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前政権の失政、コメ代金の未払い問題が、軍事政権で解消に
半年以上の懸案であった、タイの農民に対する
政府のコメ代金未払い問題が、クーデター4日後で
解消に向かった。


コメ代金が政府から半年以上も払われないで来た
タイの多くの農民は、クーデターによる軍事政権の
成立で、5月26日(月)午後から、さっそく長く滞納されていた
コメ代金が支払われ始めたことに喜んでいるに違いない。

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タイ貢献党の経済失政の最たるものである
コメ抵当スキームは、実施2年後で‘代金の未払い’と
いう形でほぼ挫折していた。
この政府のコメ代金未払いの問題は、農民の
自殺者も出すなど、農家の深刻な問題となっている。


 「タイ政権のコメ代金確保の苦闘続く(前半) 2014-3-4」
  http://uccih.exblog.jp/20426509/

 「タイ政権のコメ代金確保の苦闘続く(後半) 2014-3-6」
  http://uccih.exblog.jp/20430460/


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農民の多くが選挙を通じて送り込んだタイ貢献党政権が
未払いの状態を延ばし延ばしで来たのに対し、
望まない軍事政権が、ただちに手を打ってくれたのは
何とも皮肉なことである。


実は、ここにタイの未成熟な民主主義の欠陥と、
海外から忌み嫌われるタイの軍事政権の対照的な
効率性が垣間見られるのだが・・・。


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それはさておき、
タイの「コメ抵当スキーム」のここに至るまでの
数ヶ月の動きを振り返ってみよう。


昨年暮れから明らかになった政府によるコメ代金の
未払いは、年末から年始にかけて、政府の閣僚達からの
「今から支払う」という虚偽の声を何回も聞きながら、
「まあ、3月半ばくらいになるかなあ」という支払い見通しだった。
しかし、その3月を過ぎても問題は持ち越され、
すでに半年以上に及んだ。


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2013年10月から2014年2月までの第1期米
(それ以前の未払いもあるが・・)の納入量は、
籾量にしてほぼ1,150万トンだった。
平均トン16,500バーツ(5万円強)の高値で政府が
基本全量引き取ってくれるので、農家は増産に努めた。
支払い代金は、1,900億バーツ(5,900億円)となる。

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ところが、政府の高値売却のもくろみは外れ、
高コスト米は、世界のコメ市況の下落の中で外国に売れず、
政府の倉庫に精米量で1,700万トンと、
輸出の2年分近くが積み上がってしまった。


政府は市況の回復を待っているから、なかなか損切りもできず、
コメ売却代金が入ってこず、農民への支払いに齟齬をきたした。


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第1期米1,900億バーツのコメ代金のうち、
実際に支払われたのは、ここまで半分の1,000億バーツである。
半分近くが未払いとなり、農民を高利貸しに走らせることになった。

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既支払い額のうち、コメ売却による商務省への入金は700億バーツ
ほどだった。
高いタイ米は、国際市場で精米ベースで半年で260万トンほど
(モミ量にして420万トンほど)と、3分の一強しか捌けなかったのだ。


政府の予算の予備費から200億バーツ、そしてコメ代金支払いを扱う
国営の「農業農協銀行」(BAAC)の集めた基金から100億バーツが
足されて、83万人ほどの農民に、ここ3~4月頃までに、遅ればせながら
半分の1000億バーツほどがようやく支払えた。


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年末から年初にかけての、コメ代金充当のための政府の借入れの試みは、
ことごとくつぶれてきた。
その理由の多くが、資金の出し手である銀行や国有企業が、
暫定政府の借入の正当性に対して疑問を感じたからと言われるが、
銀行や役所といったエスタブリッシュメントのタクシン派嫌いも
根底にあったのだろう。


そして、なお残る84万人ほどへの900億バーツをさらに予算の予備費から
捻出できないかと苦闘していたのが、クーデター前夜の政府の姿だった。


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その閉塞状況が、クーデターから4日目で突き破られた。
26日の午後から全国のBAACの店頭で、残るコメ代金が
支払われ始めたのだ。
軍事政権が優先課題として取り上げたからだ。

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まだるっこしく時間がかかり、時には時機を失する「民主主義」より、
「独裁主義」の方が時宜を得た決定・実行が速やかに行なえると、
企業経営になぞらえて、一部で言われるゆえんである
(だから民主主義はダメだと一般化しているわけではありません)。


タイの軍事政権は、海外の民主主義国から懸念を示され、
国内ではその強権体制に一部反発を受けているが、
①首都での両派の対立をストップさせたこと
(まだ先の展開はわからないが・・)と、②このコメ代金問題に素早く
着手したことのふたつは、評価されよう。


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この900億バーツ(2800億円)は、6月までの1ヶ月で
支払われる予定と言われる。

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この資金はどこから来るのだろうか?
このうち400億バーツは商務省からと言われるが、
結局は、予算の予備費からさらに400億バーツ出すことになるのだろう
(インラック政権時に200億バーツ引き出しているので、計600億バーツになる)。


残る500億バーツは金融機関からの借入と言われる。
「選挙委員会の承認なしには、政府からの借入の要望でも
憲法違反の嫌疑がかかる恐れがあるので、応じるわけにはいかない」と
言っていた金融機関も、現憲法停止、全権掌握の軍事政権からの
要請なら受け入れることになるのだろう。


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軍の政権掌握が、うまくタイ経済の復活と
社会安定のきっかけになればいい。


ちょうどタイの経済は、このコメ抵当スキームや自動車購入奨励策、
最低賃金一挙60%引き上げ策など、前政権のバラマキ政策による
家計の借金の増加、消費の先食い、インフレの高進により
重く沈んでいるときだ。


