その見解はしっかりしている。
2010年10月に就任。任期5年。現在60歳。
ハーバード大学で経営学博士号をとった彼は、
この8月に発表された「グローバル・ファイナンス」誌の世界50カ国
中央銀行総裁ランキング(インフレの抑止や
政治からの独立性などを基準にA~Dで評価)でも、「B+」を取り、
米連銀のバーナンキ総裁(B)や、欧州中央銀行の
マリオ・ドラギ(B-)、日銀の白川総裁(C-)より上に位置されている。
その彼が、インラック政権からの金利引き上げ圧力と今闘っている。

政府は、この6月にタイ中央銀行の取締役会会長に
ビラボンサ氏(かつてのタクシンの顧問)を送り込み、
IMFのラガルド常務理事の賛同を取ったなどと言いながら(IMFは後否定)、
インフレ目標値などは不要だと発言させ、
また金利引き下げを公言させている
(会長には、金融政策委員会での投票権はないが)。
また、何でも成長がいいキティラット財務相兼副首相は、為替レートを下げて、
さらなる金利引き下げを要求している。
確かに、世界的な景気後退により一時のインフレ傾向は緩まってきているが
(8月のタイの消費者物価指数は、前年比2.7%と落ち着いている)、
国内の信用供与の拡大ペースは高く、
9月を過ぎると、洪水で物価が下がった前年同期との比較になり、
来年にかけ最低賃金の引き上げの影響も徐々に出てくること等から、
タイ中銀にとってインフレ抑制の手綱は緩められないだろう。
ちなみに、生活感から来るインフレ率は二桁に近い。
プラサーン総裁がここに来て最も気にしているのは、
中央銀行の独立性、信用性だ。
政府の言うなりになっているという印象を受ければ、
中銀の金融政策そのものが信用されなくなるという危惧だ。
9月5日(水)に注目のタイ中央銀行金融政策委員会が開かれた。
1月に3.0%に下げて8ヶ月間続いてきた政策金利(翌日物債券レポ・レート)
3.0%を据え置いた。
なお委員会のメンバーは7人だが、5日の出席メンバーは5人と少なく、
3人が据え置き、2人が引き下げの意見だった。
現在のインフレ状況、財政の積極的支出傾向から見れば
妥当なところだろう。
プラサーン総裁には、この緩やかな成長の中でのインフレ高進を
ぜひ抑えて欲しいものだ。


