乾季の間に、タイ政府はどんな長期洪水対策を
講ずるのだろうか?
水の入るを制し、出を速める策はあるのだろうか?
入るを制するのは、ダムでの流量調整である。
専門家によると、今年の雨季の5ヶ月間に
北部のダムの上流に降った雨の量は、
例年の1.4~1.5倍で、410億㎥に達したと言う。
2つの巨大ダム、ピン川のプミポン・ダム(容量134億㎥)と
ナン川のシリキット・ダム(同じく95億㎥)合計の貯水量229億㎥の
1.8倍の大雨が降ったことになる。
10月始めには、両ダム合わせて、一日あたり2.9億+0・66億=
3.56億㎥の水が流れ込み、1.6億㎥の水を放流したと言う。
下流のナコンサワンの街で合流し、アユタヤ、バンコクに向かった。
それでも最盛時は、両ダムに一日2億㎥近くの水が溜まったことになる。
今年の雨季の終わりの雨量から見ると、両ダム合わせて、
毎日2億㎥近くずつ水が増え、貯水量は12日ほどで、90%が
100%になってしまうペースだった。
実際に、9月末にはプミポン・ダムとシリキット・ダムの貯水率は、
それぞれ93%、99%に上がった。
例年なら、1億㎥ほどずつの純増だろうから、10%ポイント上がるのに
1ヶ月近く時間が保てたはずだが・・。
仮に、先の大雨を見込んで、すでに6月頃から大量の放流を
開始していたと仮定しよう。
もしその頃、貯水率を50%程度に抑えられていたとすると(あくまで
仮定の数字。水不足の時は50%割れ)、その後3ヶ月平均で、
両ダムに溜まる水が、一日純増2.5億㎥だったとしても
(一日放水量を1億㎥に抑える)、45日は耐えられたことになるが、
それにしても、ダムでコントロールするには厳しい流量だったことが判る。
10数年に一度はやってきそうな異常降雨による洪水の被害を
少なくするには、入るを制することも必要だが、
やはりいずるを速める策が必要だ。。
既存運河の流量加速化も図られそうだが、それでは不十分かも
知れない。
(写真、図は、バンコク・ポスト紙電子版より)
今、新しく考えられているのは、
アユタヤの北からバンコクの南までぐるっと長円形に囲む
外郭環状道路3号が計画にあるが、その外側に100kmに
わたる大運河を作ろうと言うものである。
この“ウォーター・モーターウェイ”は、環状3号線の東側に、
深さ8m、幅180mの大運河を100kmに渡って、7年、2200億
バーツ(8500億円ほど)をかけて掘ろうというものだ。
容量だけでも1.44億㎥となる野心的な計画だ。
あとは高い流速をどこまで確保できるかだろうが、
はたして実現するのだろうか?