1ヶ月強が経ったが、ハネムーンの時期を過ぎて、
その評価が厳しいものになってきている。
その理由は、
①出てくる各政策がばらばらのバラマキ政策で、
統一の取れた国の統一的成長戦略としてまとめられていない。
②兄のタクシン元首相の影が明らかになってくるにつれ、
パペット的役割と見えてきてしまっている。
③自らの考え、意見を表明する機会が少ない。
というわけで、マスメディアからも厳しい批判が出始めた。
ここまでは、予想されたコースだから、
問題は、ここから手を打っていって、信頼度を上げていくことだ
ろうが、心配が落胆に変わらないようにがんばってもらいたい。
数々の公約経済政策は、意味の薄いものが多いが、
なかでも、10月7日からスタートする予定の
「コメ抵当システム」は、問題含みの政策である。
今まで、過去評判の悪かったこのシステムの再導入の
問題点をあげてきたが、ほとんど問題点に手は打たれず、
10月7日より(南部はそのあと来年2月より)スタートとなる。
数ある問題点のうち、最大の問題は、政府がコメを買い取り、
備蓄し、売りさばくことから、多くの腐敗、汚職の機会に恵まれることだ。
すでに、先を見越して、農民から先付け期日の契約書でコメを
手に入れ、退蔵している業者は、トン当たり5000バーツ
(トン10000バーツ弱で農民から前もって買い、政府の買い上げ価格
15000バーツで、政府に質入する)の
巨額の利益が転がり込んでくる。
政府はこの時点で、業者の在庫状況を提出させるようだが、手遅れだろう。
(写真はヌチャリー・レクルーン氏による)
10月7日以降、スキームがスタートしてからも数々の利益取りは
入り込んでくる。安い外国産米を紛れ込ませることは、すでに経験済みだ。
チェック係の役人には、‘お茶代’をあげればよい。
このシステムは、政府が民間の倉庫を借りて備蓄、管理するのだから
膨大な費用もかかる。蔵を借り、コメの生鮮管理を行なう。
また、不正や正しいルートでコメが流れているかのチェックや検査に
人手と費用がかかる。
経費だけでも255億バーツほどかかると見られる。
そして、農民ないしは業者から市場の5割り増しの高値で買い、
おそらくそれより2~3割安く売ることになろうから、この補助金額は
年産2500万トンについて、総額1000億バーツに達すると見られる。
先の経費を加え、1280億バーツが使われることになろう。
これに加え、政府在庫が捌ききれなかったときは、
在庫期間が4ヶ月以上に伸び、在庫費用、金利が嵩み、
そして売却は格安の家畜飼料としてしか売れなくなる。
この際は、損失は数千億バーツに膨らむかもしれない。
問題は、やはり汚職、不正、腐敗の入り込む余地が
大きいことだろう。
精米に出す段階で、備蓄する段階で、政府が売却する段階で
不正の入り込む余地はいっぱいだ。
まるで、政治家がお金を作るためのシステムに見えてしまう。
しかも、精米業者にしろ、役人にしろ、輸出業者にしろ、
一部の大きなところだけが恩恵にあずかれそうである。