水没した多くの企業は、来年からと予想される最低賃金の引き上げを、
追い討ちをかけられる思いで見ていよう。
10月17日(月)の政府、使用者、労働者3者からなる
「中央賃金委員会」において、最低賃金は決定される予定だったが、
使用者側は、1万以上の工場(数十万人の労働者)に被害を及ぼした
今般の洪水から立ち直るために、新しい最低賃金の決定を6ヶ月間先に
してくれるよう、前日には要請していた。
ここまで、最低賃金の引き上げには2つの案が挙がっていた。
ひとつは、政府、労働者側からのもので、来年1月より、まず全国で40%
引き上げること。バンコク(現行215バーツ)など現在の水準の高い7つの県では、
これにより、1日300バーツに届く(バンコクは39.5%の引き上げ)。
届かないその他の地方は、2013年1月に再度引き上げて、300バーツに
届かせる。300バーツへは、53%~89%の引き上げとなるので、2回に分けるようだ。
最低の北部のパヤオ(現行159バーツ)などは、300バーツへは
89%の引き上げとなるので、1年目223バーツへ(+40%)、2年目
300バーツへ(+34.5%)となるようだ。
前回、2年で+40%、4年かけて全国が300バーツになる案が
有力と紹介したが、どうやら、労働側の圧力で、この期間は、1~2年に
縮められたようだ。
労働者側は、「洪水からの回復に労働者も力を入れるため」と言って、
来年1月からの全国一斉の300バーツを要求している。
使用者側の案が第2の案だが、これは4年かけて300バーツに
持って行こうという漸増案だが、政府・労働側に押されそうだ。
そして、10月17日月曜日、ちょうど北からの洪水が、バンコクの北側にある
タイ最大のパトゥム・タニのナワ・ナコン工業団地を飲み込んだ日に、
中央賃金委員会の決定がされた。
政府・労働側の案の採用日を、来年1月から4月に3ヶ月伸ばして、
2011年4月より全国で+40%、2013年(月は示されず)からは
すべて300バーツにという案が採用された。
1日300バーツは、2015年いっぱいまで有効とするという。
この案が、インラックの閣議に送られる。
中小企業30万社の賃上げショックを緩和するために、財務大臣は、
現在の最低賃金と300バーツとの差額の1.5倍を減税(税額控除?)
の対象にするというが、そのインパクトはわからない。
タイ工業連盟では、洪水の被害の広がりから、なお実施時期を
伸ばすことを働きかけて行く。
使用者側からは、付加価値税を7%から3%に下げるとか、
企業の社会保障基金への納付額を減じるなどの要望が
出たようだが、政府からは聞いておくということにされたようだ。
タイ新政権の最低賃金引き上げは、漸増とはならず、1~2年の間に
40~89%の引き上げとなる。一時に40%というのは、大きな賃上げ率だ。
企業が全部背負い込むのか、国が税金でどの程度助けるのかまだ
はっきりしないが、洪水被害と合わせ、進出外資企業には負担と
感じられよう。
また、地域格差を無視した一律300バーツは、地方経済の
雇用機会をいっそう減らさないか心配される。
しかし、しかし、である。
そのまま数字のようなショックにはならないのが
タイランドである。
そのお話は、また別に。
でも零細町工場には死ぬほど痛い話し・・・
その「別の話」とやらに期待するしかありません。