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少しずつ見えてきたタイの労賃大幅引き上げの影響
アジアの製造基地タイは、賃金が大幅に引きあがり、
2015年のアセアン市場統一を控え、ベトナムやインドネシア、
さらには今後のミャンマーの追撃もあり、今、分岐点に差し掛かっている。

その中でいつも話題になるのは、労働生産性の伸び悩みである。
2010年までの10年間で、GDPは53%伸びたのに、労働生産性の
伸びは27%と、経済の伸びの半分の伸びだった。

タイ貢献党の政策により、賃金が今年、来年と大きく引きあがるので、
生産性のアップがいっそう必要になる。

最低賃金は、今年の4月より、バンコクなど7県で一日300バーツに引きあがり、
学卒新入社員の月給は、官庁中心に15,000バーツ以上となった。

それから4~5ヶ月経ち、現在の状況が少しずつ見えてきた。

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大幅賃上げにもかかわらずインフレは落ち着いており、経済も成長しているので、
政府は、「心配されていたインフレ、経済への悪影響は杞憂だ」と
言っているが、昨年の洪水後の成長率としては、第2四半期の前期比年率4.2%
の伸びは高くないし、インフレは世界の景気後退で沈静しているだけだ。

さらに、最低賃金300バーツについては、
十分企業が導入していないと労働側からはクレームが多い。
4月以降3ヶ月強で、5134件の苦情が、苦情センターに寄せられているという。
確かに、中小企業にとっては、一挙40%の最低賃金引き上げは死活問題であり、
福利厚生負担部分を削ったりしながら、
実質的インパクトが小さくなるようやりくりしている。

言い方は語弊があるかもしれないが、
企業努力で賃上げのインパクトは抑えられている。
もっとも、正念場はこれからだ。
残る70県の来年1月からの最低賃金の引き上げ率は、
今年4月の高賃金地域の40%増に比べ、平均70%アップとなるから、
浸透しだいでは物価に跳ね返っていく。

学卒月給15,000バーツにしても、民間企業はまだ受け入れに躊躇しているようだ。
タイの失業率は、5月で0.9%と低いが、
失業者の数自体は、1年前の20.4万人から35.9万人へと1年間で76%も増加している。
失業者35.9万人のうち、42%を占める15.2万人がいまだ職に就けない学卒だった。
前年の7.5万人から倍増している。

高賃金の学卒は、企業から敬遠されているようだ。
学卒は、高賃金を保証してくれる官庁への職に向かっている。
官庁の学卒が最低月15,000バーツで浸透すれば、
企業も競争上、今後払っていかなければならないだろう。

現政権の賃金大幅引き上げ策は、中進国たらんとする
タイの一種のばくちかもしれない。
低い賃金水準を引き上げることによって、労働集約型産業からの
脱皮を図り、さらにはこれによっていやでも労働生産性を高めなくては
ならないということになる。

しかし、結果うまくいくかの保証はない。
へたをすると、自国企業を含め、企業に少しずつ近隣の
ベトナムやカンボジア、さらにはミャンマーに逃げられてしまう。
もちろん、賃金水準は、工場立地の条件の一つに過ぎず、
タイのインフラ、法制含め優位性はなお高いが・・。

労働生産性を上げるには、
企業にもっと最新鋭の機械を入れさせるようにすべきとか、
企業と職業学校のタイアップで、働くのに必要な技術や手法を
もっと学ばせ、学生の就職時のミスマッチを減らすべきとかの
アイデアが聞こえる。

それはそれなりの効果はあるだろうが、
タイに暮らしていてタイ人を見ていると、
もっと根本的なところを変えないと生産性アップには
つながらないように見える。

つまり、働くときの基本姿勢をまずはきっちり確立させるべきだろう。

・約束は守る
・時間もなるべく守る
・きちんと連絡はする
・身の回りはきちんと片付ける
・上司じゃなくて、お客のために働く
・客に対するサービス精神を出す
・どんな作業もなぜそうするのかを問う習慣をつける