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また、世界のコメ相場もどん底にきている。
タイ政府の在庫放出懸念も含め、コメ生産国の供給増で
市況は下がりっぱなしで来た。

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5%精米FOBベースで、2012年平均573ドルだったタイ米の輸出価格は、
2013年には516ドルに下がり、今や391ドルの安値である。
2年間で32%も下がってしまった。
以前は100ドル以上安かったベトナム米の390ドルに並び、
インドやパキスタン米の420ドルよりも安くなってしまった。


しかし、そこはマーケットである。
安くなったタイ米を見て、購入を打診してくる国々が増えてきたという
一面もある。
ことによったら、貯まっていたタイ米が年後半以降、
はけ始めるかもしれない。


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過去2年半に、8,000億バーツ(2兆5千億円)以上をつぎ込み、
その半分以上の5,000億バーツの損失を出し、
タイの米作の質の向上を止め、タイ米の輸出を減らし、
国と農民の借金を増やした、政治資金作りのスキーム。


損失部分が、まるまる農民への補助金になったのならいいが、
多くが、市場相場を崩し、不必要な費用として出費され、
まさに“損失”となってしまった。


それを始めたタイ貢献党が始末をつけられず、
最後は、軍事政権が始末をつけてくれそうな状況。
考えれば、なんとも皮肉なタイの悲喜劇である。
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by ucci-h | 2014-05-27 23:28 | タイの政治・経済・金融・為替 | Comments(8)
タイ政権のコメ代金確保の苦闘続く(前半)

2014年2月は、ロシアのソチで冬季オリンピックが

開催された月、ウクライナの政情が揺れた月だが、

南の国タイでは、オリンピックの話題はほとんどなかった。



これに代わり、この月は、バンコクで反政府派のデモや

騒動が続き、農民に政府からコメ代金がなお払ってもらえず、

苦境のインラック政権は、この資金確保に苦闘する月となった。

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政府が、100万人以上の農民に対し、

昨年10月以来ほぼ5ヶ月近く、買い上げたコメ代金を

支払えないでいるのは、借金を多く抱える農民にとって

言うまでもなく、深刻な問題である。



「コメ抵当スキーム」の問題点は多岐に渡るが、

代金支払いに齟齬をきたしてしまったことは、

このスキームの欠陥が、表面化したことになる。

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政策への批判は別にして、

ともかく農民へコメ代金を支払うことは、政府の優先課題となる。

ここまでの政府の金繰りは、不成功に終わっている。

直近までの政府の努力を見てみよう。



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昨年11月末には、

支払い窓口である国有の「BAAC」(農業農協銀行)に

政府保証で750億バーツ(2,300億円)の債券を発行を試みたが、

人気が出ず、落札は半分の370億バーツしかできず、

総額1,000億バーツを超える未払い分に届かなかった。



年が開け、1月17日には、BAACは自行の3年債326億バーツを

発行した。しかし1,300億バーツに膨れてきたコメ未払代金には

不足だし、そもそも銀行の流動性をコメ代金のために取り崩すには

銀行の経営層自体、抵抗がある。



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1月末の選挙前、政府は民間金融機関からの資金導入を考え付く。

財務省が、民間銀行から1,300億バーツのブリッジ・ローン(つなぎ資金)を

借り、選挙後に、BAAC債にあてるというものだ。



しかし、この目論見も、準備不足と「選挙前の政府の借入は

憲法が禁じる次の政府への負担にならないか」という疑点から、

民間銀行から敬遠され、第1回目(1月30日)、第2回目(2月4日)とも

入札はキャンセルされた。



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このため、選挙後もなお、農民にコメ代金は支払われない。

BAACは、昨年10月からこの1月までに、

550億バーツ(籾量340万トン分)しか支払っていない

(納入されたコメの量は、1期米だけで1000万トン近くになる)。

この間、代金に当てるべき、政府が抱える在庫米の売却も

あまり進んでいないようだ。

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選挙の2日後の2月4日には、政府が謳ってきた年間120万トンの

中国との政府間(BtoB)契約も、中国からキャンセルされたことが

明らかにされる。



実体の薄い政府間契約(実際の中国側は一企業のようだったが)に関し、

タイの「NACC」(国家反腐敗委員会)から政府関係者に調査が入っており、

中国側がこれに連座させられるのを嫌ったのが実態のようだ。



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2月4日の2度目のブリッジ・ローンの試みにも失敗した政府は、

精米業者に助けを求めに行く。

2月6日、商務省は、「TRMA」(タイ精米協会)に、

農民の抵当チケットをベースに、その半額だけ支払ってくれるよう頼み込む。

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しかし、これとて、このスキームで利益に与った精米業者にしても、

農民に貸すだけの大金があるわけではなく、民間銀行から借りるにしても

政府の保証はえられにくく、及び腰となり、ほぼ立ち消えとなったようだ。



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政府の借入努力が難しい中で、前財務大臣のティラチャイ氏や

民主党政権で財務大臣だったゴーン氏からは、

「政府は損を覚悟で、2,000万トン近く(精米量)に達したコメ在庫の

売却に努めるべきだ」との声が出はじめる。



輸出に800万トン、国内消費に1,000万トンさばけば、

農民に未払い代金を支払えると言うものだ。

しかし、コメの処理を扱う商務省筋は、相変わらず

在庫量や売却量に関し、なぜか口を閉じたままである。



商務省は、ただ、「月に80億バーツは販売できよう」と言っているから、

月に50万トン(もみ量)ほどの在庫米の処分を期待している

ことになる。

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政府の倉庫に眠り、増え続けていくコメ在庫は、

処分に5年はかかるだろうと専門家は見ている。

しかし、在庫期間が3年を超えると、コメの質が著しく

低下していくと見られる。

政府の倉庫に眠るコメは将来どうなるのだろうか?



