カテゴリ:中国・韓国そしてインド( 87 )
中央アジアを巡り協力と同時に競合を強める中国とロシア
ロシアは2014年ここに来て、‘前庭’である
ウクライナを巡って、欧米と対立を深め、
経済制裁を食い、それでなくても原油価格下落で
苦しくなっている経済に痛手を負い、
通貨ルーブルの価値は大きく下落している。

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こういった苦しい状況にある今のロシアは、
かつてのソビエト領であり、ソ連崩壊後も今なお維持されている
「CIS」(独立国家共同体)の国々であり‘ロシアの裏庭’と
目される「中央アジア5カ国」との絆を、より堅固にしたいところだ。

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ロシアは、2000年に中央アジア諸国とベラルーシを含め、
「ユーラシア経済共同体」を創設した。

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2010年には、ロシア、ベラルーシ、カザフスタンの間で
「関税同盟」が結ばれた。
2011年にプーチンは、「ユーラシア連合」の創設を提案するなど、
中央アジア諸国との結合を強めたがっている。

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一方、中国は、西方に動乱の発生しやすい
「新疆(シンジアン)ウイグル自治区」を持っている。

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中央アジアは、昔からトルキスタン(テュルク族の住む土地)と
呼ばれ、天山山脈・パミール高原を境に、
東トルキスタンと西トルキスタンに分かれていた。


西トルキスタンが、今の中央アジア5カ国だが、
東トルキスタンが“ウイグルスタン”だ。
この地が戦後中国の支配下に入っている「新疆ウイグル自治区」である。


日本の4.4倍の国土面積を持ち、2000万人の人口を持つ
この自治区の住民の半分ほどは、
なお、イスラム教徒であるウイグル族である。
中国からの自治独立を求めて、争乱が絶えない。


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そして、東シナ海、南シナ海といった
東方の海域での勢力拡張には、覇権国アメリカが
立ちふさがるので、中国としては、西方への進出を
図りたいところだ。


事実、中国は、中央アジアとの交易を高めている。
ハワイに本拠を多く研究機関「パシフィック・フォーラムCSIS」によると、
2012年の中国の中央アジアとの貿易額は460億ドルに達し、
ロシアと中央アジアの貿易額の倍になっている。


中国の中央アジア諸国に対する投資活動はいっそう積極的だ。
シー・ジンピン(習近平)主席は、
「新シルクロード経済ベルト」を目指している。


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中国は、カザフスタンとは300億ドル、
ウズベキスタンとは150億ドル(31件)にのぼる投資契約を結び、
トルクメニスタンとは、2013年に160億ドルの天然ガス
取引の契約を結んでいる。


中国カザフスタン間の石油パイプラインは
2006年に完成している。
カザフスタンのカスピ海北方に中国が所有する
油田から新疆まで、全長1000キロ近く石油を運んできている。

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また、世界第4位の天然ガス埋蔵量を誇るカザフスタンに対しては、
80億ドルの資金援助を行なっている。
タジキスタンは、アンチモンの生産では世界第4位だが、
貧しくロシアへの出稼ぎで稼いでいる国だ。
中国は、ここに対しても10億ドル以上の資金を供給している。


また2013年、キルギスとの関係を戦略的水準にまで
高めており、国内にウイグルの火種を抱える中国は、
経済的にも地政学的戦略からも、西方への進出を図っている。


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東方の海でアメリカや日本と対立し、西方の新疆ウイグルで
イスラム強硬派と対決する中国。
前庭のウクライナで西欧と対立し、裏庭との絆を強めたいロシア。


米国主導の国連では、常任理事国として、シリアや北朝鮮の
制裁案には、仲良く拒否権を発動して、国連の実行力を
削いでしまえる両国。
現状のもとでは、いっそうアプローチを強めている。

 「2034年第3次世界大戦勃発のシナリオ 2014-9-3」
  http://uccih.exblog.jp/21077700/


しかし、中国とロシアは、同じベッドに入っても
片目を開けて眠る仲と言われる。同床異夢でもある。
便宜的同盟とも言われる。ロシアも、経済大国になりつつある
中国へのエネルギーと武器の単なる供給国になりたくはない。
ことに、両国とも中央アジアへの進出を強めるとなると、
協力よりも対立が増えてきそうだと見られる。


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ロシアと中国は、2014年5月に、両国の石油公社を通じて、
30年間4千億ドル(約45兆円)にのぼる天然ガスの
供給契約を結んだ。
中国沿岸沿いに建設する新しいパイプラインを経由して、
シベリアの天然ガスを中国に供給する。


もっともこの件は、価格なども詰まっていないようで、
ロシアが中国との緊密な関係を見せ付ける政治的アドバルーン
でしかないとも見られているが。

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ロシアからの中国への武器輸出は近年減っているが、
経済開発協力は進んでいる。


しかし、前述した中国・カザフスタン石油パイプラインの敷設は
ロシアのこの地での石油支配・コントロールに対して
脅威となってきている。


中国が中央アジアの資源開発に乗り出してくることで、
中央アジア諸国の石油・エネルギー開発が進み、
ロシア自国の石油輸出への脅威となってくるからだ。
ロシアは、自国産原油に質のいいカザフスタン原油を
ブレンドして、品質・価格を維持しているのが現状だ。


中央アジアの開発が進むに連れて、
ロシアと中国は接近しつつも、対立する場面が増えてくるかもしれない。
国際関係の地政学は、一筋縄ではいかないものだ。
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by ucci-h | 2014-11-17 00:48 | 中国・韓国そしてインド | Comments(0)
興隆する「中央アジア」(5カ国)を中国とロシアはどうしたいのか?
中央アジアと言うと同じアジアながら、なじみが薄い。
中央アジアと言われて、何を思い描くだろうか?
広がる草原か,砂漠か、シルクロードを行く隊商か?