など、など、基本的な働く姿勢を作らないと、
機械より人件費のほうがよほど安いこの暑い国で、
生産性の上昇などは、単に結果の統計数字を見るに
過ぎないままで行くだろう。
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by ucci-h | 2012-09-18 12:02 | アジア諸国の賃金 | Comments(4)
お隣のマレーシアでも最低賃金導入へ
最低賃金が大幅に引き上げられつつあるタイランドの
インドシナ半島の南に隣接するマレーシア、シンガポールには、
これまで最低賃金制度がなかった
(マレーシアには、プランテーション労働者に対しては
月350~700リンギの規定はあったが)。
1リンギ=10.1バーツ(約28円)。

そのマレーシアで、メーデーの前夜、ナジブ首相により、
初めて、全民間労働者を対象に最低賃金制度を導入する
発表があった。
この6月にも繰り上げて行なわれるかもしれない総選挙へ向けての
労働者へのプレゼントだそうである。

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半島部は、月900リンギ(25,000円ほど)、サバ、サラワクの島部は
月800リンギ(22,400円ほど)の予定だというから、
タイの新しい最低賃金一日300バーツ(月に直すと、22,000円ほどか)
より少しだけ上の水準となる。

労働側は、以前から要求していた1,200リンギを下回るものだと
批判しており、中小企業は、地方の賃金水準としては高すぎると
批判しているが、まずは順当な水準だろう。
なお、公務員は、新人でも900リンギ以上行っているから、必要ない。
民間労働者でも、家事労働者は対象から外される
(家政婦には外国人労働者が多いが・・)。

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人口2,800万人のマレーシアの労働力人口は1,100万人ほどだ。
被雇用者950万人ほどの3分の一に当たる320万人ほどは
貧困ラインの月800リンギに届かず、700リンギ以下なので、
今回の最低賃金設定の恩恵を受けると見られる。

実施期日は明らかにされていないが、早ければ、
今年の10月から導入されるようである。

アジア各国の賃金の底上げは続きそうだ。
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by ucci-h | 2012-05-08 17:35 | アセアンの動向 | Comments(0)
最低賃金の大幅引き上げも言われるほどの影響はない!?
4月1日から、タイのバンコクなど7県で最低賃金一日300バーツ
(+40%ほど)が適用された。
政府は、来年1月1日から他県でも一日300バーツ(平均+70%ほどになる)
を適用する方針を変えておらず、全国1日300バーツが普及する。

この労賃の急激な引き上げにより、企業の外国への移転、
また人員削減が懸念されている(少しはすでに起こりはじめているようだ)。

しかし、人材会社マンパワー社によれば、
影響は思ったより小さく、企業移転も懸念しすぎだと見られている。

理由は、企業立地の決定は、賃金水準だけでなく、
不動産コストや、原材料提供企業の存在、インフラ、市場の大きさ
などによってなされるからだと言う。

労働力についても、賃金水準だけでなく、
技術水準、また管理職の存在など、質的面が大きい。

従って、企業移転をするといっても、言うは易く、行なうは難しだと
マンパワー社は言う。
ちょうど、昨年の洪水の後も、企業移転が多く話されたが、
実際動いた企業はごくわずかだった。

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国外移転と言っても、ミャンマーとの国境のメーソットで
ミャンマー人を多く使っている縫製工場が、
国境の向こうのミヤワディ(ミャンマー)に工場を移したといった
ところだ。

労働集約的といわれるタイの食品産業も、
最低賃金の大幅引き上げにもかかわらず、がんばっている。
タイには、320の鶏肉加工工場、579の魚類加工工場、
640の果物野菜加工工場があり、12万人が働いている。

賃上げにより、食品の製品価格は、シーフードで+20%、
肉類、果物野菜加工品で+5-10%になると言われるが・・。
加工の自動化は進んでいるが、シーフードや果物野菜加工などの
選別工程や摘み出し工程は、やはり人間の手が必要だ。

タイの最低賃金の引き上げにより、賃金水準は
カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム4カ国平均の
倍以上になったが、シンガポールはこのタイの
また倍以上だ。