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こうした状況の中で、

2月半ばにいたり、政府は、BAACでなく、

国有の別の金融機関を動かす

努力を試みることになる。



(後半に続く)





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by ucci-h | 2014-03-04 23:40 | タイの政治・経済・金融・為替 | Comments(0)
タイの農民にコメ代金が入ってこない!(その2)

前回、コメ代金を政府が払えなくなったのは、損益の問題ではなく、

金繰りの問題である、と述べた。



 「タイの農民にコメ代金が入ってこない!(その1) 2014-1-28」

  http://uccih.exblog.jp/20285696/



政府は、2011年のこのコメ抵当スキームの発足に当たって、

,000億バーツ(1兆5千億円)の資金プールを設定した。

コメ資金を扱う国営の「BAAC」(農業農協銀行)から4,200億バーツ借り入れ、

これに政府の借入による資金800億バーツを加えての5,000億バーツである。

年度予算の枠外である。


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(写真はいずれもバンコク・ポスト紙より)


しかし目論見がはずれ、この潤沢なはずの資金プールが底をついてきた。

農民から増産されたコメ(2年間で籾量で4,300万トン)を受け入れ、

高値で高額(2年間で6,800億バーツ)を支払う一方で、

2年間に売却できたコメの量は、せいぜい精米量で1,300万トン

(籾量で2,000万トン)ほどに過ぎなかった。

売却できたのは、半分以下だったと見られる。




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1年間に、経費も含めると買い取りに平均3,850億バーツもかかるのに、

これをカバーする収入は、政府の根拠のない市況回復待ち希望から

売却がままならず、年平均、半分以下の量しか売れず、

売れても低い市場価格だから、単価は、買い取りコストのこれも半分未満。




つまり、年平均700億バーツほどしかカバーできていない。

年平均3,000億バーツを超える流出が2年続いたことになる。

これで、5,000億バーツの基金プールも底をついてしまった。


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ずっと世界一のコメ輸出国だったタイは、年間輸出量(民間+政府)が

2012年690万トン、2013年650万トンほどに落ち込み(いずれも精米量)、

世界第3位に転落した。

高値で、しかも余剰在庫を抱えることになったタイ米は、

ベトナム米やインド米にシェアを奪われていった。




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資金繰りを簡単に見ると、いま見てきたように、

2年間で、5,000億バーツの資金プールから流出する国費は、

,300億バーツ(7,700億―1,400億バーツ)ほどと予想以上に膨らんだ。




「タイ産のコメなら、うまい、まずいを問わず、全量高値で買い上げる」という

政策だから、タイの農民は量の取れるコメを増産した。

その結果、収量は増え、買取価額は増大した。




一方、これをカバーする収入の方は、

‘世界があこがれる’と自負するタイ米を、政府が抱えこみ、

供給を絞ることにより高値で売れることをあてにした。


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しかし、過剰状態にある世界のコメ市場からは在庫増の足元を見られ、

売却量は予定通りに進まなかった。

2年間で籾量にして 2,000万トンほどしか売れなかった。

2年間の収入代金は1,400億バーツにとどまった。




政府は、事あるごとに、中国をはじめとした外国政府との

「G to G」の大量契約がまとまったと言ってきたが、

いずれも証拠がなく、出荷の記録も欠く。

「国家反腐敗委員会」(NACC」からは、ここにきて

虚偽の報告ではないかと関係大臣たちが追及されている。




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結果、6,300億バーツの支払い超過となり、

,000億バーツの基金が払底してしまったわけだ。




このあたりの読みの甘さは、政策運営が綿密に行なわれなかったためと見られる。

実際、前財務大臣のティラチャイ氏は、議会解散に追い込まれる前に、

キティラット副首相兼財務相はこの資金不足を予想できなかったのかと

批判している。


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コメ政策を取り仕切る政府の「国家コメ政策委員会」(NRPC)も

委員長のインラック首相はほとんど出席しなかったようだし、

実際、細かく推移を数字でつかみ、金繰りを見積もる

人間がいなかったのではないかとさえ疑われる。




この点に関し、「国家反腐敗委員会」(NACC)は、

インラック首相以下、職務怠慢から腐敗を招いたと疑い、

弾劾を含め現在調査を進めている。




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借金を多く抱える農民にとって、3ヶ月以上の代金の支払い遅れは

死活問題である。

折りから、選挙がやってくる。

政府はあらゆる手を使って、金策に走らなければならない。


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10月からスタートした2013/14年度(第3期目)のコメ抵当スキームでは、

一期米(10~2月収穫米)だけで、1,200万トン(籾量)、

,900億バーツほどの買い取り代金の支払いが見込まれる。




しかし、1月末までに1,000万トン近く(1,600億バーツほど)供出されたが、

支払われたのは、500億バーツ(300万トン)ほどに過ぎない。

,000億バーツ以上が政府から滞納され、

100万人近い農民は、3ヶ月ないしそれ以上現金が入ってこない状態だ。




これに対し、政府の農民に対する回答も実現されずに来ている。

直近の状況については、「その3」で・・・。





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by ucci-h | 2014-02-01 23:31 | タイの政治・経済・金融・為替 | Comments(2)
タイの農民にコメ代金が入ってこない!(その1)

