金額ベースでは、その年に大きなプロジェクトがあるかどうかによって変わるが、
ここ数年では、中国が年間純投資額で60億ドルを超えてトップだが(豪州も同等)、
インドが、昨年は減ったが、これに続き、
そのあとを、シンガポールとタイが20億ドル台で追っている。
ベトナム、インドネシアは、まだ10億ドルラインを上がってきていない。
リーマン・ショック後の不況により、09年、10年と日本からの海外直接投資は
全体では減少しているが、
アジア地域でタイとマレーシアだけは、昨年は1~9月だが、増加している。
受けるタイの方も、昨年は、前年からのラヨーン県マプタプット工業団地での
公害による開発凍結問題などの影響もあり、2,360億バーツと、前年比32%も減少したが
(件数は865件と10%増加)、
日本からの直接投資は、タイへの最大の投資国として、
件数で363件と36%伸び、金額でも1,044億バーツ(35億ドル)と35%伸びた。
4-5月のバンコクの騒乱にもかかわらず、日本からタイへの直接投資の伸びは高い。
アセアン諸国は、アセアン内の関税引き下げ・撤廃により、
お互いの工場誘致競争が激しくなっている。
主要国の中では、賃金レベルは、ベトナムが一番、2番にインドネシアが安いが
(中国とタイがいい勝負になってきた)、
社会主義国では、社会保障費の負担が高い。
ベトナムは、労賃の安さでは有利にあるが、
どうも最近の動きを見ていると、これだけでは有利でもなくなってきた。
生産拠点としては、投資税制、行政プロセス、インフラの整備、人材開発の程度
など、さらに工場の集積度などが、単なる賃金レベルより重要性を持つだろう。
ベトナムでは、08年には、ソニーが工場を閉鎖し輸入に切り替えたり、
昨年には、東芝がLCD工場をベトナムからインドネシアへ移すと表明、
最近では、フォードがフィエスタをタイから輸入に切り替えるとか、
ホンダがアコードの輸入を開始するなどのニュースが出て来ている。
ベトナムが、WTO(世界貿易機構)にはいり、関税を撤廃し、保護障壁を
取るということは、皮肉にも、隣国からの輸入を増加させ、貿易赤字を
さらに悪化させると言う副作用を伴うことになる。
ベトナムのFDI(外国からの直接投資)は、国内投資の25%ほどを
占めるだけに、FTA(自由貿易協定)が進む中での、危機にある
ベトナム政府の舵取りが注目される。