近隣の他国を見ても、確かにカンボジアは衣料産業にしか
最低賃金制はなく(月2700バーツ)、外資は多くの産業で
100%が認められるが、70年代半ばのポルポト政権下の
粛清のため、特に管理者層が不足していると言う。
また、これらの国々は、国の干渉、自由競争を阻む規制も多い。

それらに比べて、
タイは、やはり技術者、輸送関係者、IT技術者、エンジニアといった
技術を持った労働力の存在で上回っている。

タイでは今や350万人ものミャンマー人が働いていると
言われるが、多くが漁業や建設業の単純労働力が多い。
ミャンマーの開放の動きを見て、10数年ぶりに故国に帰り働こうかと
考え始めた30代のミャンマー人も多いが、今より良い条件が
ミャンマー国内で出てくるか、ここ2~3年は様子を見ていこうと慎重だ。

タイで毎日、漁業や立ち売りで働き、月8000バーツの収入でも、
ミャンマーの最低賃金は、この4月倍増したと言っても、
月3000バーツ(8千5百円)になったところだ。
タイとは3倍の開きがある。
ベトナムの最低賃金は、ミャンマーより高いが、
月5100バーツ(1万4千円ほど)だ。

これに対して、タイ人も、中東産油国などで実に40万人も
働いている。
その多くは、石油掘削の技術者や化学産業従事者など
技術職が重宝されている。

アセアン市場統合を2015年に控えて、
労働力の価格だけでなく、質が比較される時代になる。
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by ucci-h | 2012-04-29 10:03 | アジア諸国の賃金 | Comments(0)
4月1日最低賃金引き上げで、さっそくスト・労働争議勃発
4月1日より最低賃金一日300バーツが
中南部7県に導入されたが、この40%アップは、
低賃金に頼る建設業や漁業など労働集約産業にはきつく、
雇用主は、何とか実際の負担を緩和したいと、
他の面での人件費の節約を図ることになる。

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その結果・・・
さっそく、一部の工場でスト、労働争議が起きている。

南部ソンクラのパタナ・シーフード工場では、
800人近くのカンボジア人労働者が、4月8日から12日まで
ストを行なった。
このくらいの規模の輸出食品工場ともなると、外国人労働者に対しても
最低賃金引き上げを無視するわけにはいかないようだ。

賃金の引き上げの代わりに、会社は、無料だった食事代を
1日20バーツ徴収し、時間外ボーナス2週ごと400バーツを
月300バーツに削り、人件費上昇の緩和策を図ったので、
労働者の反発を買った。

カンボジア大使館の人材ブローカーを通しての圧力もあり、
会社は、ボーナスを復活させたと言う。

また、カンチャナブリのパイナップル缶製造のビタ・フード工場では、
数千人の労働者が、仕事を停め、緊張状態にあると言う。
ここはミャンマー人労働者が多いが、同じく、詳細は不明だが、
最低賃金の引き上げの代わりに、今までのフリンジ・ベネフィット、福利厚生の
削減が申し渡されているようだ。

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しかし、福利厚生の削減問題は、全体の一部かもしれない。
各地の労働裁判所(1980年に設立)には、多くの訴えが持ち込まれて
いるというが、多いのは、最低賃金の大幅引き上げに伴う
従業員の整理である。
この突然の首切りには、労働者も黙っていない。

労働裁判所は、これに対して、再雇用を要請するようだが、
それでは企業はやっていけない。
更に失業手当を増額して、採用資金を削って対応することになりそうである。
そうなると、何のための最低賃金の引き上げだから分からなくなる。
もともと手荒い政府の政策の副作用が大きく出てきそうだ。

急激な最低賃金の引き上げは、生き残りを図る会社と
ベネフィットの実質的恩恵を求める労働者の間に
対立を生み出している。
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by ucci-h | 2012-04-14 11:44 | アジア諸国の賃金 | Comments(2)
4月1日より最低賃金が実際4割上がったことの波紋
4月1日より、バンコク他中南部7県で、最低賃金日給300バーツが
実際導入されたことにより、いろいろ波紋が生じてきた。