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中央アジアと言う地域には5つの国があると言うが、
どことどこだろう?
カザフスタンとかタジキスタンという国の名前だけは
聞いたことがあるが。


中央アジアの5カ国とは・・・?
いずれもかつてソビエト連邦に組み入れられていた
「・・・スタン」であったため、知名度は低い。


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中央アジアの北側(ロシアの南側)に広く広がるカザフスタン。
遊牧の民カザフ人の国である。
日本の面積の7倍にのぼる広い国土は、
アジアで中国、インドに次ぎ広い。
しかし、砂漠が多く、人口は1700万人に過ぎない。
鉱物・エネルギー資源に恵まれる国である。

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南側の中国に接する2カ国は、
キルギス(別称キルギスタン)と
タジキスタンである。


キルギスは東南アジアのラオスよりも小さな山国であり、
人口は55万人しかいない。紀元前の匈奴がいた地である。

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キルギスの南のタジキスタンは、さらに小さな山国で
5カ国の中で一番小さいが、古代からペルシャ帝国の
東部辺境だったから、710万人とラオスを上回る。
東部の国境パミール高原をはさんで、中国と対峙している。

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そして、中央アジアの西南に
ウズベキスタンと、その南にトルクメニスタンがある。


ウズベキスタンは、
トルクメニスタンと同様、日本を上回る国土面積を持つ。
ウズベキスタンの人口は3000万人ほどと、
カザフスタン以下他の4カ国を合わせた人口に匹敵する。
なお貧しい国だが、金など鉱物資源と若い人口に恵まれている。

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ウズベキスタンは、国土の多くを砂漠と山岳に覆われた
内陸国だが、少ないオアシス都市に多くの人が住んでいる。
東部のタシュケント、サマルカンドは、シルクロード天山北路の
中継地として紀元後から栄えたといわれる。

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日本の面積に匹敵する世界最大の湖カスピ海に
接するトルクメニスタンがある。
トルクメニスタンは、国土面積は日本より広いが砂漠が多い。
人口はラオスより少し少ない520万人。
テュルケ系民族の国である。
一党独裁だが、ここ数年開放が進んできているという。

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中央アジア5カ国の特徴は、
いずれも内陸国であり、北のロシア、東の中国からの
影響が強いことだろう。


そして、天然ガス・石油はじめ鉱物資源に恵まれていることだ。

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またいずれも、イスラム教(ことにスンニ派)の
ムスリムが人口の多くを占めている国々である。
中央アジアのムスリムは穏健派の人たちが多いと言われるが。

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これらのことが、ここに来て中国とロシアを
接近させると同時に、中央アジアを巡って、
両大国の競争をもたらすことになりそうだ。
中央アジアを巡っての、中国とロシアの
“同床異夢”については、次回に。
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by ucci-h | 2014-11-13 22:46 | 中国・韓国そしてインド | Comments(0)
2034年第3次世界大戦勃発のシナリオ(後編)
(前編http://uccih.exblog.jp/21074600/からの続き)


ことに、中国とロシアの結びつきが、第3次大戦の可能性の
カギになりそうだ。
ロシアと中国の結びつきは、しばしば「便宜的な枢軸」とみなされてきた。
しかしウクライナ危機が、ロシアを中国に一層近づける契機になるかもしれない。


EUとの経済的関係がぎくしゃくすると、ロシアは‘経済大国’中国への
接近を強めよう。
ロシアのウクライナ介入に対し、中国が“善意的中立”姿勢を保つのと
見返りに、ロシアは、中国の海洋進出に対して同じく善意的中立姿勢を見せよう。

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ロシアのプーチン大統領と中国のシー・チンピン(習近平)主席は
(52年と53年生まれで、共に今61歳)、うまが合いそうだが、
プーチンは2018年に再選され、2024年までいそうだし(任期6年2期)、
シー・チンピンは2022年までは主席をつとめ(2期10年)、その後も影響力を行使しそうだ。
プーチン・シーチンピン連携の先は長い。


@@@@@


ルーキン教授の第3次世界大戦のシナリオは、以下のように展開する。


2030年に台湾との併合に成功した中国も、
この頃には経済的に大きくなってきたインドの影が気になってくる。
この頃、すでに人口でも、人口の若さでも、中国はインドに抜かれている。

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ちょうど第1次大戦前、ドイツがロシアの影におびえたように、
中国軍部は、インドに対して先に叩く作戦を練るようになる。
以前はインドは黙っていたチベットの問題に対し、国境問題も
絡めて、中国に物言うようにもなる。
中国軍部は先にインドを叩く行動に出る。


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2035年、中国がインドに対し手を出したことは、日本との戦いも
意味することになる。
その4年前の2031年に、中国の脅威に対し、
「日印防衛同盟条約」を結んでいたからだ。
日本とインドは、モディ新首相の初訪日の2014年頃から
経済協力中心に連携を強め始めていた。

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日本との戦いが始まると、強力になった中国海軍は、ただちに
尖閣諸島を押さえ、沖縄も獲得に動く。
先の第2次世界大戦で米軍に襲われた沖縄は、不幸にも、
今度は中国軍の標的にされる。


中国軍攻勢の背景には、アメリカ軍の極東からの引き上げがあった。
開戦の3年前の2032年には、日印防衛同盟への期待と、
日本もすでに核保有していたので、十分中国に対抗できるだろうとの思惑から、
在日アメリカ軍は引き上げていたので、中国の動きは速かった。
中国はまた、アメリカはすでに‘モンロー主義’(孤立主義)に入ったとみなしたのだ。


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しかし、これは中国の“読み違い”であった。
しばしの躊躇の後、アメリカは参戦してくる。
第1次大戦でドイツが、仏露と戦っても英国は入ってこないだろうと
見誤ったのに似ている。
アメリカの参戦は、オーストラリア、フィリピンの参戦、そして
NATOメンバーのカナダ、英国の参戦へとつながり、戦争は世界へ拡大する。


中国側はどうなったか?
戦争の起る10年前の2025年には、中国、ロシアをはじめとする
ユーラシア8カ国が、「ユーラシア協定」を結んでいた。
中国、ロシア以外は、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、
ツルクメニスタン、それにパキスタンである。
その後、モンゴルも無理無理引き入れられた。


