北からの水を東西に分けて流し、バンコク市街を
洪水から守る作戦は、うまくいかないようだ。
そうこうするうちに、アユタヤ方面からのプミポン・ダムの
満水量の3割にあたる40億㎥の水は、明日にもバンコクに到達しそうだという。
もっとも高低差の小さいタイの平原のこと、ひたひたと少しずつやってくる。
バンコクにおける1日の排水量は、以前見たように、せいぜい
4億㎥だから、その10倍の水の処理は容易ではない。
バンコクの西側を見れば、昨日お伝えしたように、
市の北西のノンタブリからさらに西のナコン・パトムに
水は広がりそうだ。ノンタブリの南のタウィ・ワッタナーの運河に
流れ、チャオプラヤ川と西のタチン川に流れ込み、海に出てくれれば
いいが、タウィ・ワッタナーにあるバンコク市内を守る2.7Mの高さの
鉄道盛り土が、浸水が3mとなれば、超えられる恐れがあるという。
頼みは、タチン川に流れ込む3つの運河の浚渫が終わったところだが、
平らな土地のため、まだ水がうまく流れ込まないと言う。
水量が増えたとき、うまく流れ込んでいくことが期待される。
チャオプラヤの水位は昨日10月24日、海抜2.3Mの史上最高
となっている。1995年の洪水の時は、2.27Mであったという。
すでにチャオプラヤの上流にあるバン・プラでは堤防から水が入り、
街に浸水している。
(地図は、バンコク・ポスト紙より)
北のランシット(パトゥム・タニ)の運河の水流は強く、高く、
水門を超えて流れていると言う。
タウィ・ワッタナーなど西側は、3mの水深になりそうだと言う。
バンコク南の低地やトンブリも水面下になる危険があると
インラック首相は警告している。
東側に流す水も思い通りにはいかないようだ。
東側は、運河を伝わり、バン・パコン川に水が流れ込み、
海に出ることが理想だが、ポンプが足りないと言う。
つまり、南にずっと下がっていく地形なら良いが、水流の
登りの箇所も数多くある。ポンプが足りないと流しきれない。
また東には、ボトルネックになっている運河もあるという。
草や藻が密生していて、水の流れを妨げると言う。
まだ藻の除去作業は行なわれていない。
大量の水がなお北から迫っている中で、
東西への水の分岐は、思ったほどには行かない。
バンコク洪水は、市内の浸水もさりながら、
トンブリや南の低地、バンコクの南サムート・プラカン
までも飲み込むことになるのか。
サムート・プラカンには、バン・プリ、バンプーの
2つの工業団地(合わせて550工場、従業員9万人)、
そしてスワナプーム国際空港がある。