タイには220万の法人があるが、その98%、215万社ほどは
従業員25人未満の中小企業(SME)である。
大企業では、最低賃金は多くクリアーしているが、中小企業となると
そうはいかない。

タイ商業会議所によると、この最低賃金一挙40%の引き上げによって、
10万社ほどが事業をたたむことになろうと見ている。
100社に5社ほどの割合だ。
ことに、守衛やメイドや建設労働者を多く使う、下請け業界は厳しいと見られる。

今回の最低賃金の大幅引き上げで何が起こるかと言えば、
多くが、雇用を減らすと見られる。現在の雇用数では、採算が取れないからだ。
タイ商業会議所は、政府に100億バーツの技術育成基金の創設を
懇願している。

しかし政府は、「バーツ高も、原油高もこなして来たじゃないか。なぜ
賃金アップだけ助けなくちゃいけないのだ。賃金上昇分は、外国に行くのでは
なくて、自分の会社の従業員に行くのだろう?消費の向上につながるものだ」と
言って、助ける気はない。

また、この4月からの最低賃金引き上げに合わせて、事業を閉めて、
他の地域に拠点を移動する企業も当然出ている
(他の地域も、国内である限り、来年1月には300バーツとなるのだが)。

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労働組合は、「昨年の洪水の被害を理由に(今回の7県は、洪水になった
中部平原に多い)、事業所を閉め、従業員を解雇して、他へ移ろうとするのは
間違ったやり方だ。本当の移転の理由が何か調べるべきだ」と
非難しているが、これはあたらない。

企業は、生き残りのために、立地を選ぶ権利があるのは当然だ。
むしろ非難するなら、質の向上を伴わない労働力の単価を強制的に上げて、
結果として雇用を厳しくした政府に向けられるべきであろう。
ことにこの3月末で、洪水に遭った労働者一人当たり月2000バーツの
支援金が終わったので、レイオフは、これを機に増えそうだと言う。

この賃金大幅引き上げ政策は、ことによると、タイの非熟練労働者に、
技術をつけさせ、タイを高技術労働者の国に変える手立てなのかもしれない。
「技術がなければ、300バーツ以上では雇えない」と企業が言うかも知れない。

しかし、多分そうはならないだろう。どこの国にも熟練技術者と、非熟練労働者はいる。
単純労働者が、「それなら技術を身につけなくちゃ!」と仮に思ったところで、
誰がやってくれるのだろうか?

企業はむしろ単価の高くなった単純労働者を切り、最低賃金を守らなくてもいい
外国人労働者に走るだろうし、
国は、労働者に技術を付与する構えがない。
この最低賃金引き上げで、単純労働者が切られることになろうと、
「TDRI」(タイ開発研究所)は、警告している。

他に何の手も打たないで、労働者の値札だけを一挙に4割(全国平均では7割)も
上げた政府。
これで国内消費が伸び、経済成長に寄与するなら、苦労はいらない。
このつけはどういう形で、ブーメランとして戻ってくるのだろうか?
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by ucci-h | 2012-04-08 18:29 | アジア諸国の賃金 | Comments(0)
学卒離れ、正社員離れが進む?タイ企業の雇用
「学卒初任給を月15000バーツに!」という
タイ貢献党の公約に触れたときは、最初びっくりした。
市場で決まる新入社員の給与をなんと政府が決めるのだから・・。

そして、まずは、公務員からの採用となった。
そして、「強制ではない」とか政府は言っていたが、
民間企業にも強制適用される。

もちろん企業によって違うが、まだ経験のない学卒の
初任給。市場では、9000~10000バーツがいいところだった。
それが一挙に6割近く上がる。
しかも新入社員だけではすまないだろう。
スタート台が高くなれば、会社は給与体系全体を引き上げて
いかねばなるまい。