ロシアの後ろ盾が、中国を強気にさせ、戦争へ踏み切る理由となった。
北方側は心配することなく、石油・ガスはじめ資源は入ってくる。
ロシアはまた、武器も提供し、少しだが、地上部隊と、戦闘機のパイロットも
派遣した。


しかし、ロシアは、中国のアジアでの戦闘に直接は入ってこなかった。
20年前に起こり、その後ロシアの影響力が高まったウクライナが
再びくすぶっており、EUやNATOのウクライナ東部・南部奪回攻勢の
対応に追われていたからだ。


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第3次世界大戦のかたちはどうなるだろうか?
前2つの大戦との違いは、核兵器が双方にとって大きな脅威に
なっていることである。

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核兵器の引き金が引かれれば、大量殺戮につながる。
双方とも使用には慎重だ。最終兵器であり続ける。
核兵器が使われるのは、自らの国土や主要都市が攻め込まれたときだ。
従って、第3次の世界戦争は、第2次大戦と違い、
相手の国の心臓部である主要都市への攻め合いとはならないだろう。


海や島など周辺部での戦闘が多く展開されるだろう。
前大戦のような、資源・人命の大量消費型の戦争とは様相を違えるかもしれない。

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18世紀はじめに欧州諸国を巻き込み14年続いた「スペイン継承戦争」や、
18世紀なかばの同じく欧州諸国が参戦した「7年戦争」のように、
周辺各地で戦闘が繰り広げられる形となるかもしれない。

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第3次大戦中も、韓国やシンガポール、トルコを通じての
交易も続き、経済封鎖も弱い。
ということは、戦争は長引くかもしれない。
30年、40年戦争もありうるだろう。


もっとも戦争はいったん起ればどうなるかわからない。
当事国が必ずしも落とし所を想定し、それに向けて注力するわけではないからだ。
前大戦のような大量の血を見るような悲惨な状況にはならないとは言えない・・・
と、教授は結んでいる。


(後編終わり)
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by ucci-h | 2014-09-03 23:38 | 中国・韓国そしてインド | Comments(0)
2034年第3次世界大戦勃発までのシナリオ(前編)
「米中もし闘わば」・・戦争となると物騒な話だが、
21世紀は、米国のヘゲモニー(覇権)に
対する、‘拡張志向国’中国の挑戦が、世界の覇権争いの
テーマになることは間違いないだろう。

 「中国の南シナ海を舞台にした攻撃的進出の思惑は? 2014-7-4」
  http://uccih.exblog.jp/20873878/


「もし、今後第3次世界大戦が起るとしたら、どんな形になるだろうか?」
ロシア・ウラジオストックの「極東フェデラル大学」のアーティオム・ルーキン教授が、
2014年8月、その状況を具体的に描いている。


興味深いシナリオなので、紹介しておこう。
一部筆者の見方も入っているが、お許しいただきたい。


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「現在の世界情勢は、ちょうど100年前の第1次世界大戦勃発の
前夜を思い出させる」と言われる。


当時、世界経済のトップの英国が退潮し(今はアメリカか)、
新しく経済を伸ばしてきたドイツが拡張主義を取り(今は中国か)、
バルカン半島の紛争地の拡大が(今は東・南シナ海か、ウクライナか、
そのうち中印国境か)、世界大戦の発火点となってしまった。


@@@@@


第1次大戦前夜の状況は、なぜ世界大戦にまで
拡大してしまったのだろう?


20世紀はじめのドイツは、ヴィルヘルム2世の下、
前世紀末の“ビスマルク外交”を切り捨て、世界での拡大政策に
打って出ていた。‘植民地後進国’から脱却したかった。


しかし、露仏の両国にはさまれ、当時経済で世界一だった
英国とも手を握れず、ドイツは国際的孤立を強めて行ってしまった。

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ドイツのほぼ唯一の同盟国であるオーストリア・ハンガリー帝国
(あとは退潮期にあったオスマン・トルコぐらいか)が
‘ヨーロッパの火薬庫’バルカン半島で、サラエボ事件を契機に
スラブ系のセルビアといっそう対立すると、これを強く後押しした。


ドイツの強力な後押しで強気になったオーストリア・ハンガリー
帝国は、無理な要求をセルビアに突きつけ、宣戦布告した。

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これに対しセルビアを後押しするロシアは、対抗策を考える。
この5年前のボスニア危機で、セルビアからの請願にもかかわらず、
オーストリアにボスニアを渡してしまったロシアは、今回は
黙って引き下がれないと、ドイツ・オーストリア側への示威のために、
“総動員令”を発した。


ドイツは2国間の戦争に限定しようと思っていたが、
かねてから「露仏双方に対抗するには、まずロシアの準備が
出来る前にフランスを叩くべし」との作戦を持っていたので、
ロシアの総動員令に過敏に反応し、結局対露宣戦してしまう。

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(図はThe Purple Chamberより)


続いてフランスにも宣戦する。
フランスを早く叩くために中立国ベルギーに独軍が
進入したことから、参戦しなくてもよかった英国も対独参戦し、
主要国を巻き込む世界大戦となってしまった。


人類の歴史は、「思い違い」と「やりそこない」の
歴史だが、ことに戦争でこのおろかさが露呈する。
第1次大戦は、ドイツのあせった過敏な反応が主要国を
戦争に巻き込んだようだ。


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しかし、現在の経済勃興国、中国は、ここ15年や20年は
現在なおヘゲモニーを握るアメリカに対抗することはないだろうと
ルーキン教授は見る。
理由は3つである。

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①毎年2桁の伸びで軍備を積み上げてきている中国も、
なお米国に対して軍事力では大きな開きがあると自認している。
戦うには力不足だ。


②中国は、なお経済的に、つまり輸出市場としても
原材料や先端技術の輸入先としても、米国・西欧・日本への
依存が高い。内需主導へ経済政策を切り替えているが、
なお米欧との協力なしには当面経済はやっていけない。


③中国が米国と西太平洋で対峙した場合、アメリカだけでなく、
日本、オーストラリア、そしておそらくインドといった同盟国とも
闘わなければならない。
しかし中国には、ロシアを含めての「ユーラシア・ブロック」が
まだ固まっていない。
今のところの北朝鮮、パキスタンとの連携だけでは力不足だ。


