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タイの年金制度の仕組み(後編) ネガティブな話 基金は積み立てられているのか?
前回、タイは途上国の中でも社会保障、年金制度に前向きと
ポジティブな話をしました。
しかし、裏に回って実態を見ると・・・・・。

今回も、雑誌「経営財務」に載ったものから、タイの年金制度の
基礎をつかんでみましょう。

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公的年金の改革が叫ばれる中で滞るタイの年金拠出
(タイの年金制度 後編:ネガティブな話)


1.IMFとOECDから相次ぎ公的年金の改革を促すレポート

 2011年末に、「IMF」(国際通貨基金)が、
先進国及び途上国いずれにおいても、公的年金の改革が必要であるという
「先進・途上国における公的年金改革の挑戦」というレポートを出しました。
http://www.imf.org/external/np/pp/eng/2011/122811.pdf

 そのポイントは、年金収支の改革を行なわないと、
財政上公共投資など国の成長を促す財政支出が圧迫され、
経済成長を損なうというものです。
「今後20年、これは先進国のみならず、公的年金制度が未熟な途上国でも必要である。
なぜなら少子高齢化は等しくやってくるからである」と述べています。

 先進国の公的年金支出は1970年のGDP比平均5%から、
2010年には8%ほどに上がってきています。
このまま行くと、20年後の2030年には、GDP比で、さらに平均1.2%ポイントは
上がるだろうと見られています(ルクセンブルグや韓国は5%ポイント近く上昇)。

 発展途上国の公的年金支出は、2010年でGDP比平均3%とまだ低いのですが、
受給年齢層の年金カバー率が低く(アジア途上国平均で26%ほど)、
また年金の給与代替率が10~60%と、先進国(30~65%)より低いため、
少子高齢化の進む中、今後公的年金支出の増大が見込まれます。

 2012年1月になると、
今度は「OECD」(経済協力開発機構)から、
アジア途上国の年金制度について急速な改革が必要と言うレポート
「アジア太平洋年金一覧2011年」が出てきました。
http://www.oecd.org/dataoecd/37/41/49454618.pdf

 中国・香港も含めた東南アジア及び南アジアのアジア途上国11カ国の
公的・私的年金の状況とその課題について触れていますが、
今後20年の急速な高齢化に対しては、いずこも十分な対応がされていないと警告しています。
アジア諸国の年金制度は新しいものが多く、確かに不十分なものですが、
来たる高齢化に対する国の意識が薄いと言っています。

 アジアの途上国の公的年金の根がなお浅く、
国の財政事情により、移ろいやすいものであるかを見てみましょう。



2.十分に拠出されないタイの公的年金基金
 
 前編の「タイにおける年金制度充実への取り組み」で紹介しましたように、
タイは途上国の中でも、社会保障制度、年金制度の充実に積極的な国です。
労災給付に老齢年金給付などを加えた社会保障制度が1990年に成立しました。
その展開として、民間企業の従業員を対象とする賦課方式の公的年金制度「老齢年金」が、
1998年からスタートしました。

 タイの公的年金の現在の加入者は920万人、
基金の規模は8,400億バーツ(約2兆4,000億円)ほどです。
タイの公的年金支給額の給与代替率は、20~42.5%と先進国に比べて低めです。
その代わり、15年拠出すれば男女とも55歳からもらえます。
平均寿命の伸びから見て現在の55歳は、かなり早目の支給年齢となっています。
制度のはじめての支給は2014年からです。
ここまでは基金は溜め込んできただけの状態です。

 タイも、現在の60歳以上の高齢人口の比率11%が、20年後には22%へと
倍増すると予測される“中年国”です。
現在の支給年齢の引き上げや、拠出率のアップを考えないと、
近い将来タイの年金財政は危うくなると見られています。

 そのタイが2011年は半世紀ぶりの大洪水に見舞われました。
国による水害補償や、今年以降の洪水防止対策など、財政支出が増加します。
それがなくても、2011年7月に発足したタイ貢献党新政権では、
ポピュリスト的な歳出拡大や補助金政策が多くなっています。
この財政の赤字拡大のしわ寄せが、
資金がたくさん眠っていると見られる公的年金基金にやってきています。

 医療・年金・失業保険といった社会保障制度へ拠出率は
、タイの場合柔軟すぎる嫌いがありますが、
ほぼ半年毎に変わります。

2010~11年は、給与に対して企業主5%、従業員5%、国が2.5%
(うち年金分は3%、3%、1%。その他は医療保険と失業保険分)でしたが、
水害のあったあとの2012年は、年前半が企業主と従業員は3%ずつ、
年後半は4%ずつと低めに設定されました。
国の拠出分も引き下げられました。
2013年も、景気対策のため継続されています。

 これにより、企業からの従業員分も含む 今年の社会保障基金への拠出額は、
本来なら1,067億バーツほど(給与総額の10%分)になるはずが、
747億バーツほどへ320億バーツ(30%)ほど減少する見込みです。
さらに、よその国でも見られることですが、資金繰りの苦しい企業は拠出を滞納しがちです。
この分がさらに250億バーツほどになるかと見られます。
つまり、企業からの拠出は(従業員の分も含めて)、
2012年は本来の半分の500億バーツほどになったもようです。

 これだけにとどまりません。
国は、財政支出が増えるこの年、
社会保障基金への拠出額を267億バーツ(給与の約2.5%分)から
112億バーツ(1%)へ減らす予算を策定しました。

雇用主・従業員・国を合わせた拠出額は、本来なら1,334億バーツほどにのぼるはずが、
2012年は610億バーツほどと半分以下の水準にとどまりそうです。
 これに加えて、国が社会保障基金への毎月の拠出を、
2010年5月以降行なっていないことが判明しました。
その額は、2010年104億バーツ、2011年261億バーツ、2012年もこのままだと267億バーツ、
累計632億バーツの滞納となろうと恐れられています。
国が今年の拠出を112億バーツにしたということは、少しでも払うという意思表示です。

 いずれにしましても、タイの公的年金の原資となる社会保障基金のプールは、
いまだ支給が始まっていないので、豊かな財源と見られ、
政府は滞納に加えて拠出予算の半減、
さらに企業・従業員に対しても拠出額の引き下げを行なっています。

これでは、将来の年金設計が狂っていかないか、まじめに考えると心配されます。
しかし、あまり先のことは心配しないタイランドのこと、あまり気にされないようです。

 政治家が、年金基金を先を見ずに豊かな財源と見て、拠出を減らすどころか、
国の歳出の財源に流用してしまうことも、先進国では見られます。
少子高齢化に入っていく現在、先進国も途上国も、
年金財政をきちんと守ることをしないと、
将来の世代が苦しむことになるでしょうが。
by ucci-h | 2013-05-07 22:52 | タイの政治・経済・金融・為替 | Comments(0)
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