そこで、企業の“学卒離れ”が始まった。当然の回避策である。
企業は、高い学卒はやめて、非正規社員を増やすことになる。
また大学出でも、学士は避けて、職業学校出やむしろ
修士を取ることになる。

タイの大学生の数は、質は別にして、近年増大しているから、
今では、毎年70~80万人の大学生が社会に出てくるのだろうか。

「若い社員の給与水準をあげてやろう」というタイ貢献党政権の意図は、
エンジニアや会計、医療と言ったプロフェッショナルな学部卒を除き、
「大学を出ても職がない。非正規社員として働くか、パンフレット配りの
アルバイトをやるしかない」といった状況をもたらすことになりかねない。

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最低賃金300バーツにも、大企業を除き、当然回避策を企業は考える。
採用を控え、外注や非正規雇用で凌ぐようになる。

若年労働者の雇用を推進する立場にある「ILO(国際労働機関)
東南アジア・オフィス」の人間は、このタイの賃金引上げ政策を酷評している。
「間違った政策であり、労働者の生活水準の向上にちっとも役に立たないだろう。
政治的な点数稼ぎでしかない」と、手厳しい。

タイの労働省は、4月からの最低賃金300バーツの実施に当たって、
「苦情処理センター」を設け、苦情を受け付け、遵守しない会社に対しては、
30日以内の改善の警告を与えると言う。
改まらない場合は、10万バーツまでの罰金及び、または6ヶ月以内の
禁固とするとしている。

政府は強気である。
「最低賃金の引き上げは、労働者を喜ばせるためのものではない。
賃金水準を上げて、シンガポールやマレーシアのように国内消費を
高めるためのものである。輸出依存から国内消費主導に切り替える必要がある。
最低賃金を払いたくない企業は、どんどん国外へ出て行けばいい」とまで言っている。

賃金引上げだけで、内需が拡大するなら、これほどたやすい経済成長策はない。
物価も同時に上がることを見ていないし、生産性の向上と言う必要条件も見ていない。

タイはこれを機会に、低賃金国から高賃金国に変身しようということになるのか。
その先に何が待っているのだろうか?
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by ucci-h | 2012-03-31 11:30 | アジア諸国の賃金 | Comments(4)
タイの学卒初任給、最低賃金引き上げの様々な余波
タイ貢献党政権の大幅賃金アップ政策が着々と
実施されている。

1月からは、公務員の学卒初任給が月15000バーツに上がった。
初任給と言えば、民間でもせいぜい10000~11000バーツ
だったから、一挙に40~50%のアップとなる。

民間はこの政策に縛られないとも言われるが、
公務員になれば15000バーツとなるわけだから、
民間企業は、これ以下では新卒を集めにくくなる。

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最低賃金の一日300バーツは、バンコクなど7県を皮切りに
4月1日より導入される。この地域での引き上げ率は40%ほどになる。
企業は、賃金水準によっても異なるが、平均12%ほど全体の
人件費が上昇すると見られている。
シャープでは20%アップと見ている。

これにより、人手不足がちなタイから、カンボジアやミャンマーへ
生産拠点を移す企業が増えると見られる。
タイの一日300バーツに対して、カンボジアは93バーツと3.2分の一、
ミャンマーは70バーツと4.3分の一になるからだ。
ベトナムも200バーツで、1.5分の一と見られる。

人件費の大幅上昇は、製造業よりも、人を多く使うサービス業への
影響が大きい。その典型がタイのホテル業だ。

このたび、タイのホテル業協会は、「ホテルの請求するサービス料は
賃金である」との声明を出した。もちろん、最低賃金引き上げの
インパクトを和らげるためである。
根拠としては、ホテル業者が社会保障保険料を払う際の、
収入基準にこのサービス料も含まれているからだということだ。

これに対して労働省は反対している。
2007年の最高裁の「サービス料は客からの収入で、賃金の一部ではない」
という裁定を基準にしている。

ホテルでは通常、サービス・チャージの4分の一ほどを取り、
残りを従業員で分けている(ゴルフ場のキャディー・フィーみたいだな)。
高級ホテルでは、全額従業員に分け与えている。

