バンコクから真西に200キロあまり、泰緬鉄道のカンチャナブリから同じくわずか
100キロ強のビルマの海岸の三角州に「ダウェイ」(旧名タヴォイ)という村がある。
かつては、タイとビルマがかわるがわる所有した地域だ。
農漁民が住み、街には信号が4つしかないといわれるのどかな村だ。
海岸線はきれいで、えびなどが取れるのだろう。
このダウェイが今、大きな注目を浴びている。
ミャンマーも20年ぶりに曲がりなりにも選挙を行なったり、アウンサン・スーチーを
釈放したり、わずかずつ国際社会に顔を向けるようになってきたが、
選挙の翌日、バンコクで、「イタリアン・タイ開発会社」(ITD)により、ここミャンマーの
当初80億ドルに上る「ダウェイ開発プロジェクト」が署名された。
総額は580億ドルを超えると見られる。
ダウェイの港湾は深く、30万トンクラスのタンカーが停泊できるので、
ここダウェイに一大工業地帯を開発しようというものだ。
モデルは、30年前の中国の深圳(シンセン)の経済特区だ。
この地に、発電所、石油化学工場、製鉄所など重工業を集積しようというもの。
タイではもう南部やバンコク東部のラヨーンで重工業の好立地がなくなってきている
という背景もある。住民の反対や、公害問題がうるさくなってきているからだ。
タイのメリットは大きい。ここからまず120キロ離れたカンチャナブリまで
国境を越えて5年以内に高速道路を引く。
ダウェイでの入荷物を数時間でバンコクまで供給できる。
今現在もタイはミャンマーからガスなどエネルギーを輸入している。
同時に、インド、中東方面へマラッカ海峡を回って輸出していたのが
一挙にアンダマン海へ出られることになるのが、タイにとってはとても大きい。

ビルマの海へ通じる道は、中国が狙っている。
インドもビルマとの関係を強め、中国へけん制したいところだ。
ミャンマーのタンシェ将軍の軍事政権相手といえども、タイは商機を逃したくないところだ。
ミャンマーの軍事政権側にも大きなメリットがある。
外国の資金で、一大経済特区を作ってもらえるからだ。
タイに50年遅れてしまったといわれるミャンマー経済の成長基点になる。
軍事政権国だから、追い払われる10万人の住民はかわいそうだが、
土地の買収騒動も、公害問題も何もない。
うまく進めば、今後20年~30年はかかるプロジェクトだろう。
先のことはわからないが、経済の発展がそのうち軍事政権の民間移管に
つながるかもしれない。
インドシナ半島を縦横に横切るアジア・ハイウエイの建設とあわせ、
ASEANは徐々に絡み合い、立体化してくる。
一方でダウェイ開発を優先することに対する反対もある。
環境破壊問題のほかに、現在タイの南端サトゥン(マレーシア国境近く)の
パック・バーラ港開発が置き去りにされるのではないかという心配だ。
ともに、中国とインドをつなぎ、インドシナ半島を横切るニーズがあるが、
ダウェイはバンコクに近いメリットが、パック・バーラは、南部タイの安定化に
つながるというメリットがある。
さて、今後どういった展開が待っているのだろうか。
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(追記)
20111年2月になって、経団連の代表団もバンコクを訪問し、
国際協力基金等の活用によるサポートの旨、表明している。
また、タイの代表的な商社で、契約もとのイタリアン・タイ開発と近い「ロクスレーLoxley」も、ダウェイ開発への投資の意向を示した。


