今は君主制の国が少ない。
ピラミッドの王などで栄えたエジプトも、戦後、王制は廃止され、
共和国となった。
エチオピアも、1975年に最後の皇帝ハイレ・セラシエ1世が
廃位されている。
今や統治がひっくり返っている北アフリカのマグレブ圏では、
カサブランカのあるモロッコ王国が、立憲君主制を維持している。
ムハンマド6世はリベラルな方向で動いており、評判は良いが、
北アフリカで吹き荒れている改革の嵐がやってこないとも限らない。
サハラ以南では、もうひとつ王国がある。
南アフリカ共和国の東にあるスワジランド王国である。
この面積1万7千平方km(人口120万人)の岩山の多い小国は、
形は、立憲君主制だが、ほぼ絶対王政でやってきている。
首相も、国王が、王家の中から指名する。
こんな小さな国がなぜ、1968年に独立できたのだろうか。
南部アフリカを支配したズールー人に対抗し、強い軍隊を
もったからだろうか。
ここの王様は、独裁なので、モロッコの王様と違って、
あまり芳しい評判はきかない。
今年45歳になったムスワティ3世は、現在13人の妻をかかえ、
車や運転手をつけ、海外に買い物に行かせるなど、
贅沢三昧のようだ。
毎年、8月末から8日間ほど「リード・ダンス」という国家的お祭りを行なう。
リード、背の高い葦を持ち寄り国母に捧げるダンスを行なう。
そこには、全国から6~7万人の若い女性が呼び集められ、
上半身裸で、王様の前でダンスが行なわれる。10歳ほどの少女も
含まれるという。近年は世界中に知られるようになってきた。
王様は、ここで、第2の、第3の、いや第14の、第15の妻を選ぶという。
このお祭りは、若いスワジ人の男性にとっても、相手を見つける
良いチャンスのようだ。フェンス越しに声をかければいいという。
また、近くの川では、女性たちが夜明け方、裸で水浴びをするので
メイティングの場となるという。
まあ、そのあたりは、アフリカの習慣だからいいとしても、
問題は、この祭りに集まる女性を処女に限定していることだ
(真偽は不明だが)。
かつて、若い女性に5年間のセックス禁止令の出た国だ。
何が問題かと言うと、この祭りの処女性を大事にしてきたために、
メイティングでも、コンドームの使用が禁止されるという。
これにより、15歳から49歳までの女性の30%がHIV陽性だという
世界トップ級のこの国では、なかなかエイズの感染が収まるきっかけができない。
平均寿命は、49歳と言われる。
いっそう、王様がHIV感染しないと、減らないのかもしれない。
今年になって、この国でもさすがに王制打倒のデモが
起きはじめた。
インターネットの時代、いつまでも世界に取り残されている
わけには行かないだろう。