タイの賃金大幅引き上げ狂想曲は、今年から来年、
いろいろな音色を奏でることだろう。
タイ経済の発展の首を絞めることにならなければいいが・・。
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by ucci-h | 2012-03-30 18:01 | アジア諸国の賃金 | Comments(6)
市場停滞の中、最低賃金のさらなる引き上げで戦略転換を迫られる中国深圳の輸出企業群
香港に隣接する中国広東省シェンツェン(深圳)市。
30年前の一漁村は、今や1,500万人が住み、1兆元(12兆円)を
生産する、中国で上海、北京、広州市につぐ屈指の大都市である。

国内経済の引き締めと、それ以上に欧州、米国の景気低迷により、
輸出品の生産を主とするシェンツェン市の経済は、今落ち込んでいる。
中国の輸出の伸び率は、2010年の+30%から、2011年はほぼ+20%に、
そして2012年はさらに鈍化すると見られる。

需要の減退にあわせて、人民元の切り上げ(たとえば、昨年4月に1ユーロ=9.4元
だったのが、今では8.1元へと、9ヶ月で14%も元が高くなっている)、
さらに賃金抑制に対するストや争議が追い討ちをかけ、
ここにきて中国一高いシェンツェン市の最低賃金が引き上げられる。
シェンツェンの企業主は、泣きっ面に蜂である。

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中国の最低賃金引き上げが、タイを上回る勢いであることは、
1年前にお伝えした。
 「タイを追い越す中国の最低賃金引き上げ 2011年1月4日」
  http://uccih.exblog.jp/12631747/

深圳市は、中国でも上海、広州、北京をすら上回る中国一、
最低賃金の高い都市だが、2011年3月に月1,320元(15,840円)に
19.6%上がったが、2012年2月1日よりさらに13.6%上がって、
月1,500元(18,000円)になるという。5年倍増計画の一環だ。

給与ではない。最低賃金である。
タイで実現しそうな1日300バーツ(月換算で6,150バーツ、
16,000円)の最低賃金をもってしても追いつかないレベルになる。

広東省の副知事は、「珠江デルタ地帯の他の都市は、
景気低迷の時期なので、今年は最低賃金の引き上げは見送るのでは・・」
と言っているが、ズハイ(珠海)やフイズー(恵州)といった近隣都市でも、
13%ほどの引き上げを考えていると言われる。

インフレも高く、所得を増やし内需を盛り上げて行きたい政府としては、
労働者の賃金の底上げをしてやりたい意識が強いようだ。
一方で、2012年第1四半期の広東省の企業の受注は、
30%近く下がりそうだと省政府は見ている。

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泣きっ面に蜂の 深圳の企業だが、この難事が、中国の沿海都市の企業の
転換のきっかけになるかも知れない。
ここにきて、欧米の輸出市場を相手に低賃金で攻める戦略は
もはやあまり得策でなくなったことが判ってきた。

そうなると、戦略転換は、ふたつある。
ひとつは、高付加価値ないしは高性能製品に切り替えて、
高マージンの仕事をとってくること。
もうひとつは、輸出中心から、国内市場相手に舵を切り替えること。

“言うはたやすく行なうは難し”は、世の常だが、さっそくこういった
戦略転換に打って出ている中国企業が見られる(経済特区も30年。
中国企業の経営、技術も上がったのだろう)。

前者の例として、「シェンツェン・ロンジェン・テクノロジー社」がある。
ここまでLEDのスクリーンを作ってきたが、ここからは高性能医療機器
に打って出るという。注文の品数は少なくなるが、利益率の高さが
魅力だという。

後者の例として、「ワン・ルジア・ドレスメーカー社」がある。
ここまで欧米向けにウエディング・ドレス、パーティ・ドレスを作ってきたが、
すっかり需要が冷え込んだ。
そこで、国内の高所得者層をねらい、あつらえ服やビーズ飾りなどの
注文をとっていく。こちらのほうが、伸び率が高いと見る。