いま、タイの多くの農民は、国に納めたコメに対する代金が

数ヶ月も払ってもらえず、困っている。

批判の多い、問題の多いタイ貢献党のコメ国家管理政策である

「コメ抵当スキーム」は破綻に近づいてきたように見える。


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(写真はいずれもバンコク・ポスト紙より)



このコメの国家管理プランが、インラック政権が成立した

2011年10月から発足して以来、その推移を追ってきたが、

予想通り、というか予想以上に、ネガティブな結果をもたらしてきた。




単にコメの流通や輸出低下という問題にとどまらず、

農民や関係ビジネスの債務の増加、さらに国の財政問題、

信用問題にまで火がつきそうなところへ近づいてきた。

折りから、選挙が予定されているが、へたをすると、

与党タイ貢献党の命取りにもなりそうな、大きな‘時限爆弾’となっている。




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前回(2013年10月16日)、新年度(2013年10月~2014年9月)入りし、

3年目に入ったコメ国家管理政策の損失縮小計画を見たが

(思い切り縮小することが出来なかった)、

それから、3ヶ月経て、この制度は、「国の代金未払い」という

問題に発展してしまった。



 「10月新年度入り、タイのコメ政策は変わったか 2013-10-16」

  http://uccih.exblog.jp/19830757/


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ここで、この制度のお金の流れをおさらいしておこう。

政府は秘密主義で、在庫量や販売量を公にしないので、

各種の機関からの推定数字によることになる。




過去2年度(2011年10月~2013年9月度)について見ると、

コメの買上げ量は(抵当制度と言っても、実質は国による高値買上げ制度)、

2年間で籾量にして4,300万トン(精米量で2,700万トン)ほどになる見られる。

籾を精米すると、6割強の量になる。




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籾量1トン当たり平均15,800バーツほどの高値(市場の4~5割増し)で

買い上げられたので、政府がコメの買上げに使ったお金は、この代金

,800億バーツ(2.1兆円)+倉庫その他の運営費用900億バーツ合わせ、

計7,700億バーツ(2.4兆円)という大金になった。




国の年間予算規模が2兆バーツ(6兆円)強の国で、予算規模の2割近くの

大金が年間投じられる。大盤振る舞いである。




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そして、「タイのおコメは世界が欲しがるほどだから、外国にも高値で売れる」と

いう、世界のコメの需給関係(慢性的な供給余剰が数年続いている)を

無視した前提で出発した。




そのため、政府が高値で買い上げたコメは、外国からも足元を見られ、

政府の倉庫に山積みとなって、処分に困る事態となってしまった。

政府の在庫量は、精米量で1,700万トンと言われるが、近く2,000万トンに

届くだろうと見られる。

輸出のほぼ2年分のコメが貯まってしまった。


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そして、当然、高値で外国へ売って、売却金を次の年の買取資金に当てるという

政府の思惑が狂ってくる。




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この制度の損失額は、どのくらいに上っているだろうか?

,300万トンほど(モミ量)買い上げて、半分近くの2,000万トンほど

(国内民間需要+政府による売却)が捌けたようだ。




しかし、市況の水準は低く、籾量トン当たり平均6,700バーツほど

(経費も含めた買取コスト平均17,900バーツの半分以下)ほどと推定されるので、

2年間の損失額は、7,700億バーツ(買取費用)―1,400億バーツ(売却収入)

=6,300億バーツほどとなる。これが実現損の水準だ。




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そして政府の在庫量が、籾量にして2,300万トン(精米量で1,400万トン)ほどは

あると見られるので、

この在庫分の評価は、将来の収入源としてプラスしてやらねばならない。




政府は、在庫を買い取り価格の額で評価したいので、在庫分2,300万トン(モミ量)

については、評価損を認めず、買取価格そのもの、つまり3,600億バーツほどの

価値があると見る。在庫評価込みの2年間の損失額は2,700億バーツ程度

(6,300億―3,600億バーツ)と示唆している。

実際、政府は「年間の損失額は1,000億バーツ程度に過ぎない」と言っている。




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しかし、売却は市場価格でしかできない。

政府間取引と言えども、中国でさえ、市場の倍近い価格で買ってはくれない。

コメの国際価格は、昨年1年で24%ほども下がっている。

かつて、5%精米で、ベトナム米よりトン当たり100ドル以上高かったタイ米も

ベトナム米のトン400ドル近くの価格に鞘寄せしてきてしまった。




さらに、倉庫に積まれた新米は、日に日に古米へと減価していく

(年間で20%減価すると言われる)。


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ひいき目に見ても、在庫の価額は2年を経た減価も加味すると、

精米ベースで1,700万トン(1,400万トン+過去の余剰分)在庫があるとしても、

トン当たり、減価も考慮すれば、平均10,000バーツで売れればよい状況だから、

市場価格で見た現在の在庫価額は、1,700億バーツ程度だろう。

政府の見るコスト評価による3,600億バーツの半分程度になる。




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この評価額も、世界のコメ市場に大変化が起こらない限り、

年を経つほど低下していく。政府はもはや大きな損を覚悟で、

売却を急がなければならない状況となってきた。




従って、過去2年間の損失額は、在庫評価を踏まえても、

,300億バーツ(実現損)―1,700億バーツ(在庫評価額)

=4,600億バーツといった規模になっているだろう。




この先、世界のコメ余剰が続き、高いタイの古米がなお売れないとすると、

損失額は、なお拡大していく。




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コメ代金が払えなくなったのは、損益の問題ではなく、

金繰りの問題である。




政府の、農民へのコメ代金未払いの顛末については次回に。





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by ucci-h | 2014-01-28 00:30 | タイの政治・経済・金融・為替 | Comments(0)
行き詰まってきたコメ抵当スキーム(4/完):どうなるか10月新年度からのコメ買取制度?
2013年6月18日の「NRPC」(国家コメ政策委員会)の
緊急会合で決まった、負担を減らすための、政府買取価格の
引き下げ案は、農民の反対を受けて、実施開始日の7月1日に
なって引き下げず、普通米は籾量トン15000バーツのままで
当面、9月15日まで維持することに覆った。