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戦争は、一方が大きなヘゲモニーを握っているときには起きない。
これに対抗できそうな大きなブロックが出来てきたときに戦争は起こる。


ここ15~20年は、以上3つの理由から、世界戦争は起らないだろうと
言うことは、言い換えれば、この3つの条件が変わってくると戦争に
つながりやすいということだ。


2030年ごろになると、バランスが以下のように変わってくると見られる。

①米国の退潮もあり、米中の軍事力バランスが接近してくる。
②中国経済の外国市場への依存度が減り、欧米への資源依存度も減る。
③中国の同盟ブロックが出来てくる。


(後編に続く)
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by ucci-h | 2014-09-02 23:35 | 中国・韓国そしてインド | Comments(0)
レイプ殺人が平気で繰り返されるインドの政治的・経済的背景
インドに10年ぶりに新しいモディ首相が誕生した翌日、
2014年5月27日の夕刻、その事件は、北インドの
人口の最も多く貧しい州であるウッター・プラデッシュ州の
寒村の小麦畑で起こった。


二人の少女(12歳と14歳)が連れ立って夕方、
自宅から400mほど離れた麦畑の脇に
就寝前の用を足しに出かけた。

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インドでは、トイレを備えている家が少なく、
人口の半分が野外に用を足しに行くと言われる。
貧困が犯罪につながる。

 「トイレを持たない家庭が電話を持たない家庭を上回るインド 2012-3-15」
  http://uccih.exblog.jp/15579404/


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二人で出かけたのはもちろん防犯のため。
インドでは、最近のニュースでよく伝えられるよう、
性的犯罪が後を絶たないからだ。


しかし、悲劇は起り、二人の少女は、男5人に襲われ、
レイプされ、マンゴーの木に吊るされた。


悲鳴を聞いた叔父が現場に駆けつけたが、
男たちに手製のガンで脅され、手を出せなかった。
地元の警察へ、父親と共に訴えに行ったが、
身分を聞かれ答えると、頬を叩かれるだけで
相手にしてもらえなかったという。

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2012年12月、首都デリーで女学生のバス内での
レイプ、撲殺事件が起き、首都での選挙戦にも響くほど
事件は大きくなり、今年3月になって、レイプ殺人事件は
死刑の対象になったほどだ。
しかし、その抑制効果はいまだ出ていない。


世界最大の民主主義国と言われるインドだが、
こういった凶悪な犯罪が野放しされている背景には
何があるのだろう。


カースト制度に代表される身分差別慣習、
そして、こういったレイプ事件に毅然として挑まないというより、
看過してしまう政治体質が色濃く残っているようである。


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法律にはない、いわゆるカースト制度は生活に
根付いている。

 「インドへ来たアーリア人はなぜカースト制度を作ったのか 2012-8-30」
  http://uccih.exblog.jp/16719639/


しかも、我々が学校で習った4つの身分階級
(バラモン、クシャトリヤ、バイシャ、スードラ)+
ダリット(不可触民)が、地域毎、民族毎にさらに分岐して、
貧富の差で身分差別が進んでいるようだ。


30年近く前、身分階級を越えた婚約者が
相手の村民から木に吊るされるというリンチの
ニュースを聞いて、ひどく遅れた国だと思っていたが、
最近のレイプ殺人事件に接して、その後進歩していないなと感じる。

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インド12億人の人口のうち、
シュードラ(かつての隷属民)が4割、
不可触民とされたダリットがほぼ2割、
他民族のエスニックがほぼ1割と言われるから、
7割近くは下層ないし貧困階級にあるのだろうか。
一般民が3割(バイシャより上の上層階級)である。


今回の事件の起きた北インドの最貧州ウッター・プラデッシュ州の
首相は、サマワディ党のアキレシュ・ヤダフは、その名の示すとおり、
北インドでのしてきたヤダフ族の出である。

 「2億人を抱えるウッター・プラデッシュ州でガンジー王朝昇れず 2012-3-8」
  http://uccih.exblog.jp/15541520/


ヤダフ族は、農耕民だったが、近代になって商業、建設業、
さらに軍、警察に人材を出し、北インドの政治も握っている。


一方、今回の被害者は、釈迦族の家庭だったという。
被害を訴えに行った警察が身分を聞いて対応したのも、
ヤダフ族と釈迦族への対応の差を心得ているからだ。


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インドの政治家には、レイプに対する犯罪の認識が
薄いようだ(どこかの国の政治家も、「男に元気がなくちゃ」てな
ことを言ったが・・・)。


ウッター・プラデッシュ州のアキレッシュ・ヤダフ首相は、
記者からの問いかけに対し、「あんた自身は危なくないだろう?」
と返答し顰蹙を買ったが、父親の元レスラーの
ムラヤム・ヤダフ・サマワディ党党首は、
デリーのバス事件が死刑の対象になると決まったときに、これに反対し、
「少年はミステイクをするものさ」と許容していた。

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北インドのヤダフ政権からだけではない。
国政の政権を取ったBJP(インド人民党)の人間からの発言も伝えられる。
事件の翌週の6月5日(木)、インド中央部に広がるマディヤ・プラデッシュ州
(BJPが政権を握る)の治安をつかさどる内務大臣(BJP)は、
「レイプは時に正当であり、時に不当である」と述べている。

 「インドの総選挙 前哨戦の地方選挙はどうだったのか? 2014-4-30」
  http://uccih.exblog.jp/20637289/


6月7日(土)夜には、この東隣のチャティスガル州(ここもBJPが治める)の
内務大臣も、「レイプは意図的に起るものではない。突発事故のようなものだ」と
これもレイプをいわば許容している。


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インドの政治家は、タイトなジーンズや短いスカートなどの
西洋的ファッションを性犯罪の要因にしている。
これにより、男性のホルモン・バランスを崩すという。
それなら、いっそうサリーの代わりに、イスラム諸国のように、
女性の肌を見せない服に強制したら、と言いたくなる。


