インドだが、2012年9月14日、80歳の誕生日を間近に控えた
初のシーク教徒の首相であるマンモハン・シン首相(国民会議派)内閣は、
以前の失敗に懲りず、意を決して内閣の命運を賭けて、改革政策を打ち出した。
これが成功するかどうかは、今後のインド経済の行方を
占う上で、大きな分岐点となりそうだ。
改革政策の中身は以下のようなものである。
1.昨年失敗して引っ込めた流通分野改革。
ウォルマートやテスコといった外資系流通資本に、
49%の出資比率で、国内にスーパー・チェーンを許す。
「挫折したインドの外資系スーパーの導入 2011-12-11」
http://uccih.exblog.jp/15093829/
昨年同様、これに対しては、既存の中小流通商店だけでなく、
反対党、さらには連立党からも激しい反対が出そうである。
「中小の商店をつぶす気か!」と。
政府は、これにより流通の合理化が図られ、生鮮食品の
腐敗率も減り、また1000万人の雇用が生まれると言っている。
2.新しく航空開放。
外国の航空会社に、これも49%までの制限つきだが、
国内の航空会社への出資を許す。
インドの航空会社は赤字の塊なので、出資が進めば、
よいてこ入れになるはずだ。
「インド航空産業の惨状 2011-12-6」
http://uccih.exblog.jp/15062497/
3.燃料補助の縮小。
補助金のついているディーゼル油の価格を、13日に
12%引き上げたが、安い燃料の多消費による財政圧迫を減らす。
補助金のついた家庭用クッキング・ガスの各家庭への
割当量も半分にする。
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連立を組んでいる西ベンガル出の「トリナムール議会派」(草の根会議派)は、
「改革案を72時間以内に撤廃しないと大規模な反対運動を起こす」と
脅していた。その後18日(火曜日)には、要求が聞き入れられなければ
連立から離れると言っている。
トリナムール議会派は、下院545議席中19議席を占めるだけだが・・
(国民会議派は206議席)。
そして、9月20日(木曜日)にはいっせいにデモやストライキが広がった。
鉄道を止め、店舗や学校を閉鎖させたと伝えられるが、
首都デリーや商都ムンバイでは、影響は今のところ小さいようだ。
人口2億人を抱える貧困州のウッタラ・プラデッシュ州でも、
3月の選挙で政権に帰り着いた社会主義の「SP党」(サマワディ党)に
率いられて改革に反対の声を挙げている。
「インド最大州の選挙でガンディー王朝昇れず 2012-3-8」
http://uccih.exblog.jp/15541520/
しかし面白いことに、サマワディ党(下院で23議席を持つ)は、
政敵であり野党第1党(議席数116)の保守系の「インド人民党」
(BJP党、バラティナ・ジャナタ党)が伸してくるのは面白くないので、
政権をバックアップすると言っている。
もっとも、再建途上のBJP党は、今はまだ政権を担う意思はないようだが。
汚職や失政(ことに経済成長は落ち、財政赤字は膨らみ、
国債の格下げの危機にある)で評判の落ちているシン政権は、
来る2014年の総選挙を待たずに、いわば最後の賭けに出た
感じである。
「政治力の弱さが民間企業の発展を阻害するインド 2012-4-9」
http://uccih.exblog.jp/15697314/
インドという将来の大国は、はたしてこの時点で反対を
乗り越えて、経済改革を進められるか、はたまた
再び後退するのか大いに注目される。