政府の迷走ぶりは、国の信用を損なうものだとの批判が出ているが、
政府は、「今年度いっぱい(つまり9月15日まで)15000バーツで買い取る
金はある」と変更の理由を説明している。

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タイにおける農業従事者の人口は、昔より減ってきたが、
それでも1450万人いる。
選挙の際の票田としては、タイ全体のおよそ37~38%が
農村票ということになろう。

米どころの北タイ、イサン(東北タイ)を地盤とする
タイ貢献党としては、何よりも農民の反発が怖いはずである。

コメ抵当スキームの大幅赤字により「赤字の拡大は政府の
信頼を損なう」と野党民主党などから批判されるより、
このスキームを大きく縮小して、農民から「政策修正は政府の信頼を損なう」と
言われる方が嫌なはずである。

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そして、2013年10月から始まる新年度において、
コメ抵当スキームの買取価格、買取量をどうするかということが
7月末にかけて議論され、決定されていく。

農民側は、トン13500バーツを譲歩線として主張している。
これに対し政府の方は、12000バーツ、1世帯40万バーツ上限を
目指している。財政負担の大きさを訴えていく。

どの点で妥協され、農民票の離散を防げるのか?
また、増加した政府在庫をどうさばいていくのか、
今後の農政の行方が注目される。
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by ucci-h | 2013-07-29 10:05 | 一次産品の市況 | Comments(2)
行き詰まってきたコメ抵当スキーム(3):政府にも見直し機運
タイ政府のコメ抵当スキームがのっぴきならないところへ
やってきたことをお伝えしたが、ここにきてさすがに政府の方からも
見直し機運が出てきた。しかしその顛末は?

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2013年6月13日、ブーンソン商務相の記者会見の6日後の
「NRPC」(国家コメ政策委員会)で、彼ははじめて、
タイ農民協会からの示唆として、コメ抵当(買取)価格の引き下げを
ほのめかした。

この会合でも損失額は確定できなかったが。
名目的ながら委員長であるインラック首相はこの日、出席しなかった。

「2年間の損失は3000億バーツを超えよう」という
財務省債務:費用小委員会の数字がショックを与えた感じだ。

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ちなみに、このコメ抵当スキームは、ただ量さえあれば、
その分、政府が高値で買い取ってくれるというスキームだから、
政府の損失(納税者の負担)は、農民への‘補助金’と見ればいいが
(ただし、まるまる農民にいかず、業者や役人に流れやすい仕組み
となっており、汚職の源泉とも批判される)、タイの米作の質も
損なうことが懸念される。

質の高いコメも低いコメも一緒に倉庫に入れられる。
タイのコメの生産量は、世界のコメが過剰がちにもかかわらず、
この政策のために何割か増えているはずだ。
みかん、ランプータン、ドリアンなどの果樹園さえ早期収穫米に
変えられているという。

一方、有機米など手間のかかるコメ作りは敬遠され、品質の改良も
措いて行かれる。
タイのコメの国際的信用も損なうとも懸念される。

@@@@@

在庫増の問題は、政府にとっても頭の痛い問題だ。
「在庫期間が長くなるので、燻蒸消毒が繰り返され(通常は半年に1回だそうだが)、
在庫米の色はくすみ、かび臭いにおいを放つので、スーパーのブランド米に
入れて売られている」と言ったうわさが立つほどだ。
政府はもちろん否定している。

こういった中で6月16日(日)に行なわれたバンコクのドンムアンの補欠選挙では、
民主党のタンクン候補が、タイ貢献党のユラヌント候補を破り、与党タクシン派の地盤を
37年ぶりに野党民主党が取ったりしている。
コメ抵当スキームへの懸念も与党への批判票になったと言われる。
また、世論調査でも、このコメ抵当スキームの顛末で政府は信用を失ったのだから、
インラック首相は辞任すべきだとの声が30%あった。

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@@@@@

その5日後、6月18日のNRPC緊急会合で、
コメ買取価格の引き下げが提案された。
今のトン15000バーツ(普通米)を13500~12000バーツに下げる
方向で検討されたが、この日は結局2割カットの12000バーツと決まった。
同時に無制限だった買取り量も、1戸当たり50万バーツと制限が入った
(普通米で40トンほどとなる)。
今期の2期米を対象に、早速6月30日から施行されることになった。

これにより、年間2500~2600万トンに増えてきた供出米を、
1400~1500万トンに4割がた減らして絞る、
また買上げ価格も低くし、政府の負担を減らす方向だ。
量と価格合わせて、買い取り価額の負担を半減させたいことになる。

@@@@@

政府は、「世界のコメ市場の変化により、変えざるを得なくなった」、
また、「財政の規律を保つために必要な措置だ」と説明しているが、
世界のコメ市場でコメがだぶつき気味なのは、政策導入以前からで変わらない。

「FAO」(食糧農業機構)の今年4月の見通しでも、
今年の世界のコメ生産高(籾量)は2.1%増の7億4670万トン
(精米ベースで4億9770万トン)。増加分だけでも1600万トンに達する。
輸出国は増産し、輸入国は自給努力を進める。
コメの国際相場は、なお軟調である。

