主要穀物の小麦は、6億4600万トンだから、コメは小麦の7割の生産量である。
小麦はヘクタール当たり2.91トン、コメは2.87トンの収穫だ。あまり変わらない。
小麦は、寒冷地も含め世界で生産されているが、コメはアジアの温暖地が中心だ。
ちなみに、欧州では小麦を主食とは言わないが、アジアではコメは主食である。
コメの最大生産国は中国とインドだが(日本は10位)、タイとベトナムの2カ国が世界の輸出量の51%を占める。
タイは、年間1000万トンを輸出する世界最大(シェア32%)のコメ輸出国である。
国内生産量の半分、日本の生産量(800万トン)を上回る量を輸出している。
コメは作れば、年に2度でも3度でも出来る土地が多いタイランドだが、ここでも、事情は違うが、日本と同じように、「米価」の問題がある。
日本の「ノー政」は、民主党政権になって「農業者戸別所得補償」と看板は架け替えたが、相変わらずの減反補助金政策で、米作の国際競争力強化などは眼中になく、人口の高齢化と共に安楽死を待っているようでやりきれない。
農水族、農協の組織維持に都合の良い米価の高価格のために、市民は税金と高い小売価格で2重の負担を負っているはずだが・・・。
タイの場合は、世界一のコメの輸出国だから、価格は国際価格といやでも連動する。国内価格のほうがいくらか安いが・・。
5%砕米のバンコクFOB価格は、金融危機によりその前の暴騰がはげたが、昨年半ばを底にやや回復、トン500ドルほどだ(ちなみに日本の米は、農民への受け渡し価格を、仮に1俵60キロ1万円としても、トン2000ドルの計算になる)。
タイ国内では、現在コメ農家は、民主党政権下の所得保障政策により、トン11000バーツ(約370ドル)で買い取ってもらえる。実際の農民の受け渡し市場相場(今8200バーツほど)の2週間毎の指標価格との差を受け取れる仕組みだ。
今現在は、トン2800バーツ(34%高分)を受け取れるわけだ。
この補助金政策は、本来30ライ(4.8ヘクタール)未満の小農家を対象にしたものだったが、地主が土地を分割したりして、対象農家は大きく増えている。
このため、政府は年650億バーツの補助金を支出している。
これは、コメ輸出額の38%にものぼる額である。
この政策の最大の欠点は、農家がコメ作りの技術革新、品質アップに精出さないことだ。
補助金政策よりも、政府は農家の競争力アップのために予算を使えとの正論があるが、
タイの労働力の半数近くを占める(少し古いが2000年時で49%、1800万人)農民の票を集めたいため、民主党は直に農民の手に金が行くこの補助金政策はやめられないようだ。
これに対するプア・タイ党の農業政策も似ている。
プア・タイ党は「コメ抵当システム」を再導入しようとしているが、これは政府が農民からコメを納めさせ(実際は民間の倉庫を使う)、これを担保に支払をするというものである。
今回の選挙に当たり、プア・タイ党は、コメの質にもよるが、トン15000バーツを払うとしている。
利点は、市場の3割がたの量のコメを吸収することによって、市場価格を安定させたり、引き上げることができ、政府在庫が市場へのバッファー役となれることだ。
悪い点は、このシステムにはつけこむ余地が大きいことだ。
精米業者は、ほかから持ってきたコメもまぜて、量を増やし、儲けを増やすことが出来る。
また、外国からの安いコメをまぜて、儲けられる。カンボジア産のコメはトン6000バーツほどだから、通商業者のつけいる余地が大きい。1日当たり千トンのコメが国境を越えて入ってくると言われる。カンボジアは900万トン生産し、400万トン輸出している。
また、政府は多くのコメを抱え込み(2004年には、政府保有米は、前年の180万トンから800万トンに急増した)、古くなったコメは安値で処分しなければならず、また倉庫代その他の維持費が年8億バーツもかかる。
いずれの政策も、農民票を得るために、農業の振興、国際競争力の維持、納税者の負担軽減を犠牲にしかねないものだ。
えっ、それでも、日本の農政よりはましかもしれないって???
世界的にコメ価格が上昇しているとききますが、一般にアジアの方が小麦主の欧州より人口密度が高いのできっと単位面積あたり収穫量が多いのだろうとおもっていました。同程度だとはじめてしりました。カロリーベースだとどうなのでしょうか。
タイの精米業者というとPRGが思い浮かびます。但し、流動性が無いのでなかなか買えません。PRGは更にインフレで農作物価格が上昇するならば急騰すると予想します。
補助金はその産業を滅ぼしますが、コメについては既に補助金漬けなので手の内ようがないというところですね。