米国は経済停滞から抜け出せないでいる。
だから、現オバマ政権が不信任を突きつけられるとも言えず、
対抗馬の共和党のロムニー候補は、若手で威勢のいいポール・ライアンを
副大統領候補に据えたのはいいが、高齢者医療のメディケアの圧縮案を
出すなど、大統領選挙で高齢層から総すかんを食う恐れもぬぐえない。
「アメリカは、21世紀に入ってのこの10年間で、中産階級が著しく減った!」
という米国社会の根幹を揺るがす調査結果が、米調査会社ピウ・リサーチ・センター
からこの8月に発表された。
それによると、2001年から2010年までの10年間で、
米国の家計収入の中位数は、72,956ドルから、69,487ドルへ(2011年価格)、
実質で5%近く、3,469ドルも減ったという。
また家計純資産の中位数も、こちらは住宅価格や株式の下落で、
129,582ドルから、93,150ドルへ、3割近く、36,432ドルも減った。
“貧困大国アメリカ”はいっそうその姿を明確にしてきている。
アンケートによると、政治家、金融界、大企業が、この順で悪いということに
なっているが、金融緩和、低金利政策がなかなか利かないのも事実だ。
といって、こういう不況の時代に、有権者から財政緊縮策が歓迎されるとも思われない。
ミドルクラス(中産階級)と称される世帯は、アメリカの平均所帯収入58,500ドルの
3分の2から2倍までだから、年収39,000~118,000ドル(312万円から944万円)の
世帯となる。
アメリカの中産階級所帯は、1971年には全所帯数の61%を占めていたが、
今日では51%と、まもなく5割を割りそうである。
また過去40年間で、低所得所帯数の割合は、25%だったのが29%と3割近くに
上がってきた。これに対し、高所得者層は、14%だったのが20%と上がってきた。
中産階級が細り、高所得層と低所得層への分解が進むアメリカ。
アメリカ資本主義の危機の一面と言えるだろう。
11月の大統領選挙の行方は、ここからも見える気がするが、さてどうなるだろう。