「世界最大のコメ輸出国タイが在庫を貯めて輸出を渋れば、
タイ米は高く売れるだろう」といった市場経済を無視した政策が
破綻したにすぎない。

@@@@@

農民は、もちろん大反対だ。
「今までのトン12000バーツと言っても、含水分が多いと15%がた引かれるなど、
実際は9000~9500バーツしか得られていない」、
「それを引き下げるとなると、農家のコスト8000バーツくらいから利益が出なくなる」と
反対している。

さらにこのやっかいなコメ抵当スキームは、問題の種に尽きない。
「今年度産のコメのうち260万トンが倉庫から消えた」とか(真偽不明)、
汚職の種にされやすく、品質低下懸念も含め、コメ倉庫の検査の手間が
多くなる。

タイ米(5%砕精米)の直近の輸出価格はトン532ドル。
インド米は445ドル。ベトナム米は370ドル。
輸入国が自給努力を進める中で、どこの国が高めのタイ米を
買ってくれるのだろうか。

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@@@@@

いろいろな問題を抱えながらも、政府はこの目玉政策を
やめられない。
かろうじて、価格・買取量の制限で、負担を減らし、
凌いでいこうという状況だ。

と思っていたら、決めたことがまた覆ることになる。

(続く)
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by ucci-h | 2013-07-24 23:27 | 一次産品の市況 | Comments(0)
行き詰ってきたコメ抵当スキーム(2):「損失額が膨れる!」
前回、タイのコメ抵当スキームの損失額が明らかにならず、
2013年6月7日の商務相の会見でもわからずじまいで
国内に失望が広がったことまでお伝えした。

 「行き詰ってきたコメ抵当スキーム(1):損失額が出てこない 2013-6-25」
  http://uccih.exblog.jp/19049943/

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財務省小委員会から出てきた数字を前回紹介したが、
ここまで明らかになったコメ抵当スキームの各期ごとの
数字を整理しておこう(筆者の推定含む)。

        買取数量  買取費用 売却推定額 在庫評価額 損失推定額
       (籾量・万トン)(億バーツ)(億バーツ) (億バーツ) (億バーツ)
2011/12年度 
1期米      690     1070    342     298     430     
2期米     1470     2290    249    1102     939
 計      2160     3360    591    1400     1369
2012/13年度
1期米    1700     2780    609     1331     840           
2期米(予)  700     1120    400      320     400                     
 計(予)   2400    3900    1009    1651     1240

今年度の1期米まで3期で、支出額(買取費用)は、1年半で6140億バーツ
(1兆8420億円)と、政府の設けた5000億バーツの資金プールを
上回っている。5月末まで(2期米の一部を含む)だと、6600億バーツ
(2兆円)の支出となっていると見られる。2年間で7千億バーツ以上か。

これに対し、政府在庫からの売却額は(これが明確に把握されていないが)、
ここまで、せいぜい1000億~1200億バーツほどかと推定される。
つまり、籾量ですでに1年半で4000万トン近い供出米を買い上げたが、
売却できたのは、700~1000万トン程度だろうと見られる。

1年半で、差し引き4940億(6140億マイナス1200億)バーツほどの支出超となろう。
このままだと、2年間では、収入と支出の差は5660億バーツほどに膨れそうだ。
もっとも、これは2年間で1300万トンほどしか売れなかった場合の
支出超過額であり(この可能性は高いが)、売れ残ったコメの時価を評価すれば、
政府の言うように、赤字額は縮まる。

仮に2年間で買い上げたコメ推定4560万トン全部を政府がさばけたとしても、
現下の世界のコメ市況を見れば、高値では売れないから、
1800億~2200億バーツの損失(籾量トン当たり4000~5000バーツの売却損)
となろう。

この程度で済めばいいが、財務省小委員会の数字に見られるように、
損失推定額は、初年度だけで1369億バーツ(これは後に政府も認めることになる)、
1年半で2209億バーツ、2年だと2600億バーツの損失には少なくとも膨れそうだ。

それは、買取りに検査料、倉庫料、金利などの費用がかかるだけでなく、
在庫が長くなると、米は古米となり、年間10~15%ずつ減価していくからだ。
米はゴールドではないから、在庫減価の問題が、売れなければ売れないほど
のしかかってくる。
極端な場合、政府買上米の3割程度が、家畜のえさ程度に減価したとすれば
(大量のコメの在庫は管理に難しい面がある)、
2年間の損失額は3000億バーツには達しよう。

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@@@@@

2年間で4500万トンほど(籾量)のコメを買い取って、
少なくとも2600億バーツ(7800億円)ほどの損失と見込まれるが、
繰り返すが、この程度で済めばいいかもしれない。

というのは、政府米の売却が思ったほど進んでいないからだ。
5月末現在の在庫量は、1700万トン以上と政府は言うが(詳細は言わない)、
買取り量から売却推定量を引くと、2千万トン以上あるかもしれない。

6月12日には、財務省小委員会の計算だと、2年間の損失額は
3000億バーツ(9000億円)を超えるだろうと言うショッキングな
見通しも出てきて、いよいよ政府はコメ抵当スキームを
見直さざるを得なくなった。

識者からは、「もはやコメ抵当スキームは、“はすの葉で覆い隠せない
死臭を放つ象”になった」と言われるまでになった。

次回は、ここにきて政府の取った対応策を紹介しよう。
(続く)
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by ucci-h | 2013-07-01 18:53 | 一次産品の市況 | Comments(0)
行き詰ってきたコメ抵当スキーム(1):「損失額が出てこない!」
タイ貢献党政権の目玉、コメ国家管理補助金制度と言える
「コメ抵当スキーム」が、2年目半ばの2013年6月に入り、
いよいよ行き詰まりを見せてきた。