中国沿海の都市の企業はちょうど転換の時期に来ているのかもしれない。
企業の戦略の切り替えは、中国自体の経済の変化につながるのだろうか。
“輸出中心から内需へ”の変化に。
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by ucci-h | 2012-01-12 22:27 | 中国・韓国そしてインド | Comments(0)
最低賃金40%引き上げ(来年4月)は決まったが・・
決まったことと、それを守ることの間に
大きな開きがあるのが、自由の国、自己責任の国
タイランドの面白い面である。

たとえば、交通規則がその例だ。
車の窓に真っ黒いシートを貼って中が見えないようにする
のは、後続車にとってはその先が見えないから、タイでも
禁止されたが、多くの車が黒マスクだ。

運転中に携帯は禁止と決まっても、運転者はおかまいなしだ。
シートベルトを締めるかどうかも自己責任だ。
わずかに、バイクのヘルメットなしは時々取り締まられている。
社会主義国ベトナムはホーチミン市の99%着用とは大違いだ。

最低賃金の1~2年で40~89%の大幅引き上げが
中央賃金委員会から10月17日答申された。
先のインフレの心配さえしなければ、労働者側の勝利である。
日給の低い労働者はさぞ喜ぶかと思うとそうでもない様だ。

10月18日付のバンコク・ポスト紙に、ランプーンの工場
労働者の声が載っている。
34歳の女性労働者は、この300バーツの実現に悲観的だ。
彼女のマネージャーは、300バーツは支持できないと言う。
彼女は、週6日、現在はこの地域の最低賃金1日169バーツ
をもらって、月に4400バーツほどの収入を得ている。

彼女は、時間外労働その他の収入がないと、この収入
(約12000円)では、なかなか暮らしていけない。
「300バーツが出ればうれしいけど、私たちは会社が
出す給料をもらうしかないわ。組合はあるけど、バーゲニング・
パワーがないわ。300バーツに食費や交通費が入っていてもいいけれど・・」

この国では、最低賃金が決まっても、それを強制することは
難しい。大臣ですら「強制するものではない」と言っているくらいだ。

2010年のティスコ銀行による労働力調査によると、
高校未満の労働者の賃金は、地方によっては、最低賃金より
低いという。パヤオやシサケット(昨年の最低賃金は全国一低い
1日151~152バーツ)での彼らの日給は111~120バーツしか
行っていない。

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1998年の「労働保護法」では、「最低賃金を出さない経営者は、
6ヶ月以下の懲役、または10万バーツ以下の罰金、ないしはその両方」
と規定されているが、適用されたことはないようだ。

場所によっては、労働者自ら低い賃金でいいと申し出るので、
賃金の真実は闇の中のようである。
きちんと把握されている職場でも、食費、住宅手当、交通費も入れて
最低賃金とされているところもある。

タイにおける労働組合の力は強くないが、組織率もまた低い。
タイの労働組合連合によると、全国には40万社が登記されているが、
労働組合の数は1300ほどであるという。

組合を持つ労働者にしても、もし役所や組合が300バーツ
を適用するよう経営者に圧力をかけたら(そういうケースは
ほとんどないが)、彼らはレイオフされることを一番恐れている。

タイには、組合の結成を許す1975年に定められた「労働関係法」
はあるが、世界150カ国が批准している「ILO」(国際労働機関)の
87号(結社の自由と団結権の保護)と98号(団体交渉権の保護)を
タイは批准していない。

というわけで、労働力不足が言われる中で、タイでは労働力市場は
“買い手市場”のままだ。外国人労働力300万人の流入が、それを
保っているのかもしれない。

日給300バーツ(800円)の水準は、例え物価の安いタイでも
最低必要なレベルだろう。暮らしていてそう感じる。
しかし、1年で40%という急激な引き上げは、副作用が多すぎる。