モディ新首相は、この事件について今のところ発言がない。
レイプだけでなく、少女を殺して木に吊るすという悪質な習慣だ。
なかなか抜けられない貧困も、犯罪の温床となっている。
インドの前近代的悪弊はなお残るのだろうか?
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by ucci-h | 2014-07-06 22:20 | 中国・韓国そしてインド | Comments(5)
インドの総選挙(その5/終) 両党の政策とインド経済の今後
インドの総選挙の結果はじきに出てくるが、
その前に、インド人民党と国民会議派両党の政策、
ことに経済政策の違いを見て、選挙後のインド経済の
展望をしておこう。

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両党ともに選挙前にマニフェストを出しているので、参考になる。

http://www.ndtv.com/elections/article/election-2014/full-text-congress-manifesto-for-2014-general-election-500710

http://www.bjp.org/images/pdf_2014/full_manifesto_english_07.04.2014.pdf


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現政権の国民会議派は、鉱業、通信業を巡る汚職と
経済を活性化できず、物価高を抑制できないパフォーマンスへの
批判を挽回する形のマニフェストになっている。

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国民会議派の政策は、従来とあまり変わらない。
インドの貧困層に対して低価格の食料品の提供プログラムや
医療や住宅の提供を公約している。
もともと中道右派寄りだが、社会福祉的な政策を訴えている。

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そのために経済全体をどう活性化させていくか?

製造業の振興のために「国家投資製造業地区」(NIMZ)を
作るといった具体策は見えるが、ここ数年の停滞の課題と
それをベースにした経済振興策は見られない
(もっとも選挙のマニフェストに過去の反省を記すかは疑問だが)。


@@@@@


これに対し、インド人民党(BJP)は、
現政権の汚職体質と、貧しい経済政策を突く形になっている。

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汚職に対しては、モディ党首自身が独身で、財産家の出ではないので、
国民会議派の汚職体質とは違うと自ら訴えている。

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また、経済成長については、
モディ自身が、2001年以降、工業州グジャラート州で
二桁の経済成長を達成した10年以上の実績が大きな訴求力に
なっている。


BJPは、物価安定のために「物価安定基金」を作ったり、
「国営農業市場」を設け、退蔵者には厳しく対処して
インフレを抑えると約束しているが、
やや小手先でインフレに対処しようとしているようにも見える。


製造業の発展を阻害している一因の高い金利に対し、
金利を‘合理化する’と約束しているが、
人為的に金利を誘導することは難しいだろう。


@@@@@


下馬評ではBJPが今回の選挙では勝ちそうである。
国民会議派政権の政策の停滞は、不人気を呼んでいる。
BJPは、相手の失策で十分勝てそうだ。


モディは、1党だけで過半数を取って、1984年の
ラジフ・ガンディー(国民会議派)政権以来30年ぶりの
安定政権を目指している。


難しいが、過半数の安定政権となれば、
インドの旧体制の抵抗に対する経済改革の
大きな援軍になるだろう。


選挙結果は、2014年5月16日(金)に
明らかになる予定だ。


(インド総選挙5回シリーズ終わり)
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by ucci-h | 2014-05-12 12:56 | 中国・韓国そしてインド | Comments(0)
インドの総選挙(その4) インドの経済構造の問題点
表面的な経済数字は、
その国の経済状態の推移を示しているわけだが、
同時にその底に横たわる経済構造の問題の表層部でもある。

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インド経済は、ここにきて少し改善の気配を見せてはいるが、
その経済構造(たとえば、資本の自由化、流通業の自由化、
補助金財政からの脱却、製造業の育成など)は、
アセアン主要国など他のアジア諸国と比べても遅れている。
4回目の今回は、インドの経済構造の問題を覗いてみよう。

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@@@@@


インドの経済構造の特徴は、タイなどと違って、
製造業がなお薄弱なことであろう。
インドのGDPのほぼ半分はサービス分野だが、
製造業は28%と、89年当時の25%からあまり伸びていない。


製造業の雇用も、過去数年でむしろ縮小し、
毎年労働市場に入ってくる1,200万人の受け皿としても
あまり機能していないようだ
(現在は製造業の省力化が進んでいるせいもあろう)。


@@@@@


インドの経済発展は、日本などと違って、面白い
経緯をたどってやってきた。


日本なら、軽工業から重工業へ、そしてサービス業の
裾野が広がってきた。
インドは、設備投資をする資本力が乏しかったこともあり、
コンピューター・ソフトの開発やアウトソーシングなど
資本のかからないサービス業をまず発展させた。

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例えば、鉄鋼会社⇒コンピュータ・ソフトが日本などの形とすれば、
インドは、コンピュータ・ソフト開発会社⇒鉄鋼業へと逆の形でやってきた。


どちらでもいいように見えるが、
インドの場合は、製造業の広がりに遅れをとったままでここまで来てしまった。
製造業の裾野が広がり、技術開発が進み、部品製造業まで分化していかないと、
国際貿易で、原油を買う金をなかなか賄えない。


インドの主要輸出品はなお、
西欧向けの宝飾品、衣料品、工芸品などの
手工業製品の域を出ていない。



@@@@@


インドの主要輸出品は何か?
JETROの輸出入統計を見ると、3大輸出品は、①原油・石油製品、
②宝石・宝飾品、③農水産品となる。
3品目で、全輸出の半分近くの47.4%を占めている(2012年)。


インドは、原油消費の8割を輸入に頼り、
原油・石油製品が総輸入金額の3分の一以上を占める
原油輸入依存国である。


原油輸入国なのに、原油・石油製品が輸出のトップというのは
おかしく見えるが、原油・石油製品輸入(全輸入の35%を占めトップ)の
3分の一弱を加工再輸出しているという形だ。


@@@@@


宝石・宝飾品が輸出第2位にあるのも、原油・石油製品に似ている。
インドは、世界トップ級の金の輸入国だ。
インフレ対策としての金の需要は歴史的に高い。
真珠・貴石と合わせると、金・宝石は輸入全体の16%ほどになる。

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宝石・宝飾品の輸出額427億ドルは、
金や真珠の輸入額756億ドルの半分強になる。
宝石・宝飾品類もネットでは輸入品が上回る。