 「タイのコメ国家管理スキームの負担いよいよ重くなる 2013-4-7」
  http://uccih.exblog.jp/18493360/

このままだと、タイのコメの競争力喪失にとどまらず、
インラック政権の命取り、またタイの国債の格付けにも影響しかねないので、
政府も現状を見直さざるを得ない状況となってきた。

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(写真は、いずれもバンコク・ポスト紙より)

きっかけは、格付け機関ムーディーズが、2013年6月3日、
「コメ抵当スキームの初年度の損失は、政府予想の700~1000億バーツ
(2000~3000億円)を上回り、2000億バーツ(6000億円)を超えるだろう
と言われるが、こういった政府赤字の拡大は、現在のタイの格付け
Baa1に悪影響を与えるかも知れない」と警告したことだ。

政府はただちに、「このうわさは根拠が薄い。初年度に買い取った米は
全部売り切っていないし、2000億バーツを超えることはない」。
「リークされた2600億バーツとか言われる膨大な損失額は、過去10年
コメだけでなく、ゴムやカッサバなどへの補助金も含めた数字だろう」と
否定したが、担当のブーンソン商務大臣は、4日後の6月7日に記者会見を
開き、数字をはっきりさせるということになった。

@@@@@

実は、リークされたと言う、正確には2208億バーツ(6600億円)という
損失額は、財務省の債務・支出小委員会がまとめたものだった。
2011/12年度の1期米(雨季米)は、430億バーツの損失、
2期米(乾季米)で939億バーツの赤字、
2012/13年度の1期米の赤字が840億バーツ、
計2210億バーツの損失に上るというものだった。

このコメ抵当スキームの運営は商務省だが、国有の「BAAC」(農業農協銀行)の
融資が補助金制度のキーになっており、財務省も当然チェックしている。

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ところが、6月7日に開かれたブーンソン商務相の記者会見は、
期待に反し、失望させるものとなってしまった。
商務相は、数字を出せなかったのである。

「損失額については、供出されたコメの売却も済んでいないし、
損失額の確定には、少なくともあと2年はわからない」と逃げてしまい、
「買い取った米のうち、700万トンは売却し、すでに1200億バーツは、
BAACに返済した」と言うばかりであった。

政府在庫米の売却についても、具体的な詳細はなく、
買い手も、数量内訳も、価格も不明であり、説得力に欠いた。

この政府の対応に対しては、さすがに批判が沸き起こった。
「これでは、政府の信用を失墜させる」、
「秘密主義を捨てて、四半期ごとに在庫状態を納税者に知らせるべきではないか」と
いった声が上がった。

仮に2000億バーツの損失として、タイの直接税納税者500万人は、
一人当たり4万バーツ(12万円)もの負担を負っていることになるからだ。

ブーンソン商務相自身も、昨年11月には、「中国との間で1500万トンの
国家間売買契約がなった」と虚偽の発表をし、信用を損ねていた。
インラック首相は、ブーンソンに代えて、内閣官房のパラテップ大臣に
今後数字の取りまとめ役をさせるということになった。

@@@@@

すでに、初年度(2011年10月~2012年9月)が終了してもう9ヶ月になるのに、
政府からは、コメ抵当スキームの実績、投入額、損失額が明らかにされない。

担当相がしっかりつかんでいないからか、それとも出せないような損失額に
膨れてしまったからか、その他の問題も多いコメ抵当スキームは、
へたをすると、インラック政権の命取りとなりかねない。

この話は、さらに展開していく。
(続く)
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by ucci-h | 2013-06-25 00:00 | 一次産品の市況 | Comments(0)
厳しくなるか、タイのコメ国家管理スキーム?(2)今年度のゆくえ
昨年度、大きな財政負担となったタイのコメ抵当スキームだが、
さて、今年度はどうなるのだろうか?

今年度(2012年10月~2013年9月)タイでは、
このスキーム目当ての増産が加わり、生産量(籾量)は1次米が2300万トン、
2次米が1100万トン、前年度比7%増の計3400万トンと見込まれた。
幸いと言うか、乾季の旱魃で2次米は700万トンほどに下がりそうなので、
年間の生産高は、3000万トン強にとどまりそうである。

抵当に出てこない自家用・市場直売のコメ1000万トン近くを除けば、
今年度も2000万トンほどが抵当に供されるだろう。
抵当価格は変わらないので、トン当たり平均15600バーツとして、
今年度も3120億バーツほどの買上げ代金が動くだろう。

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1次米が何割か加わった3月末現在の政府在庫は、
籾量で1800万トンほどと業者は見ている。
これに今後2次米などが新たに倉庫に入ってくると、
年内には、売却量によるが、2000万トン台に乗ってこよう。
物理的な倉庫の容量の問題もあるが、コメ在庫は、
時間が経てば古米としてしか売れなくなる。

現在1570億バーツほど(売却見込み価額)と評価できる
1800万トンの政府コメ在庫。
買値2810億バーツを引けば、現在1240億バーツほどの
見込み損を抱えていることになる。

国連FAO(食糧農業機構)によれば、
タイの2013年末の在庫は精米で1820万トン(籾ベースで
2900万トン)になろうと見込まれている。
売却も進もうから、そこまで膨れないにしても、
損を抑えるのは、時間との勝負になる。

ブーンソン商務大臣は、4~5月とアフリカの輸入国に飛び、
タイ米を購入してもらうよう‘政府営業’を行なうという。
今やアフリカ諸国がタイ米のトップのお客様だ。

資金の供給を担当する国有銀行「農業農協銀行」(BAAC)の
資金繰りも、高値で買ったコメが売れないと、巨額なだけに
国有銀行といえども、資金繰りに苦しくなる。
同じ国有銀行の「政府貯蓄銀行」(GSB)から資金援助をしてもらおうかと
いう計画も出ている。

