して紹介します。ただし投資をアドバイスするものではありません。コメント記入は題字をクリック下さい。
by バンディ
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
検索
ブログパーツ
ファン
ブログジャンル
海外生活
時事・ニュース