こう見てみると、実質的なトップの輸出品は
農水産物(シェア14.3%、2012年)となろう。
工業製品ではない。

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インドはなお綿花やコメを主力輸出農産物とする
農業品輸出国である。
工業製品輸出は、「輸送用機器」、「機械」、「医薬品」、「既製服」が
トップ品目となるが、4品目合計の輸出品シェアはなお21%に過ぎない。


@@@@@


工業化の遅れた国インドは、輸出入バランスの均衡化のため、
また国内雇用の拡大のためにも、工業化が大きな目標である。
そしてそのための資本は、外国に仰ぎたい。
従って、FDI(外国からの直接投資)が一番重要になる。


しかし、これが進まないところに今日のインドのジレンマがある。
インドへのFDIは、2011~12年度の466億ドルから、
2012~13年度には、369億ドルに下落してしまった。

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この2012年度は、インドが歴史上初めて、資本流入よりも資本流出がまさる
「資本輸出超過」の年になってしまった。
国内への外国資本投資が進まない一方で、
海外へ出て行くインド資本は増えたからである。


@@@@@


インドへの外国資本投資が進まないのには、政治の責任が大きい。

一般的な役所のレッドテープ(許認可の遅れ)だけでなく、
インドに根付いている反進歩主義的な面も見逃せない。


インドは鉱物資源に富むが、
たとえば昨2013年8月、
東部オリッサ州でボーキサイト鉱石の開発に乗り出した
英国のベダンタ・リソースィズ社は、開発を断念した。

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‘聖なる丘’を掘ることに地元民が反対し、
地元の議会は禁止し、中央政府の環境大臣も許可を
出さなかったためだ。


同月には、その前に、
ルクセンブルグに籍を置く鉄鋼世界最大手のアルセロール・ミッタルが
オリッサでの120億ドルの鉄鋼プラントの建設をキャンセルしたし、
韓国のポスコも、バンガロールのあるカルナタカ州での53億ドルの
鉄鋼プラント建設をあきらめた。

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いずれも、主に、土地収用を巡る反対からだと言われる。
インドの土地収用法は、120年前のものがなお変えられていない。
世界的に供給過多気味の世界の鉄鋼業としては、
人口が多く、これから経済が伸びるインドは格好の立地のはずだが、
経済合理性だけでは、まだ進まないようだ。


@@@@@


外国資本の投資が進まないのは、製造業だけではない。

流通業では、米国のウォルマートが、インド政府の流通業開放に
乗って、地元企業と組み1億ドル投入したが、
政府の流通業開放政策が進まず、
地元企業は、獲得した立地のうち17箇所を元のオーナーに返した。

 「挫折したインドの外資スーパー・チェーンの導入 2011-12-11」
  http://uccih.exblog.jp/15093829/

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保険業では、外国資本の割合の制限を26%から49%に広げる
という方向が進まず、インドでオンライン保険会社を立ち上げていた
米国のバークシャー・ハサウェイ(ウォーレン・バフェットの投資会社だが、
傘下に保険会社を持つ)は、これをクローズすることにした。


@@@@@


それでも、インドへの外国資本投資は、1990年代には進んだのだから、
ここ何年かの停滞の政治の責任は、やはり大きいのだろう。


次回最終回その5では、
今回の総選挙に際しての、国民会議派とBJP(インド人民党)の
政策、主に経済政策の違いを見て、選挙後のインド経済を
展望しておこう。
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by ucci-h | 2014-05-12 01:49 | 中国・韓国そしてインド | Comments(0)
世界最大の選挙インドの総選挙(その3) 前哨戦の地方選挙はどうだったか?
インド経済の構造を見る前に、
今回のインドの国政選挙に至るまでのここ2年ほどの
インドの地方選挙の前哨戦を振り返っておこう。


@@@@@


今回の国政選挙の前に、現政権を握る
「国民会議派」の最初の試金石となったのは、
インドの最大州、人口2億人を数え、
首都デリーの東に広がるウッタラ・プラデッシュ州で
2年前の2012年2~3月に行なわれた選挙だった。
ウッタラ・プラデッシュ州は、タージマハールがあるが、
インドでも貧しい州である。


過去22年間、このインド最大の州で政権を取れないで来た
国民会議派は、‘プリンス’ラフル・ガンディーを送り込んで
政権獲得を目指したが、結果は、政権奪取どころか、
第4位にとどまった。

 「インド最大の州でガンディー王朝昇れず 2012-3-8」
  http://uccih.exblog.jp/15541520/

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ウッタラ・プラデッシュ州の政権は、
中道左派のBSPに代わって、社会主義のSP(サマワディ党)が
担うことになった。
国民会議派は、昇るきっかけをつかめなかった。


@@@@@


次に注目されたのが、その年の暮れ、
2012年12月に行なわれた、ライバルBJP(インド人民党)が
政権を握る工業化の進んだ西部グジャラート州での挑戦ぶり。

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結果は、その差を選挙前の117議席対62議席の55議席差から
122議席対56議席とBJPの半分にも届かない66議席差に広げられ、
国民会議派は返り討ちにあった格好となった。

 「インド国民会議派、工業州でも敗退 2012-12-27」
  http://uccih.exblog.jp/17515355/


国民会議派の国政での失政や汚職の広がりが
国政与党を後退させた。


そして、この12月の16日夜に、ニューデリーのバスで
女子学生が6人の男にレイプされ、死にいたるという
悲惨な事件が起きていた。
この事件は、政権与党への逆風ともなっていく。

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@@@@@


そして、国政選挙への最後の試金石となったのが、
総選挙まで4ヶ月に迫った2013年12月8日の4州と首都デリー直轄区で
行なわれた地方選挙だった。
結果は、国民会議派の1勝4敗に終わった。


人口1,700万人、全70議席の議会を持つ首都デリー
(俗に新市街をさしたニューデリーと地図などでは表記される)では、
3期15年首都圏首相(知事)を続けてきたディクシット女史(76歳)の
国民会議派は、前回のトップ(43議席)から、わずか8議席の第3位に陥落した。
汚職や失政に加え、1年前にデリーで起こったバス・レイプ事件が影をさした。