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損を抑えるために、商務省からも、今年2月、
現行の抵当価格トン15000バーツ(普通米)を
市場価格に近い13000から14000バーツに下げ、
納入量も無制限でなく1農家25トンに制限しようと言う
‘現実的抑制案’が出たが、一度実施された甘い案は抑制できない。
たちまち農民の「次の選挙で投票しないぞ」という反対にあってつぶされた。

毎年、補助金に当たる大きな損失が出るコメ抵当スキーム。
いつまで続けられるのだろうか?
タイ貢献党政府は、止めたときの農民票の反動が怖いだろう。
しかし今のままでは、毎年1400億バーツ(4200億円)を超える
損失が国家財政を食っていく。

タイの公的債務残高のGDP比の上限は60%とされている。
そして50%に行ったら注意ゾーンとされ、国債の格付けにも
影響が及ぶとされる。
2年前までタイの公的債務のGDP比は、40%少しで問題なかった。
そこに、タイ貢献党政権のポピュリスト政策、なかでもコメ抵当スキームが
やってきた。
さらに、今後2兆バーツを投じるインフラ建設計画がこのあとやってくる。

2013年1月末のタイの公的債務GDP比は、44%。
タイのGDPは、2012年推計で11.47兆バーツ(3800億ドル)。
5兆バーツほどの公的債務残高がある。
50%まであと7千億バーツほどだ(もちろん、その間にGDPの増加もあろうが)。
コメ抵当スキームの損失だけで、毎年GDPの1.2%分を増やしていく
計算になる。

問題の多いこのスキーム。
うまく収拾できるのだろうか?
へたをすると現政権の命取りになるだけでなく、
タイ財政のダウングレードにつながる。
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by ucci-h | 2013-04-08 11:42 | 一次産品の市況 | Comments(0)
厳しくなるか、タイのコメ国家管理スキーム?(1)昨年度の実績
タイの批判の多い「コメ抵当スキーム」の去就は、
早ければ、今の乾季米(2次収穫米)の収穫が終わり、
さらに政府の倉庫が新しいコメで一杯になるこの
8~9月頃に定まるかも知れない。
続けられるのか、続けられないのかが。

2011-12年度に始まったインラック政権のコメ抵当スキームは、
2012-13年度の2年目の今、政府の思惑がはずれ、
厳しい状況に追い込まれている。

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初年度は、1次(690万トン)、2次(1470万トン)米合わせ、
籾量にして2160万トンほど(当初の1800万トンから2次米分がその後増えた)の
コメを政府は買い上げた(平均価格トン15600バーツほどか)。
買上げ代金として、3360億バーツ(約1兆円)の巨費だ。
この他に、運営のための経費や輸送・倉庫代なども
年間400億バーツほどかかったから、
3760億バーツというタイの歳出規模2.7兆バーツの14%近い
税金が投じられたことになる。

この買い上げたコメが、当初の思惑通り、高い値段で捌ければ、
国有銀行の負担も、財政の負担も緩和される。
しかし、世界のコメ需給の緩和の中、高いタイのコメは、
世界で売れなくなった。2012年の輸出は、前年から大きく落ち込み、
673万トン(精米基準)にとどまった。
前年の1060万トンから37%落ち込み、長く続けたコメ世界輸出国トップの
地位から、インド、ベトナムに続く3位に転落した。

コメのいわば国家管理だから、輸出も政府が中心となる。
外国政府との取引(GtoG)で売ると言ったコメ輸出も、商務省によれば、
2012年は精米にして400万トンほどにとどまった。
2160万トン(籾量)受け入れたコメは、
民間業者へも入札などでさばいたが、高価格が災いし、300万トンほどしか
はけなかった。

結局、籾量にして2160万トン(タイ全生産量3180万トンの68%)のコメを
政府は買い上げたが(残りは主に自家消費)、
籾量で1150万トンほど(精米量で700万トンほど)しか捌けず、
昨年度納入された新米の半分近くの1100万トンは、
政府のコメ倉庫(借り上げ倉庫も含め)にお蔵入りとなった。

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収支面を見ると、3760億バーツを使ってコメを市場の6割高で買上げ、
市場仕入れ価格に近い平均籾量トン当たり8700バーツほど
(政府にとってはコスト割れ)で捌いたとすると、政府には初年度、
1000億バーツほどの収入があったと推計される(商務省は972億ドルと発表)。

売却分1150万トンだけについてみると、トン当たり15600バーツほどで買上げ、
8700バーツほどで売った(今の米余り市場ではこれぐらいでなければ売れなかった)。
トン当たり7000バーツほどが政府の損というか補助金部分になる。
前年度は、売却した分だけで、800億バーツほどの補助金となった。

政府の損失は、この実現した売却分だけに限らない。
1100万トンが隠れ損失として、倉庫に眠った。
今後、天変地異があって、世界のコメ市場が急騰すれば、損は減るが、
世界のコメ市場は、タイに世界の年間取引量の半分近くになる在庫が
あることを知っているので、何もなければ、相場圧迫要因として続く。

今年度の見通しは、次回に。
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by ucci-h | 2013-04-08 11:29 | 一次産品の市況 | Comments(0)
  

北タイのチェンマイをベースにメコン、アセアンの経済、見所、食べ物を日本と比較して紹介します。ただし投資をアドバイスするものではありません。コメント記入は題字をクリック下さい。
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