賃金上昇によるインフレ高騰も心配だが、
ここ北タイのようなところの雇用機会が最低賃金の67~89%の
大幅引き上げでいっそう抑えられ、外国人労働者ばかりが増える
といった雇用のひずみが出ることが懸念されるが、
そこは自由の国タイランド、無理なく、落ち着くべきところに
落ち着くことになるのだろうか?
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by ucci-h | 2011-10-20 12:13 | アジア諸国の賃金 | Comments(0)
洪水がバンコクに迫る中、最低賃金答申案決まる
タイの半世紀に一度という大洪水で、工業団地の工場が
水没した多くの企業は、来年からと予想される最低賃金の引き上げを、
追い討ちをかけられる思いで見ていよう。

10月17日(月)の政府、使用者、労働者3者からなる
「中央賃金委員会」において、最低賃金は決定される予定だったが、
使用者側は、1万以上の工場(数十万人の労働者)に被害を及ぼした
今般の洪水から立ち直るために、新しい最低賃金の決定を6ヶ月間先に
してくれるよう、前日には要請していた。

ここまで、最低賃金の引き上げには2つの案が挙がっていた。

ひとつは、政府、労働者側からのもので、来年1月より、まず全国で40%
引き上げること。バンコク(現行215バーツ)など現在の水準の高い7つの県では、
これにより、1日300バーツに届く(バンコクは39.5%の引き上げ)。

届かないその他の地方は、2013年1月に再度引き上げて、300バーツに
届かせる。300バーツへは、53%~89%の引き上げとなるので、2回に分けるようだ。
最低の北部のパヤオ(現行159バーツ)などは、300バーツへは
89%の引き上げとなるので、1年目223バーツへ(+40%)、2年目
300バーツへ(+34.5%)となるようだ。

前回、2年で+40%、4年かけて全国が300バーツになる案が
有力と紹介したが、どうやら、労働側の圧力で、この期間は、1~2年に
縮められたようだ。
労働者側は、「洪水からの回復に労働者も力を入れるため」と言って、
来年1月からの全国一斉の300バーツを要求している。

使用者側の案が第2の案だが、これは4年かけて300バーツに
持って行こうという漸増案だが、政府・労働側に押されそうだ。

d0159325_18154471.jpg

そして、10月17日月曜日、ちょうど北からの洪水が、バンコクの北側にある
タイ最大のパトゥム・タニのナワ・ナコン工業団地を飲み込んだ日に、
中央賃金委員会の決定がされた。

政府・労働側の案の採用日を、来年1月から4月に3ヶ月伸ばして、
2011年4月より全国で+40%、2013年(月は示されず)からは
すべて300バーツにという案が採用された。
1日300バーツは、2015年いっぱいまで有効とするという。
この案が、インラックの閣議に送られる。

中小企業30万社の賃上げショックを緩和するために、財務大臣は、
現在の最低賃金と300バーツとの差額の1.5倍を減税(税額控除?)
の対象にするというが、そのインパクトはわからない。

タイ工業連盟では、洪水の被害の広がりから、なお実施時期を
伸ばすことを働きかけて行く。

使用者側からは、付加価値税を7%から3%に下げるとか、
企業の社会保障基金への納付額を減じるなどの要望が
出たようだが、政府からは聞いておくということにされたようだ。

タイ新政権の最低賃金引き上げは、漸増とはならず、1~2年の間に
40~89%の引き上げとなる。一時に40%というのは、大きな賃上げ率だ。
企業が全部背負い込むのか、国が税金でどの程度助けるのかまだ
はっきりしないが、洪水被害と合わせ、進出外資企業には負担と
感じられよう。
また、地域格差を無視した一律300バーツは、地方経済の
雇用機会をいっそう減らさないか心配される。

しかし、しかし、である。
そのまま数字のようなショックにはならないのが
タイランドである。
そのお話は、また別に。
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by ucci-h | 2011-10-19 18:17 | アジア諸国の賃金 | Comments(1)
  

北タイのチェンマイをベースにメコン、アセアンの経済、見所、食べ物を日本と比較して紹介します。ただし投資をアドバイスするものではありません。コメント記入は題字をクリック下さい。
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