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BJP(インド人民党)は32議席を獲得したが、
過半数の36議席には4議席足りなかった。
デリーで伸びたのは、新しい政党「AAP」(普通人党)だった。
アルビンド・ケジュリワルという45歳の元税務署役人が作った新党で、
その汚職追放のスローガンが庶民に受けた。

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AAPは、首都選挙で28議席を獲得して第2党に躍り出た。
トップのBJPが連立提携に失敗したため、ケジュリワルのAAPが
国民会議派を取り込み、彼が首都圏首相に就任した。
しかし、就任後2ヶ月も経たない2014年2月半ば、
汚職防止法案が議会を通らなかったため、辞任を表明した。


@@@@@


デリーのほかには、この12月8日に、4州で州選挙が行なわれた。
インド中央部に広大に広がるマディヤ・プラデッシュ州(人口7,300万人)では、
BJPが3分の2の議席を獲得し、3期目の政権を確保した。


この東隣のチャティスガル州(人口2,600万人、マオイストの反乱がある州)でも、
こちらは僅差ながら、やはりBJPが政権を確保した。


西のパキスタンと接する面積最大のラジャスタン州(6,900万人)では、
BJPが4分の3の議席を取り、圧倒した。


唯一、東部ミャンマーと接する丘陵地帯にあるミゾラム州
(人口がインドの州の中で最小の110万人のビルマ族系の州)では、
国民会議派が議席の3分の2を取り、一矢を報いた。


@@@@@


インドは州によって、政党の勢いもさまざまで、
2大政党制とは言えないだろう。
28州のうち21州では、2政党以外の党が力を持っていると
言われる。

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国民会議派とBJPの2政党が総選挙で得票する率は
合わせて半分ほどだと言われる。
従って、政権を組むときは連立となる。



州選挙、地方選挙の結果がそのまま国政選挙に
反映されるわけではないが、モメンタム(勢い)は
明らかにBJP(インド人民党)の方にある。


@@@@@


BJPへの脅威は、インドに、日本の人口以上の
1億3,800万人いるイスラム教徒の存在だろう。
2002年グジャラートで起きたイスラム教徒襲撃事件では、
ヒンドゥー至上主義のモディ州政権は、これを黙殺したと言われる。
2,000人近くのムスリムが殺された。


もっとも広大なインドのこと、
最大のヒンドゥー教徒は、イスラム教徒の6倍いる。
6対1の人口比は圧倒的である。


次回は、経済構造のお話へ。

(その4に続く)
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by ucci-h | 2014-04-30 21:13 | 中国・韓国そしてインド | Comments(2)
世界最大の選挙インドの総選挙(その2) 数字で見る現在のインドの経済
インドは、同じ人口大国の中国に経済成長で
大きく水を開けられている。
今回の総選挙でも、国民会議派政権の経済失政が
政権交代の可能性の大きな背景になっている。


@@@@@


一人当たりのGDPで見ると、2013年、
中国が6,764ドルと、世界84位まで上がってきているのに
(タイは5,674ドルで第93位)、
インドは、1,505ドルで、中国の4分の一にも届かず、
世界144位に甘んじている(世界145位で1,477ドルのラオス並みだ)。

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もっとも人口が12億4,300万人と多いので、
世界の国別GDPのランクでは、1.87兆ドルの第10位となるが・・・
(いずれも、「世界経済のネタ帳」より)。


@@@@@


政治の弱さが経済改革を進められないでいるインドだが、
現在の経済数字は、そんなに悪いのだろうか?
主な指標を見てみることにしよう。


 「政治力の弱さが民間企業の発展を阻害する国インド 2012-4-9」
  http://uccih.exblog.jp/15697314/


 「経済改革の勝負に出たインドのシン政権 2012-9-24」 
  http://uccih.exblog.jp/16872643/


@@@@@

{インフレ率}

インドの消費者物価指数は、ここ数年の9~10%からは
落ち着いてきたが、最新の2014年3月で、前年比+8.3%と依然高い。
「食品価格やエネルギー価格を抑えられない」と
国民会議派シン政権は批判されている。

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{政策金利}

従って、インド準備銀行の政策金利である「レポ・レート」は
今年になって8.0%に上がったままである。
野党は、「高金利はインドの製造業の頭を押さえつける」と非難している。
と言って、人工的に低金利を作り出せるわけもなく、
インドの高金利は、インフレの動向次第となる。


{為替ルピー}

成長鈍化と高インフレ、さらに流通業などで外資の自由化が進まない国として、
インドの通貨ルピーは、2013年まで、3年間対ドル・レートで
下落を続けた。

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2013年8月には1ドル=68ルピーまで下がったが、
その後経常収支の改善などもあり、2014年4月現在は、
1ドル=60ルピー台にある。
政権交代による新経済政策が、ルピーの支えになるか注目される。
経済が強まらなければダメだろう。


@@@@@

{経常収支}

以前は長年均衡を保っていたインドの経常収支だが、
2005年ごろから急速に赤字が拡大してきた。
2012年の経常赤字は、882億ドルの巨額にまで拡大した。
貿易赤字の拡大が最大の要因である。

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補助金政策による原油輸入増などの貿易赤字の拡大を、
ソフトのアウトソーシング等によるサービス収支黒字と
海外からの労働者送金、資金援助などの経常移転収支黒字で
補えなくなってきている。


しかし、昨年からはインフレ国ゆえ需要の強い金の輸入の
関税を高めるなど、貿易赤字(2012年には2000億ドル近くに)の
拡大に歯止めをかけるなどして、経常赤字はここにきて縮小してきた。


{経済成長率}

インドは2003~2010年ごろは、8~9%の高い経済成長率を
示したが、ここ数年は、2011年6.6%、2012年4.7%、2013年4.4%と、
鈍い成長になってきている。

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国民会議派のシン政権がなかなか経済改革に手が打てないことが
ひとつの理由だが、そもそも製造業の遅れているこの国に、
中国などの旧成長モデルを進めようというのがムリをきたしているとの
指摘もある。


@@@@@


{財政赤字}

国民会議派政権の弱者保護という財政補助政策もあり、
インドの財政赤字は、経常赤字同様、2008年ごろから
大きく広がり、2013年には8.2兆ルピー(約1400億ドル)の
財政赤字となった。
インドは、経常赤字と財政赤字の大きな双子の赤字を持つ国となっている。


財政赤字の歯止め、縮小には、基本、現在の補助金政策から
雇用拡大策への転換など、財政政策の変革が求められる。


{インドの株式}

ここ数年の経済の不冴えにもかかわらず、インドの株式は
比較的堅調な動きで推移してきた。
2008年のリーマンショックではさすがに半値まで売られたが
(ボンベイ取引所SENSEX指数)、2010年末には
早くもショック前の高値に面あわせ、そしてここにきて
モディ政権成立への期待から最高値をつけてきてる。

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流通市場などには外資が入りにくいが、
証券市場は外資が入りやすいということだろうか・・・。


@@@@@


最悪期は過ぎつつあるように見えるインドの経済状況だが、
こういった表面に出てくる経済数字の底に、
インドの経済社会の構造的な問題が横たわっているように見える。


次回第3回目は、インドの経済社会の問題点と、
それに対する国民会議派およびインド人民党の
取り組み方を見てみよう。


(その3に続く)
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by ucci-h | 2014-04-30 01:54 | 中国・韓国そしてインド | Comments(0)
世界最大の選挙インドの総選挙・・政権交代が起これば経済は良くなるのか?(その1)
「世界最大の選挙」が、2014年4~5月インドで開かれている。


人口の世界一は、なお中国だが、
社会主義国中国には、省レベル以上での普通選挙はないので、
有権者数が8億1,400万人に達するインドの国政選挙が、
世界最大の選挙ということになる。

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@@@@@


インドでは、戦後独立後、共和制への移行後の1951年に第1回の
国政選挙が行なわれたが、今年2014年は第16回目の総選挙となる。


5年ごとに下院議員543名を選ぶ選挙だが
(ちなみに、仏暦元年の紀元前543年とは関係ない)、
途中解散もあるので、今年が16回目となる。
過去2回(2004年と2009年)も、5年経った満期解散選挙だった。

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@@@@@


立候補者数は、500の政党から15,000人ほどが小選挙区に立つ。
インドの全28州および7つの連邦直轄領から543名が選ばれる。
倍率は平均ざっと28倍だ。


地域が広く、民族色も異なる大国インドは、地域性が強い。
しかし、その中で、インドの政治を引っ張ってきたのは、
‘ネルー・ガンジー王朝’と俗に呼ばれる「国民会議派」(INC)と
これに対抗するヒンドゥー至上主義の「インド人民党」(BJP)である
(もっとも地方毎には、もっと有力な政党があるが)。

 「インド最大州でガンディー王朝昇れず 2012-3-8」
  http://uccih.exblog.jp/15541520/


今回は、ネルー・ガンジー王朝のプリンス(母親はイタリア人の
ソフィア・ガンジー)と呼ばれるラフール・ガンジー(43歳)と、
BJPの党首、白髭のナレンドラ・モディ(63歳)の独身者同士の闘いとも
騒がれている(モディには隠れ妻はいたようだが)。

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@@@@@


北のヒマラヤの降雪地域から南の灼熱の砂漠まで、
広大なインド亜大陸での選挙なので、4月7日(月)の
北東部アッサム州(人口3,100万人)など6州を
皮切りに5週間ほど、5月12日(月)まで9回にわたり行なわれる予定だ。


17日(木)には、マオイスト(毛沢東主義派)の反乱が続く
東部寄りのチャティスガル州(人口2,600万人)など13州でも行なわれた。
実際今回も、警官や選挙係員が計7人ほど殺されている。


ちなみに、インドの州で、人口の多いビッグ3は、
①タージマハールのあるウッター・プラデッシュ州(2億人)、
②商都ムンバイが州都のマハラシュトラ州(1億1,200万人)、
③マガダ国ブッダガヤの地、北東のビハール州(1億400万人)である。
いずれも1億人を超えている。

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@@@@@


結果は、最終選挙日4日後の5月16日の一斉開票で行なわれる
(1ヶ月近く、投票箱をどうやって安全に確保できるのだろうか?
電子的に保管するのかな?)。
今回は、2004年以降2期続いた国民会議派政権も、
数々の問題を抱えてほぼ機能不全に陥っている。


国民会議派のマンモハン・シン首相もすでに81歳だ。
インド人民党がバジバイ首相政権(98~04年)以来、
10年ぶりに政権の座に着くことが予想されている。


経済界も、モディBJP党首が、2001年以来、工業生産の盛んな
西部のグジャラート州(人口6000万人)の首相として、
二桁の高い経済成長を示してきたその手腕に期待している。
ここにきてインドの株式市場も期待で上げている。

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 「インド国民会議派グジャラート州でも敗退 2012-12-27」
  http://uccih.exblog.jp/17515355/


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皮切りとなった4月7日7時から始まった
アッサム州の選挙の写真を見ると面白い。
並んでいるのは、サリーを身につけた女性ばかりだ。
インドではなぜか、選挙ではトイレに並ぶように、
女性と男性は別の列を作る・・。

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投票は、今年は電子式だという。
公用語が22もあるこの国のこと、文字で書かせる投票は行なわれない。

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@@@@@


インドは、中国と並ぶ人口大国だが、経済成長において
大きく水を開けられた。


仮にインド人民党のモディ政権になったとして、
経済面で挽回できるのだろうか?
人口大国だけに、世界の経済に与える影響も大きい。


次回は、現在インドが抱える経済の問題について、
数字を検証しながら見てみることにしよう。


(その2に続く)
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by ucci-h | 2014-04-29 00:18 | 中国・韓国そしてインド | Comments(3)
  

北タイのチェンマイをベースにメコン、アセアンの経済、見所、食べ物を日本と比較して紹介します。ただし投資をアドバイスするものではありません。コメント記入は題字をクリック下さい。
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